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イベントレポート

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2013年12月10日(火)19:00~21:00

土屋 渉(つちや わたる) / 元大阪観光大学 教授

ヨーロッパ旅行での食の楽しみ

ヨーロッパ旅行の楽しみといえば、普段と違う風景や自然を味わい異文化にも触れられること。そして何よりも、その国の地方色豊かな食事を味わうことではないだろうか。今回のセミナーでは日本政府観光局(JNTO)でヨーロッパに長年駐在し観光施設、食事を視察してきた土屋氏をお招きし、ヨーロッパ旅行での食事の楽しみ方や地場の美味しいものの探した方についてお話しいただいた。

安くてお得なクリスマスシーズンのヨーロッパ

 講師の土屋渉氏は日本政府観光局(JNT0)のスタッフとしてフランス、スイスなどに長年駐在したヨーロッパの「食」と「旅」のプロ。この日のセミナーでは、フランスワインや各地方の料理、またドイツ・ミュンヘンの「オクトーバーフェスト(ビール祭り)」やクリスマスの季節に食べるスイーツなど、「食」を中心としたお話を聞かせていただいた。合間に映像やワインのテイスティングなども挟んだ2時間はちょっとしたレセプション形式。まさにヨーロッパ旅行へと出かけたくなるような楽しいひとときとなった。
 まずはクリスマスに近いこともあって、ドイツを中心としたクリスマス旅行の紹介から。モニターに映るツアーパンフは見ていると行きたくなるようなものばかり。フランクフルトからロマンチック街道を南へ。ローテンブルグを経由してノイシュバンシュタイン城、そしてミュンへンへと至るコースは夏のシーズンもいいが、クリスマスのこの時期もいい。600年もつづくフランクフルトのクリスマスマーケットをはじめ、各都市にはそれぞれ特長のあるマーケットがあり、この時期ならではのグリューワイン(ホットワイン)が味わえる。シーズンオフとあってツアー代金は添乗員付きで約16万円。これは現地をよく知る土屋から見ても「かなり安くてお得」なものだ。
「そのかわり肌にびりびりくるような寒さを味わうことになりますが、こうした寒さもたまに味わう分にはいい刺激になると思います」
 ドイツはホテルの質においてもヨーロッパ随一。同じヨーロッパでもイタリア南部辺りだと最低でも中級以上のホテルに泊まらないと設備やサービスで不快な目に遭う可能性が高いが、ドイツの場合は「安いホテルでも安心」。だから「ドイツではホテルにお金をかける必要はありません」。そのぶん「食」や「酒」を楽しむといい。

