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イベントレポート

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2013年2月19日(火) 19:00 ~21:00

三城 雄児 (みしろ ゆうじ) / 株式会社JIN-G 代表取締役
ビジネス・ブレークスルー大学准教授

もっと楽しく仕事するためのキャリアデザイン
~「キャリアアップ」よりも「キャリアデザイン」~

もっと楽しく仕事をしたい、自分の可能性に気づきたい、今の仕事内容を続けていることが不安、将来の夢を実現したい、夢を持ちたいと思っていませんか。今回の講師は「キャリアは『アップ』するものではなく『デザイン』するもの」と語る三城氏。大学卒業後、高校の教諭になりたいという夢を持っていた同氏が、卒業後に日系の銀行へ進み、ベンチャー企業や中小企業を経験、外資系コンサルティング会社を経て、独立したという自身の経験、そして世界中の人材マネジメントのプロと議論してきた経験を通して、誰にでも当てはまるキャリアデザインの考え方についてお話しいただきます。セミナー後半では、開国ジャパンプロジェクト主宰の四方健太郎氏、『アジア転職読本』の著者・森山たつを氏をお招きしたパネルディスカッションも行います。今まで日本だけで考えていた、または近視眼的になっていた視野を広げる"世界" を見据えたキャリアデザインについて考えてみませんか。

参加者に質問:「本日は何をしにきましたか?」

講師は組織人事戦略コンサルティングのプロである三城雄児氏。セミナーは大学教員でもある三城氏の質問からスタートした。
「本日は何をしにきましたか? みなさん、隣の人同士、三人一組くらいになってディスカッションしてみてください。」
この講師の言葉に、静かだった会場が途端に意見交換の場に変わった。今日のテーマは『もっと楽しく仕事するためのキャリアデザイン』。こうしたテーマだけに、約50人の参加者の大半は自らの「キャリア」について考えようとこの場に臨んでいるはず。するとやはり、「転職を考えている」、「仕事をもっと楽しくしたい」、「海外就職も含めキャリアデザインを考えたい」、「セカンドキャリアをどう歩んだらいいか」と、打てば響くように答えが返ってきた。実はこの質問は、三城氏が企業研修などのこうしたセッションで必ず最初に参加者に問いかけるものだという。
「目的をはっきり持つことはすごく大事。まずはお互いそれを持った上でこの場を共有できれば、きっと有意義な時間になるはずです。」
ではなぜ参加者同士でディスカッションをするのか。三城氏は「本講演の目的 = 受講生の目的」だと言いきる。そこから考えたとき、学校教育のような「1:N」の「習得型」の教育よりは「N:N」の「価値創出型」の教育の方がふさわしい。「習得型」は1人の教師が大勢の生徒に真理を与えるものだ。ここでは答えはひとつしかない。ネットが普及してから流行したeラーニングもこの「習得型」教育だ。しかし、いまやネットを検索をすれば必要なコンテンツはいくらでも集めることができる時代。「N:N」の教育は、生徒がそれぞれ集めたコンテンツを持ち寄り、互いディスカッションしてそこから新しい価値観を創出していこうというもの。こういう場において講師の役目は「ファシリテーター=盛り上げ役」だ。今日のセミナーが冒頭からこのように始まったのはこうした講師の教育に対する考えがあってのこと。これは三城氏が准教授を務めるビジネス・ブレークスルー大学でも採用している教育法だ。

「もっと楽しく仕事をする」には?

