スルガ銀行 Dバンク支店

SURUGA d-labo. Bring your dream to reality. Draw my dream.

イベントレポート

イベントレポートTOP

2013年5月14日(火) 19:00~21:00

倉園 佳三(くらぞの けいぞう) / ITコンサルタント、執筆家、音楽家

電子書籍で読書はもっとクリエイティブになる!

昨年末から今年にかけて、日本で多くの電子書籍サービスが立て続きに開始し、日本にも本格的な電子書籍の波が押し寄せています。おそらく、多くの方が「書籍が電子化されるとなにが変わるの?」という素朴な疑問をお持ちではないでしょうか。電子書籍には、自分の好みに合った本を見つけられる、引用や読書メモを手軽に残せる、他の読者と簡単に意見交換ができるだけでなく、もっとクリエイティブな読書ができる可能性を秘めています。今回は、電子書籍を使ったクリエイティブ読書術を提案している倉園氏にお話いただきました。

デジタル化は人類の実験

 講演ではいつも“Enjoy!“という言葉から話を始めるという倉園佳三氏。
「今日は難しい話はいっさいありません。本なんて楽しく読めばいいんです。」
 電子書籍はその「本を楽しく読む」ためのツールだ。本セミナーでは3月に『できるポケット Amazon Kindleクリエイティブ読書術」を上梓したばかりの倉園氏に、「アウトプットを生み出すクリエイティブな読書術」をテーマに、読み手側から見た電子書籍の楽しみ方や、紙の本を自らの手でデジタル化する「自炊」についてお話しいただいた。
 世はまさにデジタル時代。書籍だけでなく映像も音楽も何でもデジタル化されているのが現在の世界だ。倉園氏はこれを「人類の実験」と解釈している。「あらゆるものをデジタル化していくと、絶対にデジタルにできないものがわかる。それこそが、人間にとって大切なもの。つまり、デジタル化とはそういうかけがいのないものを探す実験なのでは」というのが持論だ。
「例えば人と直接話すライブ感、ハグしあうときの肌のぬくもり、愛情などもデジタル化できないものですよね。」
 そういう意味では、電子書籍にもデジタル化できていない部分がある。紙の質感や表紙の手触りなどがそう。これらは本という物の魅力でもある。だから「紙の本は永遠になくならない」。電子書籍は紙の本を駆逐するためのものではなく、読書をより楽しくするものなのだ。

読書をクリエイティブにする電子書籍リーダーの機能

 セミナー前半は電子書籍リーダーのKindleの機能を中心に電子書籍のメリットを解説。電子書籍の第一の特徴は「読みたい本をその場で購入して読み始めることができる」という機動力だ。
「テレビを見ていておもしろそうな本があったらその場で購入が可能です。紙の本でもネット通販ならすぐに買えますが届くのは普通なら早くても翌日。それが電子書籍なら購入と同時にすぐに読むことができるのです。」
 第二の特徴は「自分の好みに合った本を見つけることができる」こと。本は「詳しい人が独占している世界」。普段あまり本を読まない人は大型書店に行ってもどのフロアのどの棚を見ればいいかがわからない。しかし「レコメンド機能」を持つ電子書籍ならばストア側が客の購入履歴から「お客さまへのおすすめ」の本を割り出してくれる。さらにタップひとつでツイッターに連動する「シェア機能」によって、他の読者の声にも触れられる。誰かが「星5つです」と感想を述べていれば「自分も読んでみようかな」と思うのが人間の心理というものだ。
 一方、紙の本の付箋やマーカーでの棒線引きに相当するのが「ハイライト」と「メモ」。本の中に気に入った文言があればそこを指でなぞって色をつける。その部分は自動的に保存され、自分だけの読書メモとなる。「たとえあとで読み返さなくてもハイライトを引くと何かが心に刻まれるんです」と倉園氏。それだけでも価値がある、ということだ。
 4つめは「便利さ」。Kindleでは8カ国語の辞書が無料でダウンロードできる。読書中、人名や外国語などでわからないことがあっても紙の辞書を開かずに意味を調べることができる。これももちろん指ひとつ。辞書にないものはウィキペディアで検索。「『三国志』に登場する武将なども本を読みながら調べることができる」という。5つめは「おもしろさ」。さまざまな機能を持つKindleの中でも倉園氏のお気に入りは「読書の進捗時間」だ。これは「この本を読み終えるまでにあと○時間○分」といった情報を伝えてくれるもの。
「これには勇気づけられます。お、あと1時間で読みきれるのか。よし、いっちゃえ、と!」
 「ポピュラーハイライト」もおもしろい機能だ。これは他の読者が「いい」と言っている「名場面」を教えてくれるもの。設定をオンにしておけばこの名場面が近づいたところで画面が知らせてくれる。「一度やると病みつき」になる機能だ。他にも画面や文字の拡大、チャプターリスト的な機能を持つ「X-Ray」など便利なファンクションが満載。聞いていると、やはり使いたくなってくる。
「1冊の本には著者の叡智が詰めこまれています。本を読むことはその人の人生を疑似体験することなのです。」
 読書は知と経験の共有。倉園氏はこれに「アウトプット」を加えたいと考えている。得たものを何かにつなげ、誰かに手渡す。 例を挙げるなら科学。世の研究者たちは先人たちの成果を受け継いで科学を発展させてきた。
「いちばんわかりやすいのは自分でも本を書くこと。あるいは仕事に活かしてもいいし、誰かに話したり、自分の生き方に反映させるだけでもいい。このアウトプットが電子書籍ではやりやすいのです。」

