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イベントレポート

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2013年12月3日(火)19:00~21:00

瀬戸 圭祐(せと けいすけ) / アウトドアアドバイザー

バックカントリーの魅力
「スノーフィールド」を楽しもう!

バックカントリーとは、一般的に雪で覆われた自然のままの野山の事を言い、スノーシューや山スキー、クロスカントリースキー、スノーボードなどで楽しむための「スノーフィールド」。グリーンシーズンでは立ち入る事ができない場所も、深い雪に覆われた雪原になれば、自然を傷つける事なく、その懐に入って行く事ができる。そこには人工物が全て雪で覆い隠された、太古の昔と変わらない素晴らしく美しい自然の原点が広がっていて、童心で本能の赴くままに遊ぶことができるのだ。そんな新たな世界の楽しみを、アドベンチャーサイクリストの瀬戸氏にスライドショーを交えながらお話しいただいた。

太古の昔と同じ世界が味わえるのが「バックカントリー」

 昨年はサイクリストとして「“自転車の楽しみ”に嵌るシアワセ」というテーマでお話しいただいた瀬戸圭祐氏。今回は、アウトドアアドバイザーの立場からスノーシューを通じて楽しむ「バックカントリー=スノーフィールド」の魅力についてお話しいただいた。臨場感溢れる約200枚の写真とともに進行した2時間のセミナーは、参加者にとって「大人の雪遊び」とも言えるスノーシューの世界を知る絶好の機会となった。
 講演の内容は以下の順。

① バックカントリーの魅力 
② スノーシューの基礎と楽しみ方
③ ウェアリングと装備 
④ 動物と植物の雪上鑑賞会 
⑤ 雪上ランチを楽しもう 
⑥ スノーフィールドのリスクマネジメント
⑦ スノーシューツアーに行ってみよう
  まずは「バックカントリーの魅力」。「バックカントリー」とは「雪で覆われた自然のままの野山(フィールド)」のこと。瀬戸氏が見せてくれたのは1枚の写真。雪で覆い隠されたそこには人工物がひとつもない。あるのは雪の平原と山並だけだ。
「たぶん、1万年前も10万年前もこの景色は変わっていないはずです」
 太古の昔と同じ世界が味わえるバックカントリー。こうした場所では「人間も本来の姿に還りやすい」という。そしてこのバックカントリーは、実は日本の至るところにある。たとえばスキー場でも、ゲレンデを一歩離れればそこは人の姿も建物もないバックカントリーだ。雄大な景色の中で、そこにいる人間は自分たちだけ。こういった景色に身を置くと「人生観が変わる」。サイクリストとしてヒマラヤや北極圏など世界の辺境を旅して来た瀬戸氏だが、同じような感覚を日本ででも持つことができると気付いたのはバックカントリーの世界に足を踏み入れてからだという。

大人が子どもに還るスノーシューの楽しみ

 バックカントリーには、夏のグリーンシーズンとは違う、五感が研ぎすまされる凛とした空気や、雪や氷が織りなす「自然の芸術」がある。それらに触れるには自分の足でフィールドへと踏み込んで行くしかない。
「スノーシューはそのためのエキップメント。昔から雪国で使われてきた『かんじき』のスポーツバージョンだと思ってください」
 山スキーのように重くなく、クロスカントリースキーのように技術が必要でもないスノーシューは、「歩ける人なら誰でも気軽に楽しめる新しいスポーツ」だ。そのままだとずぶりと沈んでしまうふわふわの新雪の上でも、スノーシューなら沈まずに楽に歩ける。その感覚は「まるで雲かマシュマロ、あるいは綿菓子の上でも歩いているよう」だという。
「浮遊感覚がたまらない。一度ハマると病みつきになります」
 何もない雪原に自分だけの足跡をつけるのは「ちょっと罪なような」、しかし「快感」でもある。転んでも「思わずニマッとしてしまう」。踵が浮く構造なので歩行は簡単。フレキシブルに雪や氷を噛む爪があり、アイスバーンの上も普通に歩ける。競技ではないので距離やタイムを競うのでなく「楽しんだ者が勝ち」。そこでは誰もが「子どもに還る」。滑り台のように尻をついて斜面を滑ったり、ふわふわの雪に飛び込んだり、雪合戦をしたり、大の大人が笑い声をあげて遊ぶことができるのがスノーシューなのだ。
 ウェアリングについてはとくに決まったものはない。スキーやスノーボードのウェアでもいいし、アウトドアに適したインナーやアウターを適当に組み合わせてもいい。アウターシェルはゴアテックスなどの防水透湿性のある生地を。インナー(下着)は速乾性の新素材を用い、その間には体温調節がしやすいように薄手の物を重ね着する。「足が濡れて冷たくなると楽しさが半減する」のでスパッツは必需品。紫外線対策の日焼け止めやサングラスも同様。「常に現在地を把握しておくため」の地図や、万が一の遭難に備えてのヘッドライトやホイッスルも持っていたい。

