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イベントレポート

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2014年4月3日(木) 19:00~21:00

小杉 博俊(こすぎ ひろとし) / 紙の仕事人

Facebook画像de発想力アップ

Facebookのタイムライン上で表示される数々の画像を見ていると、ときに「Aha!」と感じるような画像に気づかないだろうか。「実はこの画像を見た際に 『オズボーンのチェックリスト9項目』で分析する習慣をつけると、「既存の要素」を新しく組み合わせたアイデアが次々と湧いてくるようになる」と語る小杉氏。今回のセミナーでは、このアイデア発想力アップを自身も実践し「ブリコラー(bricoleur)COSUGI」を自称する小杉氏をお招きして、『オズボーンのチェックリスト9項目』によりビジュアル的にとらえる「ビジュアル発想法」をご紹介いただいた。

発想力で新市場を開拓

大学で工業デザインを学び、社会人となってからはクリエイター=「紙の仕事人」として「50年近く紙の関係で仕事をしてきた」という小杉博俊氏。世に送り出した商品は、それまでにないユニークなものばかり。そこには常に自分ならではの発想があったという。
セミナーの最初に紹介してくれたのは、そんな自身の発想力を武器に開発してきた商品の数々。デパートのショッピングバッグが催事広告入りのものであった時代には、買い物して帰宅した後にもう一度楽しさを反芻でき、使い回してもらえるようなお洒落な和紙風ショッピングバッグを発案した。大丸で採用されたこのショッピングバッグの素材には当時、小杉氏が新しく開発した紙を使用。昨年の出雲大社遷宮の際は、御本殿の大屋根に用いていた檜の皮を混抄した「混抄紙(こんしょうし)」を開発。「出雲大社遷宮檜皮混抄紙」として、祝詞紙や色紙、感謝状などに使われた。またCDを90円で安全に郵送できるパッケージ「CDメールパック」も開発。この「CDメールパック」はプロバイダのインターネットサービス加入促進用DMとして採用されるなどして、15年間で2億7,000万枚を超える大ヒット商品となった。現在普及しているDVDのネットレンタルサービスなども、返却郵送時にこのパッケージを利用。「CDメールパック」の開発で「光ディスクを定形郵便で送る市場」が創出されたのだ。さらに、ここから光ディスク傷付防止用「ソフトビーズ加工紙」が生まれた。このようにさまざまな素材や商品と新しいマーケットを創造してきた小杉氏。若い頃からいつも新しいアイデアを探し求めていたという。四六時中は、テレビや新聞、雑誌、ショップなどを介しての「新製品」、「新技術」のチェック。とくにクリエイターとして冴えていた30代の頃は「お店やイベントに行くと、モノが呼びかけてくる」というほど敏感なアンテナを持っていた。それが最近では「歳をとってだんだんと発想力が落ちてきた」と感じるようになった。