会場が盛り上がったところで講師の社会人としてのプロフィール紹介。最初の3年間は大手都銀の銀行員として過ごし、以後の14年間はベンチャーや外資系企業で組織人事のコンサルとして活動。そして現在は株式会社JIN-Gの代表取締役。この14年間で学んだのは、「どんなに仕組みや制度を変えても、人の意識が変わらなければ組織は動かない」ということ。また、コンサルや教育者と企業の経営者とでは立ち位置や評価基準が違うことも「自分が社長になってわかった」という。
三城氏が自らに課したミッション、それは「世界を楽しむビジネスパーソンをもっと増やそう」というものだ。「世界」は「社会」に置き換えてもいい。
「世の中もっと楽しく仕事をする人が増えれば、世界はもっと平和になるでしょうし、貧困や差別もビジネスで解決できるのでは」
これを三城氏は人事コンサルタントの仕事を通じて実現しようとしている。そのためのイノベーションにも取り組んでいる。
事例として紹介されたのはJIN-Gで取り組んでいるベトナム中部の都市ダナンにおける人材育成事業。ここでは初任給月100ドル程度で日本語を操る優秀なスタッフが育っている。
いままでアジアというとブルーカラーの労働市場として認識されてきたが、IT化が進んだ現在は変わりつつある。ホワイトカラーの労働力も得られる場となれば、必然的に企業の組織人事も変容してゆくはずだ。事実、世界の人事担当者たちはこの点に着目している。
ここでふたたびディスカッション。「もっと楽しく仕事をする」のに、「何をすればいいか」、そして「何をしなければいいか」について参加者同士で語りあってもらった。
発表された意見は「男性はかわいい女の子と、女性はイケメンと仕事をすればいい」、「仕事をプレッシャーだと思わなければいい」等々。こんなふうに「仲間同士でポジティブ、ネガティブの両面から物事を考えると発想が豊かになる」という。一人の場合は「文章にするのがおすすめ」。頭の中で悶々と考えていることも、一度書いてしまえば自分から離れる。そうすれば自分に対し批判もできるし、新しい発想にも結びつくというものだ。
さらに「キャリアアップとキャリアデザイン」について。実は「キャリアアップ」は和製英語。アメリカでは「キャリア」は「デザイン」するものだ。これは日本とアメリカの雇用形態の違いにも関係している。だが、前述したようにホワイトカラーですら現地採用ができる時代、日本のビジネスパーソンにも「キャリアデザイン」が求められている。

キャリアは偶然に決まる

セミナーは佳境へ。ここで三城氏はキャリアデザインの「事例」として「海外就職研究家」の森山たつを氏と、JIN-Gの役員である四方健太郎氏を紹介。2人にそれぞれのキャリアを語ってもらった。現在、日本と海外を舞台に活躍している2人に共通しているのは、偶発的にそのキャリアへと進んだという点。実はキャリアデザインには「計画された偶発性理論」というものがある。簡単に言うと「キャリアは偶然に決まる」。その偶然を得るのに必要なものは「好奇心」と「持続性」、「楽観性」「柔軟性」、そして「冒険心」だ。調査によると、この社会において「18歳のときになりたいと思った職業に就いている人は全体のわずか2パーセントに過ぎない」。またビジネスで成功した人の8割は「偶然出会った仕事で成功している」ともいう。
「答えは見つけに行くのでなく、オープンマインドで何にでも興味をもつことが重要。何かをつかもうとする人のところにはチャンスが巡ってくるはずです」
もちろん、そこには強い「思い」が不可欠だ。三城氏は「先生になりたい」という夢を持ちつづけ、それをふとした偶然で手に入れた。ゲストの四方氏も「夢は言葉にしてアウトプットしつづけること」と訴える。そうすれば夢はいつか偶発的にやってくる。
三城氏の現在の夢は、会社の理念である「世界を楽しむビジネスパーソンを増やす」こと。森山氏の夢は「多くの日本人にたくさんの選択肢を知ってもらい、閉塞感という言葉をぬぐい去りたい」。四方氏は「シンガポールで会社をつくる」。三氏とも、その目の先には常に「世界」がある。刺激的なセミナーは興奮と拍手のうちに幕を下ろした。

講師紹介

三城 雄児 (みしろ ゆうじ)
三城 雄児 (みしろ ゆうじ)
株式会社JIN-G 代表取締役
ビジネス・ブレークスルー大学准教授
早稲田大学政治経済学部経済学科卒業。富士銀行を経て、ベリングポイント(現PwC)などの組織人事戦略コンサルタントとして数社で活躍。2009年「世界を楽しむビジネスパーソンを増やそう」という理念のもと株式会社JIN-Gを創業。「人事の大学」を主宰。主な著書に「グローバル人材マネジメント」(日系BP社)などがある。