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想いを連動させて、永く愛される靴をつくる

パタンナー
吉見 鉄平さん

幼少期からサッカーに打ち込んできたという、吉見鉄平さん(35)。将来の進路を本気で考えた大学時代、自分の本心と真剣に向き合い「自分は靴が好き。靴に関わる仕事に就きたい!」と気づき、大学在学中ながら靴を学ぶためにロンドンへの留学を決意。卒業後は、東京都立城東職業能力開発センター台東分校にて、さらに技術を磨きました。靴メーカーに5年勤め、2007年に独立。現在はパタンナーとしてだけでなく、自身のオリジナルブランドとショップ「RENDO」を運営する吉見さんに、仕事のやりがいや今後の夢などについてうかがいました!

自分探しの旅で出会った「靴」に対する気持ち

インタビューに答える吉見さん

 四国の徳島県で育った吉見鉄平さん。ずっとサッカーに打ち込み、東京の大学にもスポーツ推薦で入学。しかし大学生活をするなかで、将来の進路について迷ったそうです。

「あるとき、自分探しの旅のような感じで、米ボストンに留学してジャズの勉強をしている親友に会いに行きました。そして彼が夢に向かって一生懸命に走っているのを目の当たりにしました。それに対して自分は、いったい何ができているんだろう・・・って感じたんです」

 その日から自問自答の日々がつづき、今度はロンドンに留学する友人に会いに行くことに。

「その友人と、自分は何が好きなのか、何をやりたいのかなどについて、熱く語り合いました。話をするうちに、自分は昔から靴に興味があって、靴に関わる仕事がしたいと気づくことができたんです」

 そして後日、ロンドンに靴の学校があることを知った吉見さんは、そこで学びたいと早速行動を開始しました。

「大学3年のときでした。大学を辞める考えもありましたが、まずは1年間ロンドンに留学して靴について勉強をすることにしました」

 留学先の同級生は年上の社会人経験者がほとんどで、全員が真剣そのもの。「学生気分は一気に抜け、自分もここで頑張ろうと意識が変わりました」

多くの収穫を得た職業訓練校の日々

作業中の吉見さん

「ロンドンで靴について1年間学び、もっと究めたい気持ちもあったのですが、帰国して大学に戻ると就職活動を始めました」と吉見さん。靴に関わる商社をはじめ、さまざまな業界にチャレンジしました。

「厳しさを思い知りました(笑)。留学の経験を熱く語りましたが、そんな人はいっぱいいる。一度最終面接までいったのですが、その際のグループ面接で気づきました。一緒に面接を受けている彼らは、この会社でやりたいことがあるんだと。それに引き替え自分は、それよりも靴をつくりたいと考えていたんです」

 その原点に立ち戻り、改めて進路を模索するうちに出会ったのが、東京・浅草にある職業訓練校『東京都立城東職業能力開発センター 台東分校』でした。『製くつ科』があり、「ここでならもっと靴について勉強できる」と応募することに。倍率約7倍という狭き門を突破し、改めて靴に触れる毎日を過ごすことになりました。

「靴にどっぷりと浸かる日々でしたね。技術や知識はもちろん、手先がもの凄く器用な人などいろんな人がいて、幅広い勉強をすることができました。将来の自分を考えていく上で、とても貴重な経験をすることができました」

 卒業後は靴のメーカーに就職。入社当初は出来上がった商品を磨いて仕上げる作業や、梱包・出荷といった管理の担当となり、工程や関わる人々などを知ることができました。そして入社3年が経ち、ついに興味のあったパタンナー業務を担当。手に職をつけて好きなものをつくりつづけたいと5年間のメーカー勤務を経て、独立を決心しました。