Facebookの画像から「ビジュアル発想術」を開発

「そのときに参考になったのが、ジェームス・W・ヤングの名著『アイデアのつくり方』でした」
1940年初版という「自分よりも年上」のこの本には「アイデアとは、既存の要素の新しい組み合わせ」という発想の本質が説かれていた。この世にまったく新しいアイデアなどはない。良いアイデアを生むには、「既存の要素」をいかに多く自分のものにするか。それを組み合わせるには「物事の関連性を見つけ出す訓練」が必要だという。そのために有効なのが「視点を変える癖」や「面白く感じる癖」だ。小杉氏がここで注目したのが、脳科学者の茂木健一郎氏が広めている「Aha!(アハ!)」体験。「Aha!」とは「わかったぞ」の意。英語圏では閃きや創造といった脳の働きを示す言葉とされている。そんな折、日本でもFacebookが普及。ここにアップされる画像には「Aha!」と感じるようなおもしろいものが多いことに小杉氏は気づく。
「これをうまく発想法の訓練に結びつけられないかと考えたんです」
小杉氏が方法として採用したのがアレックス・F・オズボーンのチェックリスト9項目。オズボーンといえば、ブレインストーミングの考案者。その発散発想技法は「オズボーン法」と呼ばれ、9項目のチェックリストを活用することでアイデアの発想法や分析力が鍛えられるとされている。
チェックリストは以下の通り。
1:こんな使い方!(転用)
2:真似した!(応用)
3:上手く変えた!(変更)
4:大きぃ~!(拡大)
5:小さぃ~!(縮小)
6:肩代わり!(代用)
7:入替え!(置換え)
8:見事な返し!(逆転)
9:変な組合わせ!(結合)
セミナーでは、小杉氏がFacebook上から選び抜いてきた「Aha!」画像をモニターにアップ。風船でできた戦車や、人間のおなかに見えるソフトクリーム、照明スイッチの突起を人の部位に見立てた画像、逆向きに座ると水平に張り出した背もたれが机にもなるベンチ、樹木の形をしたラックに木の実のようにかけられたトイレットペーパー、女性の胸に描かれた本物かと見紛うような赤ちゃん、コカコーラの黒いボトルに飲むと浮かび上がるように記された愛のメッセージ、紙幣の肖像を折り曲げて実在の人物の顔とコラージュした1枚、本セミナーのフライヤーにも使用された看板とベンチを兼ねた広告など、不特定多数の人が遊び心でアップした画像を見て、瞬時に「これは転用」、「ここには逆転の発想がある」、「結合!」と、9項目のいずれかを当てはめていく。その瞬間、「頭の中はぐるぐるしているはずです」。この脳の「ぐるぐる」こそが分析力や発想術の訓練になる。
「最初は9項目のリストを覚えるだけでも大変ですが、1年間もつづけていればこのビジュアル発想術は会得できます」

発想が豊かであれば自分でモノが作れる世の中に

チャップリンは「アイデアは、それを一心に求めてさえいれば必ず生まれる」と言い、パスツールは「ひらめきは、それを得ようと、準備、苦心した者に与えられる」と遺した。アイデアは閃きによって生まれるかもしれないが、それを生み出すには日々の努力が不可欠。「ビジュアル発想法」を開発した後も小杉氏は「Aha!」探しを怠らないという。
「新技術や新製品を求めていた頃と同じように、朝から就寝時までメディアやFacebookで『Aha!』を見つけては脳を活性化して、気が付いたことはFacebookにメモとして投稿しています」
一昨年、70歳になった小杉氏。現在は会社経営の傍ら、クリエイターとしてコラボレーション・シェアオフィスで活動する毎日。多種多様な素材のライブラリーである『マテリアル・ガーデン』のキュレーターとしても活躍している。また「ビジュアル発想法」以外にも、複数のFacebookページを運営。最近は「紙の仕事人」のほか、「既存の物を寄せ集めて作る人」という意味で「ブリコラー小杉=Bricoleur COSUGI」も自称している。そうした小杉氏の目下の「夢」は「創作者のアイデアとスマートクリエイターのデザインセンス、デジタル工作機器の力で作る『Smart Makes』」だ。
「発想が豊かであれば、製作する腕(技術)が無くても自分でモノが作れてしまう。そういう世界を現実のものにしたいというのが僕の夢です」

講師紹介

小杉 博俊(こすぎ ひろとし)
小杉 博俊(こすぎ ひろとし)
紙の仕事人
日本大学芸術学部工業デザイン科卒業。大日本文具(現ぺんてる)、王子カミカ役員を経て、1977年にシステムクリエイツを設立。1970年代にユニバーサル商品の提案により「毎日工業デザイン賞」を二度受賞。1995年と2000年に「全日本DM大賞郵政大臣賞」、2013年に iPhone&iPadアプリで「キッズデザイン賞」を受賞。「王子バッグナチュラル紙」、電子体温計「けんおんくん」、光ディスク傷付防止用「ソフトビーズ加工紙」、ケータイ画面拡大用カメラ「写ミール」、「出雲大社御遷宮檜皮紙」など、約50年にわたって紙を中心とした商品開発などを多数手がける。2012年、活動拠点をco-lab渋谷アトリエに移し、IT時代のクリエイターとして活動を開始。コ ト・モノをBricolageする「ブリコラー(bricoleur)COSUGI」と自称。
・Facebook「ビジュアル発想塾」
・Facebook「紙の仕事人」
・Facebook「マテリアル・ガーデン」
・Facebook「ちょっと未来のテクノロジー」
・Facebook「Mirai Child Education Project」