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自分の感動を誰かの感動にする

アニメーション作家
中村 綾花さん

幼稚園の頃からとにかく絵を描くことが大好きだったという中村綾花さん(27)。絵を描くことが当たり前のことだったせいか、以前は絵を職業にしたいと考えたことはなく、高校生のときに留学先でMIDI音楽に出会ったことがきっかけで作曲家を志していました。しかし「やはり自分の感情を最も表現できるのは絵を描くことだと気づきました」と一転して、絵やアニメーション制作の道に進むことに。現在はフリーランスのイラストレーター、そしてアニメーション作家として活動する中村さんに、仕事のやりがいや今後の夢などについて伺いました!

運動や音楽に熱中した中高時代

インタビューに答える中村さん

「幼稚園のときから絵を描くことに夢中で、紙をはみ出して机の裏にまで絵を描いていました。もちろん親には注意されたのですが、ちょうどそのときにいた親の知人からは『イメージが広がっていていい!』と褒められたのを覚えています」と笑う中村綾花さん。小さな頃から、集中してずっと絵を書き続けるクリエイティブな女の子でした。

 しかし少しずつ変化が訪れたのは、中学生から高校生になる頃だったと振り返ります。

「絵を描くのも好きでしたが、それよりもカラダを動かすことや音楽にのめり込みました。音楽は聴くことだけでなく、吹奏楽部に所属してホルンを担当。みんなで演奏する楽しさや、自分の想いを詰め込んだ曲を作ることに熱中しました」

 高校2年生からは1年間アメリカにホームステイし、現地のブラスバンドに所属をしたりバンド活動をしたりと、学業と音楽に励む充実の日々を送ったそう。

「この留学で自分が変わったというよりも、自分らしさを再発見することができ、今の活動のベースとなる貴重な経験ができました」

私にとって絵はとても大切なもの

作業中の中村さん

 帰国し高校を卒業すると、より本格的に音楽を学び仕事にしたいと音楽の専門学校に進学することに。

「学校で勉強するだけでなく、作曲家のアシスタントもするようになりました。とても楽しいことではありましたが、音楽を作るごとに、何か違和感のようなものを感じるようになったんです」

 絵を描くことと比べると、音楽では自分の思ったことや感情の表現が制限されてしまい、このときに改めて“絵を描くこと”や、“自分の表現の仕方”について真剣に考えたと話します。

「言葉で伝える以上に感情のこもった表現をするためには、やはり絵が一番合っていると感じました。それまで絵は日常の当たり前のことだったので考えていませんでしたが、絵を描くことが仕事につながったらいいな、と考えるようになったんです」

 そこからすぐに美大の受験を決意。アルバイトをしながら予備校に通う日々をスタートさせました。そして念願が叶い、武蔵野美術大学に入学することに。 「君の絵は版画っぽい」という教授の勧めもあって、油絵学科で版画を専攻することになり、いろいろなアート作品を手がけるようになりました。