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イベントレポート

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2014年4月22日(火) 19:00~21:00

石井 宏子 (いしい ひろこ) / 温泉ビューティ研究家

旅に出かけるだけで"美と健康"が手に入る
「温泉ビューティツーリズム」のすすめ

人はなぜ、温泉に出かけたくなるのか? 頑張ったプロジェクトを達成した時、あるいは、気持ちがめげそうになって癒されたい時、ストレスが溜まって心や体をリセットしたい時、楽しい仲間とわいわい過ごしたい時、ひとりの時間をゆっくりと過ごしたい時など、さまざまな理由で「温泉に行きたい」と思うのかもしれない。温泉の旅に欠かせない四大要素「温泉」、「自然環境」、「食」、「宿での過ごし方」を紐解くと、その中に美容・健康をサポートする要素がたくさんある。今回は心身ともにきれいにしてくれる「温泉ビューティツーリズム」について温泉ビューティ研究家として活躍中の石井宏子氏にお話しいただいた。

温泉は地球がくれたビューティツール

セミナーは「スイッチオフしていますか?」という石井氏の問いかけから始まった。
「温泉旅の基本はスイッチオフすること。今の時代はみなさんフル回転でオーバーヒートしている人が多いはずです。温泉ではそのスイッチをオフにしてぼーっとする。ぼーっとするってこんなに気持ちいいものだったのかと思い出させてくれるのが温泉なんです」
日本人ならたいていの人が好きな温泉旅。「お湯」が良くて、「宿」も「食事」も周囲の「自然」も素晴らしければ最高。この4つの要素にはそれぞれ「美と健康」につながる部分があるという。
「これを組み合わせると『ビューティツーリズム』になる、というのが私の持論なんです」
温泉は「地球がくれたビューティツール」。その土地から湧く湯や自然に触れ、その土地で育った食材をいただく。温泉街の風情を楽しみ、宿で心に響く体験をする。温泉ごとに違う泉質を知り、入浴方法を工夫するとリラックスできるだけでなくダイエットやアンチエイジングにもなる。よく「美肌の湯」、「美人の湯」と聞くように、温泉には確かにビューティ効果がある。
セミナー前半は「うんちく」編。そもそも温泉とは何か。地下水と温泉とはどう違うのか。1948年に制定された温泉法では地中から湧き出す温水・鉱水・水蒸気及びその他ガスで、なおかつ、源泉の温度が25度以上、もしくは19の指定成分のうち1つ以上規定値を満たしているものを「温泉」と呼ぶことになっている。こうした「温泉」がある温泉地は全国に約3,000か所。登録されている源泉数は約2万8,000本もあるという。その特徴を知る指標となるのが「泉質」だ。泉質は大きく分けると9種類。いろいろなミネラルがバランス良く入っている温泉の場合、泉質名が3つ、4つと付くことも珍しくはない。この泉質を知りたければ、旅館や入浴施設の脱衣所にある「温泉分析書」を見るといい。そこには泉質だけでなく成分量やpH(ペーハー)値などの数値が並んでいる。同じ泉質の湯でも成分量が多ければ濃いし、ほどほどならマイルドな湯となる。pH値を見る際は「7」という数字を覚えておくと便利。7は中性。それより数字が小さくなっていくとその温泉は「酸性」、大きくなっていくと「アルカリ性」と理解すればいい。酸性の湯には殺菌と引き締めの作用があり、アルカリ性は石鹸のように汚れを落としてくれる。中性は肌に優しい。数字が極端に小さい、あるいは大きいと、肌への刺激が強くなる。こうした湯に入るときは、「あまりこすらないようにする」、「真水で流す」など、肌への気遣いが必要だ。