マナーを守ることがフィールドを守ることになる

 バックカントリーはその景色も魅力だが、動植物の観察にも非常に適している。木々の葉が落ちた森は他の季節に比べるとはるかに見通しがきくし、白銀の世界はそこにあるものを見つけやすい。雪面を見れば、そこにはウサギやリス、キツネなどの足跡があるし、サルやカモシカなどの大型獣と出会うこともある。一方でこの季節はマムシや熊などの危険な動物は冬眠していないし、スズメバチも出てこない。そういう意味では安心して動植物の観察ができる。さらにもうひとつ、木々の枝や芽につく霧氷、つららやちょっとした氷瀑など、自然がつくる芸術をじっくり鑑賞できるのもこの季節ならではのものだ。 
 スノーシューの大きな楽しみのひとつが「雪上ランチ」。サンドイッチにコーヒー程度でもいいが、やはりここはスキヤキなどの鍋パーティーがおすすめ。まずは雪を掘ってテーブルと椅子を作る。講師いわく「これを作ること自体が楽しい」。コンビニなどで売っているアルミ鍋セットにオリジナルの具材を付け足す。締めはおにぎりを入れて雑炊に。景色のいい野外での食事は最高だ。
 楽しいことだらけのスノーシューだが、むろんリスクはある。いちばん大切なのは天気。「『天気がいいときに行く』というのが絶対条件です」
 川のそばや氷の割れ目、稜線上の雪庇の上などには近づかない。低木類や笹がある場所は安全そうに見えてもすぐ下に空洞があったりするので注意が必要。急斜面の谷やクラック(裂け目)が入った雪面は雪崩の危険性があるので入らない。それと何より行動は日中のみ。冬は午後3時、春でも午後4時にはゴールするのが鉄則だ。また、最近はスノーシュー人気の高まりもあって日光戦場ヶ原などの貴重な湿原では立ち入りが禁止されている場所もある。ゴミの持ち帰りなども含め、マナーを守ることが大切だ。
 こうしたスノーシューを初めての人が体験するにはガイド付きのツアーに参加するのがもっとも便利だ。ネットなどで調べれば東京発着のツアーなどが簡単に見つかる。最近は各地のスキー場やリゾートホテル、ゴルフ場などでも独自のツアーやレンタル器具の貸し出しを行っているところが少なくない。まずはレンタルで体験、というのも悪くないだろう。
 瀬戸氏の「夢」は、バックカントリーのフィールドを「みんなで守っていく」ことと、「自転車社会のために貢献すること」。
「どちらも夢であると同時に、実現せねばならない願いだと思っています」

講師紹介

瀬戸 圭祐(せと けいすけ)
瀬戸 圭祐(せと けいすけ)
アウトドアアドバイザー
山好き/自転車好きが高じて、富士山、御嶽、乗鞍岳などの自転車登山を皮切りに、ロッキー、アルプス、西ヒマラヤ/カラコルム、ヒンズークシュ、北極圏スカンジナビアなど世界の大山脈を自転車で縦断走破する。全国各地のスノーフィールドを歩き、結婚式は厳冬期のエベレスト山麓4,000mにて挙げた。「スノーシューの楽しみ方」「アウトドア大研究」「オートキャンプを2倍楽しむ」など、アウトドア/自転車関連著書多数。NPO法人自転車活用推進研究会理事、(一財)日本自転車普及協会事業評価委員。