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庭づくりを通して伝統を引き継ぐ

庭師
星 宏海さん

庭師のご両親を持つ星宏海さん(37)。やりがいをもって働く両親の姿を見て、小学校1年生の時から「夢は庭師」だったそう。そんな星さんが初めて現場に立ったのは、中学1年生のとき。両親の手伝いのつもりで仕事をしていたのですが、甘えは一切許されず、ときには厳しく叱責されることも。しかしお客さまの意向を汲みながら、2つとして同じものがない自然を相手にする仕事はとてもやりがいがあり、どんどん庭師の仕事に魅かれていきました。そして、現在は庭師として独立し数々の庭づくりを手がけるだけでなく、職人の育成にも力を注いでいる星さんに、仕事のやりがいや今後の夢などについてうかがいました!

父母の働く姿を見て自分も庭師の世界へ

インタビューに答える星さん

 神奈川県・寒川町で庭師をしている両親のもとで、自然に触れながら育った星宏海さん。夫婦がやりがいを持ち楽しそうに仕事をする姿を見て、「自分もいつか庭師になろう!」と感じていたそう。

「自宅の裏山で駆け回り、自然に触れる両親の仕事を見て育ったため、当たり前のように自分も庭師の仕事をすることになると思っていました」

 中学1年生になると父に「現場に行くか」と誘われ、初めて庭師の仕事に触れることに。このときから職人の世界の厳しさを知ることになりました。

「親子だからといって、甘えは一切許されませんでした。ちょっとラクな姿勢で草を取ったり、疲れて伸びとかをしたりしようものなら、裏に連れて行かれて強烈な叱責をされました(笑)。でもこれが職人の世界なのだと知るきっかけとなり、庭師の矜持(きょうじ)を教えられました。今の仕事への取り組みの原点になったと思います」

 その後は、高校、そして専門学校の造園科に進学。さらに土日や夏休みなどの休暇の際には両親の現場を手伝いに行き、どんどん知識やスキルを習得していきました。

日頃の心がけも庭師の大切な仕事

作業中の星さん

 学校で学びながら、現場で経験を積み、星さんは一人前の庭師を目指して研鑽を積んでいきました。そんなあるとき、師匠でもある父から大きな気づきを与えられたといいます。

「ある作業を一日かけて、自分でも納得のいく様に仕上げたんです。それを見た父が一言いいました。『全部やり直せ』と。仕上がっているが美しくないというのです。言葉で表現するのは難しいのですが、派手ではなく華やか、赤ではなく紅色、といったように、庭師として日本人にしか分からないような感覚・印象を大事にしなくてはならない、ということを教わりました」

 これがまた、庭師の特長でもあると星さんは話します。

「庭師は、そう名乗れるだけの技量や精神がなくてはなりません。金銭ではなく手間をかけて美しい空間をつくり出し、人にも心遣いがきちんとできる職人であること。それこそが庭師であると、現場の仕事を重ねていくうちに感じるようになりました」

 日頃の考え方や行動が重要という星さん。「枯山水などではなく、日本文化そのものを感じられる庭づくりを心がけています。日本の心そのものを伝えたいと思っているんですね」との言葉どおり、日々の生活にもたくさんのこだわりがあるそうです。