独特の酸味が清涼感をもたらす「ボジョレー・ヌーヴォー」

 次のトピックは前月に解禁となったばかりの「ボジョレー・ヌーヴォー」について。ワイン通の間では知られていることだが、実は時差の関係でこの「ボジョレー・ヌーヴォー」が世界で最初に飲めるのが日本だ。「ボジョレー・ヌーヴォー」とは、「その年に収穫されたブドウ(ガメイ種)を使用し、その年の11月に出荷される新酒のこと」を指す。普通のワインとの違いは醸造方法。普通のワインの場合は、ブドウを搾汁機などでつぶして果汁を搾ってから発酵させる。しかし「ボジョレー・ヌーヴォー」はつぶさずにそのままタンクに入れて発酵させる。結果、生まれるのが「ごくわずかながら炭酸ガスを含有し、独特の清涼感をも感じさせてくれるワイン」だ。使用しているブドウのガメイ種は実は「たいしたワインができるブドウではない」と言われている。が、この醸造方法が独特のワインを生み出した。新酒は基本的には「1年以内に飲み切りたい」もの。そのため1年近く経った「ボジョレー・ヌーヴォー」は良い物でも1,000円以下で買えたりするという。そして「ヌーヴォー」ばかりが有名になっているボジョレー地区にはフランス政府が認めた優れたワインを産出する10の村がある。ここで作られるワインは「クリュー・デュ・ボジョレー」と呼ばれる良品揃い。日本でも「デパートの地下に行けば3,000円程度で手に入ります」。
 ワインの次はビール。ミュンヘンの「オクトーバーフェスト」を数字を出しながら紹介。毎年9月に行われるこのビール祭りにはおよそ600万人もの人が集う。メイン会場の大テント内でビールを飲む男女には民族衣装姿の人が目立つ。2006年のデータではこの祭りで1リットルの大ジョッキ約620万杯のビールが飲まれ、約100頭分の牛が丸焼きとなり、約22万本のソーセージと約46万羽のチキンの照り焼きが消費された。これだけ見てもすごい規模の祭典だということがわかる。
 話は再びフランスへ。「ボジョレー・ヌーヴォー」が出荷されるこの時期、フランスは「ジビエ(gibier=狩猟の獲物)」の時期を迎える。野ウサギやシカ、仔イノシシ、カモやキジなどの鳥類が店頭に並ぶのがこの季節。シカの赤い肉や皮を剥いで吊るされたウサギを見ると、フランスの人たちは「美味しそう」と口にする。こうした「ジビエ」の美味しさを決めるのは「血抜きの処理」。それによって味は大きく変わるという。ちなみにフランス人と日本人では「肉に対する感覚が全然違う」。フランス人にとって肉は「噛みごたえ」のある食材。和牛の霜降り肉のように口の中で溶ける肉は「フランスの文化にはない」。
 食事にはデザートもつきもの。とりわけクリスマス前はそれにちなんだケーキ類の人気が高い。フランスのクリスマスケーキ「ビュッシュ・ド・ノエル(クリスマスの丸太の木)」、クリスマス前のアドベントの期間に少しずつスライスして食べるドイツの「シュトレン」など、ヨーロッパには国によってさまざまなケーキがある。

講師おすすめのテーブルワインをテイスティング

 セミナー前半の最後はクイズ。参加者の間にまわされた小瓶の中身は「Le Nez du Vin」(ワインの複雑な香りをかぎ分けるトレーニング用のエッセンス)。ビンに入ったエッセンスの何の香りであるかを3択のクイズ形式で当ててもらった。
 後半はお楽しみのテイスティング。参加者全員に試してもらったのは発酵直前の白ブドウのジュース「ムー・ドゥ・レザン」にグリューワイン。それに「ボジョレー・ヌーヴォー」と「ボジョレー・ヴィラージュ・ヌーヴォー」。そして土屋氏のお気に入りの「ゲヴェルトラミネール種」でできた白ワイン。フルーティーなテーブルワインはチリ産であれば800円程度で購入可能だ。
 では、実際にフランスやドイツに行くとする。「食の楽しみ」を味わいたいのならばツアー選びも大切だ。ポイントはパンフレットに料理に関する記載があるかどうか。旅程表に、たとえばアルザス地方ならば「シュークルート(蒸したキャベツの上にソーセージやベーコンがのったもの)」の名が、ブルゴーニュ地方なら「牛肉の赤ワイン煮」を食すことが予定に入っているかどうか、そうした点に注意を払って選べば失敗することはない。
 タイ語やイタリア語など数か国語に堪能な土屋氏。「夢」は「ドイツ語を勉強してドイツを旅すること」だという。
「ヨーロッパの食」を極める同氏の語学に対する情熱は、「もっと食を楽しみたい!」ということにつながっているのだろう。d-laboはこれからもさまざまな「したいを発見できる場所」として、そしてまた「その実現をお手伝いする場所」であり続けたい。

講師紹介

土屋 渉(つちや わたる)
土屋 渉(つちや わたる)
元大阪観光大学 教授
早稲田大学第一文学部仏文科卒業。日本政府観光局(JNTO)に37年間勤務し、外国人旅行者の日本への誘致宣伝の業務に従事。その間、タイ・バンコク、フランス・パリ、スイス・ジュネーヴ等に15年間、駐在し、日本への外国人旅行者誘致の参考とするため、主要国の観光施設、食などを精力的に視察してきた。JNTO退職後、大阪観光大学において国際観光(インバウンド)に関する科目を担当。2012年3月に退職し、現在は共栄大学にて非常勤講師を勤める。