泉質で選ぶ「温泉ビューティ」

9つに分類される泉質は、「ビューティの作用で見た場合、4つのグループに分けられます」。キーワードは「落とす」、「めぐる」、「補給する」、「調整する」。1つめの「落とす」作用があるのは「炭酸水素塩泉」や「アルカリ性の温泉」。これらの温泉は肌の汚れや古い角質を落として肌をすべすべにしたり、肌の皮脂と結びついて石鹸のような働きをしてくれる。「単純温泉」でもアルカリ性の湯ならばこうした作用がある。いわゆる「美肌の湯」と呼ばれる温泉は、たいていこの「落とす」グループに属している。2つ目の「めぐる」は「硫黄泉」と「二酸化炭素泉」。どちらも血行を促進して体の中から「きれいに」してくれる温泉だ。この「めぐる」湯はむくみ対策やデトックス、ダイエットをサポートしてくれる。3番目の「補給する」温泉で期待できるのは水分補給や保温、保湿。「美人の湯」と呼ばれる温泉がこのグループだ。ここに入るのが、肌がしっとりと潤い化粧水のような作用がある「硫酸塩泉」と、塩成分が肌に薄いヴェールとなって残り、温泉のしっとり(水分)やほかほか(熱)を逃がさない「塩化物泉」だ。このタイプの湯に入ると、湯上がり後もしっとりやほかほかが長く続く。4番目の「調整する」は、「含鉄泉」と「放射能泉」、それに「酸性泉」。「含鉄泉」、「放射能泉」は体を芯から温めてバランスを整えてくれる。また「酸性泉」には殺菌効果があり、肌を活性化する働きがある。
このようにさまざまな効果がある温泉。どの温泉にも共通して言えるのは「腹八分目程度に入る」ことだ。温泉の湯はたいていの場合は「熱め」だ。こうした湯には一度に長く入るのではなく、何回かに分けて入る。
「宿にいるのなら、到着した時と食事の前、それに寝る前と、3回に分けてみる。合計時間は同じでも長湯して1回だけ入る場合よりも体の芯まで熱が通って温かさが持続します」
「湯」に入るときは五感で楽しむこと。透明の湯でもよく見れば光によって色が変わったり、湯の花が出ていたりする。五感を使っての観察は「脳を活性化してくれる」。そして「宿」という空間を楽しみ、「食」を味わい、「自然」に触れることも大切だ。
「温泉に何かひとつ自分のやりたいことをプラスアルファする。そうやって過ごすことで『温泉ビューティツーリズム』になります」

「年間200日は温泉地巡り」。印象的な宿の数々

後半は「旅のお話」。スライドで紹介されていくのは石井氏がこれまでに巡った印象的な温泉や宿の数々。雑誌の美肌特集で訪ねた有馬温泉。「おひとり様」で楽しめる鳴子温泉での「自分湯治」。ヨーロッパ風のプチホテルでファスティング(断食)が体験できる草津温泉の宿。60種類の野菜が食べられる伊豆湯ヶ島のホテル。多彩な漬物でもてなしてくれる熊本県産山温泉の秘湯の宿。お酒類までがオールインクルードで「何も気にしないこと」に特化した福島県裏磐梯のホテル。山の至るところに源泉が湧く長野県の中房温泉。「年間200日を温泉地で過ごす」という石井氏だけに、紹介してくれる温泉も個性的なものばかりだ。
ラストは質疑応答。「なぜ日本では温泉は25度以上なのか」、「源泉が熱い場合はどうするのか」、「湯上がりのときに肌を真水で流すなと言われるが信憑性は?」といった質問が寄せられた。温泉の温度はその国の平均気温が基準。日本の場合、当時日本領だった台湾の平均気温が25度だったことが基点となっている。熱い湯には加水することもあるが、水道水でなく「地下水や天然水の方がうれしい」。また、加水するのではなく、熱交換システムで工夫して温度を下げているこだわりの温泉もある。最後の質問は今後の夢。
「夢は旅をつづけて日本の温泉の素晴らしさを世界の人に伝えること」と語る石井氏。
「みなさんにももっと温泉旅にでかけて人生を楽しくしていただきたいと願っています」

講師紹介

石井 宏子 (いしい ひろこ)
石井 宏子 (いしい ひろこ)
温泉ビューティ研究家
温泉の美容力を研究する日本でただひとりの温泉ビューティ研究家。旅にでかけ宿に泊まることをライフワークとし、トラベルジャーナリストとして取材・執筆を行い、年200日ほど温泉地へ向かう。テレビ出演、温泉地や旅館の講演やコンサルティング、丸の内朝大学・温泉クラスの企画・講師などでも活躍中。温泉地の自然環境にも着目し、ドイツ・ミュンヘン大学アンゲラ・シュウ気候医学教授に学び「気候療法士」を修了。温泉、水、自然環境、食事、観光地や宿での過ごし方などを通じて、心も体もきれいになる日本の新しい旅“ビューティツーリズム”を提唱する。公式サイト