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イベントレポート

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2014年2月25日(火)19:00~21:00

井上 智宏 (いのうえ ともひろ) / ベンチャーインク国際会計事務所代表

MBA×会計
-世界の若手ビジネスリーダー達は何を学んでいるのか?-

ビジネスパーソンであれば一度は耳にしたことがある「MBA(経営学修士)」。MBAプログラムを提供する世界のビジネススクールは、いま何を教えているのか?近年人気のあるインドや中国など、新興国のビジネススクールの現状はどうなのか?今回のセミナーは米国、インド、中国にMBA留学されていた井上氏にご登壇いただき、最新の「リアルな海外MBA留学体験」、「起業家のためのMBA会計学」と題したMBAアカウンティングレクチャー、そして公認会計士でもある井上氏がいま最も力をいれているベンチャー支援についてお話しいただいた。

MBAでキャリアチェンジ

セミナーの冒頭はグローバルカンパニーに関するクイズ。世界の企業のうち、最大の時価総額を誇るのがiPhoneを擁するアップル。そして最大の売上高を持つのがスーパーマーケットチェーンのウォルマート社だ。
「では、その額はいくらでしょうか?」
答えは、どちらも約46兆円。日本でグローバル企業とされているソニーの時価総額が2兆円、スーパー大手のイオングループの売上高が5兆円ということを考えると、グローバルカンパニーと日本企業との間にどれだけ差がついているかが理解できる。
「実はこれは、ビジネススクールに入学して最初に訊かれた質問でした」
井上智宏氏が入ったデューク大学のビジネススクールはアメリカ東海岸にある名門校。現アップルCEOのティム・クックや、ビル・ゲイツの妻のメリンダ・ゲイツが卒業したことでも知られ、アメリカ人を中心に、アジアや中南米などから大勢の学生が集まっている。だが、入学時、この質問に対し「ほとんどの生徒は正確に答えることができなかった」という。
「MBA留学というと優秀なビジネスマンばかりが集まっているという印象ですが、誰もがビジネスの知識を持っているわけではない。それまでのキャリアを変えてビジネスを一から学ぶ。そういった場なんです」
もとは監査法人で公認会計士をしていた井上氏がデューク大学に入学したのは2011年のこと。今回のセミナーでは、入学準備から卒業後の活動に至るまで、「MBA留学中に感じたリアルな話」を聞かせていただいた。

MBA留学への入学準備=時間をかけて英語力と費用の問題をクリアする

MBA(Master of Business Administration)とは日本語で「経営学修士」。2年間をかけてビジネスを学ぶ修士課程のことを指す。かつては経営や会計といったものを学ぶ場というイメージだったが、現在はそれにプラス、ビジネススキルを磨いたり、キャリアアップを目指したり、あるいはリーダーシップを養うことを目的としている学校が多い。カリキュラムも座学一辺倒ではなく、チームでディスカッションして課題に臨むものや、プレゼンテーションの経験を積むものなど、「クラスメイトと楽しく学ぶ」ことが中心。デューク大学のようなグローバル環境の学校ならば多くの国の友人ができるし、そうしたネットワークは将来に渡って財産となる。アメリカの経営者の多くはこのMBAを取得している。例えば、教師からコンサルタントへ、看護師からビジネスの世界へ、といったように、MBA取得を機に、それまでの職とはまったく違う業界に入ることも珍しくないという。
ただし、MBA留学するのは「結論から言うとけっこう大変」だ。まずはどこの学校に入るのか。入学要件を満たすための仕事の実績はあるか。英語力はどうか。そして生活費や学費を用意できるのか。MBA留学にはこの4つの課題をクリアすることが必要だ。
「留学費用は2年間で1,000万円から1,500万円。私の場合は貯金と奨学金で賄いました」
かかるのはお金だけではない。時間と労力も費やす。普通、海外経験の薄い「純ドメスティック」な人の場合、TOEFLやGMATで入学に必要な合格点を得るには「TOEFLだけでも30回程度はテストを受ける」し、「長いと5年間」ほどの時間が必要となる。ちなみに井上氏の場合は2008年から入学準備を開始し、入ったのが2011年だから、3年あまりをかけたことになる。
「ただ、英語の力は確実につきますし、やる価値はあるはずです」
こうして入学したデューク大学ビジネススクール。d-laboのモニターにはデューク大学での学生生活を記録した画像が次々と映し出される。緑豊かなキャンパスに、人種の違う仲間たち、それぞれに違うキャリアを持つクラスメイト、学内でのさまざまな行事や授業、チームミーティングの光景。2年間の体験のなかでもっとも印象的だったのは「プレゼンの授業」と井上氏。本番のビジネスと違って、ここでは失敗も許される。ビジネススクールは「ビジネスリーダーの士官学校」。日本人はプレゼンが苦手とよく言われるが、そこにはこうした教育機関の有無が影響しているのかもしれない。

「日本発グローバル」で元気な日本をつくる

デューク大学ではインドと中国への交換留学も体験した井上氏。現在は帰国し、主にベンチャー企業を支援する会計事務所「ベンチャーインク」を開業している。セミナー後半では会計とは何か、配布した資料を見ながら、アップルの決算書を読み解いてみた。
「企業における会計とは、基本的に、資産、資本、負債、収益、費用、の5つの言葉で説明できます」
よく耳にする「賃借対照表」や「損益計算書」といった言葉。素人にはちんぷんかんぷんだが、実はおおかたは「足し算」と「引き算」の世界だ。
「企業の会計とはこういうことの繰り返し。このルールを理解していれば、どんな巨大企業の決算書でも全体像がつかめるはずです」
最後は会計事務所を通して眺めた「ベンチャーの今」。海外に比べると勢いが足りないように感じる日本だが、「状況はここ2年くらいで変わってきている」と井上氏。「会計で言えば、マネーフォワードやFreeeなど、クラウド会計という新しいサービスが出て来ています。他にも最初からアジアをターゲットにした電動バイクのテラモータースや、シリコンバレー発の電動車椅子メーカー、WHILLなど、注目すべき企業が勝負をかけています」
それに応じてこれまでのベンチャーキャピタルに加えて、企業を支援するインキュベーターやコーポレートベンチャーキャピタルといったベンチャーの事業を後押しする人たちが増えてきた。
「私の会計事務所もインキュベーターの役割で何かできないか考えています」
目指すは「日本発世界へ」、そして「世界から日本へ」といった動きを促進すること。会計のプロである井上氏がMBA留学をしたのも、グローバル感覚でこうした仕事をすることが目的だったからだという。
日本の景気が浮揚するには、日本発グローバルのビジネスが不可欠だ。
「そのプレーヤーの1人となって社会に貢献していくのが夢ですね」

講師紹介

井上 智宏 (いのうえ ともひろ)
井上 智宏 (いのうえ ともひろ)
ベンチャーインク国際会計事務所代表
2003年一橋大学商学部卒業後、中央青山監査法人(現・あらた監査法人)に入所。株式公開支援に加え、国内上場企業及び外資系企業の会計監査を担当し7年間勤務した後、独立。2011年7月、デューク大学フュークアビジネススクール留学、2013年MBA(経営学修士)取得。在学中に、インド商科大学院(ISB:Indian School of Business)と北京大学経営大学院に交換留学。現在、ベンチャーインク国際会計事務所代表。