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2013年7月30日(火)19:00~21:00

森山 たつを(もりやま たつを) / 海外就職研究家

若者は、なぜ海外で働くのか?
~2013年セカ就事情~

最近、日本を飛び出して海外、特にアジアで現地採用されて働く若者が増えていることをご存知ですか。海外で就職する若者というとMBAホルダーやTOEICが高得点のエリート学生で自分には関係ないと思っていませんか。「実は、アジアで現地採用されている若者は英語は日常会話がなんとか出来る程度」と森山氏は語る。彼らはなぜ日本を離れ海外で働く決意をしたのでしょうか。アジア各国で働く若者の仕事内容や生活環境、そして海外就職を決意した背景などを海外就職研究家の森山氏にお話しいただきます。海外で就職を考えている方必見です!

日本の若者を求めるアジアの求人市場

 森山たつを氏の肩書は「海外就職研究家」。その仕事は「セカ就=世界で就職する」を世に広めることだ。「グローバル人材」という言葉はよく聞くが、実際に海外で働くにはどうすればいいのか。本セミナーではグローバル人材の育成に努めている「開国ジャパンプロジェクト」の四方健太郎氏をゲストにお招きし、それをめざす若者を応援している森山氏に「セカ就」について具体的な事例をまじえながらお話いただいた。
 冒頭は森山氏の自己紹介から。大学卒業後はシリコンバレー系のIT企業に就職、その後に転職した自動車メーカーではグローバル部門で外国人を相手に仕事。社会人10年目には1年間の世界一周旅行を体験したという森山氏。キャリアが示す通り、視線の先にあるのは常に海外だった。「セカ就」に興味を抱いたのは、帰国して日系のIT企業に勤めていたとき。「ちょっと違うフィールドで仕事がしてみたい」と東南アジアに目を向けてみたところ、驚くべき事実に突き当たった。
「インドネシアやベトナムへの企業の転職サイトに登録して現地情報を調べたら、日本人に対する求人がめちゃくちゃあったんです。それも僕よりももっと若いキャリア3年くらいの人でもチャンスがいっぱいあった。これはおもしろい。伝えなければ、と思ったんです。」
 世の中には海外で働くという選択肢がある。ブログにそう書いたところ、13万回も見られた。出版社からは「セカ就」について本を出さないかというオファー。講演やセミナーの依頼もきた。気がつくと「セカ就」を人々に知ってもらうことが自分の仕事になっていた。そこで何か肩書を、ということでつけたのが「海外就職研究家」だった。

めざすは日本人としてのスキルを生かした「グローカル人材」

 では、海外で働くとはどういうことか。
「海外で働くと聞いて、みなさんがだいたい最初にイメージされるのはアメリカ。思い浮かぶのは、シリコンバレーやニューヨークで活躍するグローバル人材。スティーブ・ジョブズのような人だと思います。」
 ジョブズのような人物は「グローバルマッチョ」。スポーツならイチローや松井秀喜のような「才能があって、すごい努力をしている人」だ。だが、こんなふうにグローバル企業でトップをめざせる人は限られている。
「日本代表は島耕作。日本の会社でのしあがってグローバル人材になる。でもこれも大変です。じゃあ、どうすればいいのでしょう。」
 将来、海外で働きたいと思うなら外資系企業の日本法人に就職すればいいのではないか。普通ならそう考えるかもしれない。森山氏も四方氏も社会人としてのスタートは外資系企業。しかし、外資系企業の日本法人の場合、「お客さんは日本人」。英語を話す機会は意外なほどない。森山氏の経験でいえば、その後に勤めた自動車メーカーのグローバル部門の方がはるかに英語を使ったという。
 「今日のメインの話」は、あくまでも普通の若者に向けた「セカ就」事情。海外で働くのに何も大企業に勤める必要はない。例えば日本人向けの美容師や寿司職人など、現地で求められる人材になれば海外就職は難しくはない。 職種にもよるが、必ずしも高度な語学力が要るかといえばそんなことはない。むしろ欲しいのは日本人としての経験やスキルだ。
「大学を出ていきなり現地で就職するのではなく、国内で3年間くらい働いて、日本の商習慣や人とのつきあい方を覚えてから行った方が成功しやすいようです。」
 ここでは森山氏の著書にも登場する人々の事例を紹介。居酒屋の店長からインドネシアの日系商社で営業マネージャーになった20代の男性。アメリカの大学を卒業したものの日本では就職先に恵まれず、シンガポールでポテンシャルを発揮した20代の女性。日本でのキャリアは派遣社員のみで自分に自信がなかったが、タイに渡り引く手数多の人材となった20代の女性。マレーシアのフランス系IT企業で日本向けのホームページ制作を任されたウェブデザイナーの20代男性。より自由なステージを求めて香港の日系ベンチャーに職を得た元超大手IT企業の30代男性。日本にいると目に入らないだけで海外に飛び出している若者は大勢いる。そして、実はこうした人々の多くは海外に出ながらも日本人や日本企業をビジネスパートナーとしている場合が少なくない。森山氏はこんなふうに「自国特有のスキルを使って異国で働ける人材」を、「グローバル」と「ローカル」をかけあわせた「グローカル人材」と呼んでいる。

レアな存在となって「キャラ立ち」する

 海外はまたキャリアを積むにも適した舞台だ。日本では「実績や実力がないから」とやらせてもらえない仕事が海外ではできる。そしてそこでの何年間かが「実績」になる。また絶対数が少なければ「レアな存在」になれるし、「キャラ立ち」もする。20代の半ば頃を大連で過ごした四方氏の場合、「そこにいるということ自体が価値になった」という。サッカーの世界などでもウズベキスタンやニュージーランドなど意外な国で活躍している日本人選手がいる。四方氏は「日本は残念ながら大学受験に失敗するとその時点で、ビジネスマンとしての可能性がすごく狭まってしまうことが多い。だけど海外には一発逆転のチャンスがあるんです」と話す。森山氏も「海外の仕事でいいのは重要な仕事を任せされるところ」と言う。「同じ人間でも大舞台に立てば成長する」のである。
「世界で働く」ことができる人とは、「世界のどこかで求められているスキルを持っている人」、「世界の多くの人と意思疎通ができる人」、「世界の多くの場所で生きていける人」、それに何よりも「その国を好きになれる人」だ。海外で働くことはある意味苦労の連続だ。だが「この国が好きだ」だという気持ちがあれば乗り越えられる。今は日本語で登録できる人材派遣会社の現地窓口もあり、海外で就職するには恵まれた環境にある。東南アジアに行くと、目立つのは韓国人や中国人。森山氏は「日本人にももっと海外に行ってプレゼンスを示してほしい」と訴える。そうした「セカ就」に挑戦する人を増やすことが森山氏の夢でもある。そして四方氏の夢は「アジアの首都」たるシンガポールに拠点を移すことだという。
「野心がある人、チャンスをつかみたい人は、ぜひ海外行ってください。」
 日本の若者にエールを送るような力強い言葉でセミナーは閉幕した。

講師紹介

森山 たつを(もりやま たつを)
森山 たつを(もりやま たつを)
海外就職研究家
日本国内で10年間、アメリカ系IT企業や日系製造業に勤務後、海外での就職を決意しアジア7か国で就職活動を行う。その経験を元に、著書やセミナーなどで海外で働く若者を応援する「海外就職研究家」という活動に従事している。近著に「普通のサラリーマンのためのグローバル転職ガイド」などがある。