意外と簡単な「自炊」

 後半は2人の参加者が「自炊」を体験。ハードカバーの小説を裁断機や鋏で解体し、スキャナーで取り込んで、電子書籍化の作業を行った。
かかった時間は説明を受けながらでも15分程度。慣れた人ならば10分程度で可能だという。
ただし「自炊」には機能的な制約がある。現在のところ、「自炊」した本はKindleよりもiPadのi文庫HDで読むのが最適だという。このように電子書籍リーダーには種類によって向き不向きがある。
「小説など文字の多い本を読むならばKindle Paperwhite、カラー写真の多い雑誌はiPadのアプリが向いていると感じています。」
 誰もが使ってみたくなる電子書籍リーダー。質疑応答ではデータのバックアップや自炊後のもとの本の管理についてなどの質問が寄せられた。バックアップは「良識の範囲内で」。スキャンした本は「1冊も捨てていない」。
「私の場合、自炊をするのはハイライトとメモの機能を使いたいから。別に家から本棚をなくそうというわけではありません。」
 これが倉園氏の本と読書に対する姿勢だ。
 夢は2つ。ひとつは「今を手段にしない働き方を広める」ことだ。顧みれば、人は何かをしているとき、多くの場合が次の予定を考えたり気にしたりして生きている。
「でもそれじゃ今が楽しくないし、そういう状態でやる仕事は質が低いと思うのです。」
 そのために今を目的として今にフォーカスした働き方を提唱していく。
 32歳まではプロミュージシャンだった倉園氏のもう1つの「夢」は音楽だ。
「去年、バンドを再結成して音を出したらすごく格好よかったのです。このバンドでロンドン公演をするのが今の夢です。」
夢を夢で終わらせない。「働き方」、そして「夢」を追い続ける倉園氏に会場からは盛大な拍手が送られた。

講師紹介

倉園 佳三(くらぞの けいぞう)
倉園 佳三(くらぞの けいぞう)
ITコンサルタント、執筆家、音楽家
1962年福岡県生まれ。1985年から1995年まで音楽家として活動。1996年に編集者に転身。1999年雑誌『インターネットマガジン』編集長に就任し、2002年に独立。2005年KDDIウェブコミュニケーションズ顧問に就任。著書に『すごいやり方』(扶桑社刊)、『iPhone×iPad クリエイティブ仕事術』『できるポケットAmazon Kindleクリエイティブ読書術』(インプレスジャパン)などがある。現在、時間や未来の目標に縛られることなく、「いまにフォーカスする」新しい働き方を提案するために、セミナーや執筆、講演活動を行っている。