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イベントレポート

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2014年4月12日(土)13:30~15:30 

松田 光一(まつだ こういち) / グラフィック・アーティスト  

d-laboアート教室
~みんなで夢の富士山を描こう~

"世界遺産"とは、人類が築いてきたかけがえのない文明や歴史によって生み出され、過去から現在へと引き継がれてきた宝物。そんな世界遺産に魅力を感じ、世界遺産をモチーフにした絵を描き続けている松田氏。「世界遺産の絵を通じて人々を繋ぐ平和の心を創りたい」と考える同氏をd-labo二子玉川にお招きし、子ども向けに富士山を描くワークショップを開催。果たしてどんな富士山が完成したのか。

子どもも大人も、みんなで一緒に富士山を描く!

12階の窓から春の日射しが差し込む4月のd-labo二子玉川。この日のセミナーの舞台はd-labo二子玉川内にある『KIDS d-labo』。子ども同士や家族が楽しく触れあえる場として設けられたこのスペースで、松田光一氏によるアート教室が開かれた。
参加者は15人の子どもたちとその保護者たち。まずは一人ひとりが「名前」と「年齢」の簡単な自己紹介。次いで講師の松田氏が挨拶に立つ。
「講師といっても何か教えるわけではありません。今日はみなさんと一緒にひとつの作品を描いていけたらと思います」
松田氏がテーマに選んだのは、誰もが知っている富士山。世界遺産を描きつづけている松田氏にとっても、先頃、世界遺産に登録されたばかりの富士山は思い入れのあるモチーフだ。この日用意したのは大きな2枚のキャンバス。この真っ白な紙に、全員で富士山を描いていく。そのうえで提示されたのが「ちょっとしたルール」。
「今日は4つのグループに分かれて、1枚は緑と黄色、もう1枚は青とピンクを使って富士山を描いていこうと思います」
他にはルールはなし。
「みなさんには、自分の好きなものをいっぱい描いてほしい。その好きなもので富士山を埋め尽くしていってください」
最初に必要なのは「富士山の輪郭」。これは挙手してくれた保護者が担当。真っ白な紙におなじみの富士山の形が浮かびあがり、キャンバスが「空」と「山肌」に分かれる。
「こっちの1枚は空が黄色で富士山は緑に。もうひとつは空が青で富士山はピンクにしてください。あとは人でも車でも、何でもいいから好きに描いて。どうなるかわからないけれど、それが絵のおもしろいところです」

大きなキャンバスもあっという間に埋まっていく

講師の号令で子どもたちが一斉にキャンバスに向かう。おもしろいことに、誰がそうしろと言ったわけでもないのに、女の子は自然とピンク色を使うキャンバスへ、男の子は緑色のキャンバスへと集まっていく。使用するのは色鉛筆にクレヨンにポスカ、そしてアクリル絵の具。子どもたちは思い思いの絵具を手に、キャンバスに線を走らせる。子どものすごいところは迷うことなく描き始める点。富士山の麓に、空に、キャラクターや建物など、いろいろなものが描かれていく。
「これは何?」
「これはネコ!」
すらすら描いていくさまには講師も脱帽。「俺よりうまいなー」と嬉しそうに笑う松田氏。心配なのは「思ったよりも早く絵ができてしまいそう」なこと。大勢で描くことを予想してB1サイズの紙を用意したものの、子どもたちの勢いの前にはこれでも小さすぎたよう。「自由を奪ってしまうかも」と迷った使用カラーのルールは、どうやら正解。色を選ばなくていいためか、子どもたちはかえって絵を描くことに集中している様子。右を見れば大好きな建物をひたすら描いている男の子。左を見れば一心不乱にハートマークを描いている女の子。黄色の空には太陽や星がいくつも浮かび、ピンク色の山肌にはウサギやクマやてんとう虫、音譜、蝶、女の子の顔などが、おもちゃ箱の中身のようにひしめいている。いつも目にする富士山とは全然違うオリジナルの富士山。しかし、あらためて見ると、やはり富士山は富士山。松田氏自身の世界遺産アートを思わせるような斬新でダイナミックな「富士山」に、周囲の大人たちは「すごい」、「上手」、「かわいい」と手を叩く。想造以上の展開に、松田氏も「無茶苦茶ラブリー!!」と満面の笑み。時間の経過とともに、絵を描くことに満足したのか、その場から離れてd-labo内の探検を始める子どもたちも現われる。こうなると大人たちの出番。
「仕上げは大人たちで!」
松田氏が声をかけると、待ってましたとばかりに大人たちが絵具を使い始める。実は大人もみんな「描きたくてうずうずしていた」。
おもむろにクレヨンで白い部分を塗りたくるお母さんもいれば、絵の具で富士山の輪郭を強調していくお父さんもいる。その横では、乾いた絵の具の上にさらにポスカで絵を描く男の子。女の子の2人組は同じくポスカで空にドットをつくっていく。スタートして30分あまり。この間、すでに子どもたちの大半は絵から離れて遊んでいる。描くだけ描いたら満足して自然解散。これがいい。
「絵を描くのって本当にしんどい作業ですからね。こんなふうに自由に遊んでくれた方が僕としては嬉しいですね」
そう語る松田氏の隣では「大人の〈埋めたくなる衝動〉」に駆られた大人たちが画面をひたすらピンクに塗りつづけている。お父さんのひとりは、とうとう自分の手を筆にして富士山を大胆に着色。重厚感のある緑色の富士山ができていく。

「夢」は必ず叶う。子どもには好きなことをさせるのがいちばん

1時間近く経ったところで作品制作は終了。テーブルの上にはそれぞれ特色のあるふたつの富士山が並んでいる。どちらの絵も迫力満点。そして、狙ったわけではないのに見事にアートな作品に仕上がっている。これにはプロの松田氏も「すごい!!」と感嘆。子どもたちの持つ潜在能力や感性に、あらためて感心させられるワークショップとなった。
アート教室の最後は松田氏への質問。
「絵を完成させるのに何日かけますか?」という問いには「この絵と同じくらい」という答え。
「僕は絵を描くのに時間はかけません。なぜなら、何日もかけると最初に感じた気持ちが変わってしまうからです」
「画家としてのこれからの目標は?」には、「まずは1,000か所近くある世界遺産をすべて描く。それ以外のモチーフでも自分の作品と呼べるものを生み出していきたいですね」。
もし子どもが「画家になりたい」と言い出した場合は、「人に迷惑さえかけなければ好きなことをやるのが一番」。人生はどんな道でも「しんどい」。だったら好きなことをする方がいいに決まっているからだ。
「夢は必ず叶います」と松田氏。
「僕の今の夢は素敵な家族をつくって素敵に生きていくことです」
 子どもたちに絵を描く楽しみ、みんなで協力しあってひとつのものを創る喜びを与えてくれたアート教室。d-labo初となる試みは、笑顔の記念撮影で幕を閉じた。

講師紹介

松田 光一(まつだ こういち)
松田 光一(まつだ こういち)
グラフィック・アーティスト  
人類共通の宝物である「世界遺産」をモチーフにした絵をマーカースケッチとコンピューターグラフィックを使って描く画家。2010年から「World Heritage Art」(世界遺産アート)という自身のブランドを立ち上げ、現在も活動を続けている。活動の目的は、“国境を越えて世界を大切にする心”を創ること。