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自分が納得するものを、お客さまに届ける!

革職人
桃井 将也さん

革職人として、バッグや財布などあらゆる革製品を手がける桃井将也さん(32)。元々は美容師の仕事に就いていたものの、「ずっとモノづくりをしたいと思っていました」と職人の世界へ転身。経験ゼロからのスタートも、現在は一つのブランドを担うまでに成長。そんな桃井さんに、仕事のやりがいや、これからの夢などについてうかがいました!

職人募集の張り紙が、運命を決定づけた

インタビューに答える桃井将也さん

「美容師としての仕事が順調に進んでいたある日のことでした。渋谷を歩いていたら、たまたま『革職人募集』の張り紙が目に入ったんです。すぐにこれだ! と直感したんです」

 桃井さんがこう語るのは、東京・渋谷で約40年にわたり革製品を発信しつづけている老舗ブランド『HERZ(ヘルツ)』と出会った瞬間のこと。美容師の仕事をしながら、ずっとモノをつくる仕事がしたいと考えていたと言う桃井さんは、すぐにその募集への応募を決意しました。

「美容師の仕事ももちろん好きですが、モノづくりや職人への憧れがより強かったんです。その気持ちから挑戦することにしました」と履歴書を提出。その後行われた、創業者でもあり職人でもある社長との面接が印象的だったと言います。

「社長といろいろな話をさせていただきました。その中で社長の話に自分の考えをぶつけた際に、『そうか、俺の思い違いだ』と社長が考えを変え、僕の意見を受け入れてくださったことがありました。それまでは社長というと目上で強いというイメージがありましたが、ここはフラットな関係で、なんて魅力的な環境だろう、ここで職人として働きたいと強く感じました」

 その桃井さんの想いは叶い、『HERZ』で革職人としての新たな人生をスタートさせることとなりました。

自分が納得したモノを、お客さまに届けたい

桃井将也さん愛用の道具

 革のこともつくり方も知らない、ゼロからのスタートとなった桃井さん。しかし「スキルも知識も無いので大変でしたが、こんなに仕事が楽しいとは思いませんでした。夜中までやっていても何も苦にならないほど、無我夢中の時間がつづきました」と、大変さよりも憧れのモノづくりの仕事の楽しさの方が強かったと言います。

「美容師の仕事は、自分がいくら良いカットができたと思っても、お客さまに満足していただかなくてはいけません。それも良いのですが、僕はとことん自分の納得するモノをつくって、それをお客さまに選んでいただけたらいいなって思ったんです」

 ある日、桃井さんが店番をしていた時のことでした。お店にいらしたお客さまが、いろいろ見ているうちに、桃井さんのつくったバッグを手に「これをください」と一言。

「その時の喜びは今でも覚えています。本当に嬉しい瞬間でした。でも、8年たった今もこの気持ちは変わりません。自分が想いを込めてとことんつくったモノを選んでいただくことは、いつも嬉しいことですし、職人としての仕事のやりがいでもあるんです」