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イベントレポート

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2014年5月15日(木)19:00~21:00

上田 壮一(うえだ そういち) / 一般社団法人 Think the Earth 理事・プロデューサー

Think the Earth!!

2001年にスタートした"Think the Earth"は、クリエイティブやコミュニケーションを通じて私たちが暮らす地球の大切さを伝え続けてきた。地球がまわる腕時計を皮切りに、写真集、ビジュアルブック、ウェブサイト、携帯アプリケーション、プラネタリウム映像など、多様な表現手法で、それぞれの時代に合わせて作ってきたコンテンツの数々。今回はその中から、映像作品を中心にThink the Earth活動の足跡をたどった。

クリエイティブとコミュニケーションで地球のことを考える

上田壮一氏が理事を務める“Think the Earth”のプロジェクトが始まったのは2001年。名前のとおり、「1日1回は地球のことを考えよう」という主旨でスタートした活動は今年で14年目を迎えた。セミナーでは、これまでの足跡を時系列で辿りながら、プロジェクトの一環として制作してきた映像作品を4本上映。“Think the Earth”の活動をご紹介いただいた。
「“Think the Earth”は、無関心やあきらめの心を最大の問題ととらえ、クリエイティブやコミュニケーションの力で地球のこと、社会のこと、地域のことへの好奇心や関心を高める活動を続けています」
モニターに映ったのは、そのプロジェクトの第1号となった「アースウォッチ=地球時計」。1997年にプロトタイプを開発、その後2001年に商品化された半球型の腕時計には本物同様、24時間で1周(自転)する「地球」が組み込まれている。
「なぜ、こんな時計を思いついたのか。そのきっかけとなったのが世界中でベストセラーになった『地球/母なる星』という写真集でした」
この本に収録されているのは宇宙から青い地球を見た宇宙飛行士たちの言葉。「宇宙から眺めた地球は、たとえようもなく美しかった。国境の傷跡などは、どこにも見えなかった」、「最初の1日か2日は、みんなが自分の国を指さしていた。3日目、4日目は、それぞれが自分の大陸を指さした。5日目には、私たちの念頭にはたったひとつの地球しかなかった」、「なぜ私たちがここにいるのか、今わかった。それは月をくわしく見るためではない。振り返って、私たちの住みかである地球を見るためなのだ」と感想を述べる飛行士たちは、「地球上のすべての生物が薄い薄い大気圏の中で生きている奇跡のような星」と口を揃える。
「実は人類全体が地球を青いと認識したのは、1967年に宇宙からのカラー写真が公開されてからです。ほんの50年前まで、人間は頭の中で地球が青いとイメージすることはできなかったんです」
だが、今はそれが認識できる。写真を見れば、宇宙飛行士たちが言う「たったひとつの地球」も薄い大気の膜もイメージできる。地球時計は「それをいくばくかでも日常の中で感じることができたら、環境や人間以外の他の生きものにも関心が及ぶのでは」と開発されたプロダクトだ。

映像作品で人の心を動かす

このように“Think the Earth”は「言葉によるメッセージを極力排してモノの中から感じてもらう」というコンセプトで活動を開始。自分たちの住む「地球」を意識することで「他人事から自分事にするためのきっかけづくり」をしてきた。
「このプロジェクトがスタートした2001年当時は、企業もメディアも個人も、環境問題に無関心でした」
しかし時代が進むにつれ、地球温暖化や気候変動が注目され始めた。その間、“Think the Earth”は出版活動などを通して人々の「心を動かす」ためのプロジェクト、ソーシャルビジネスを展開。現在はそれと同時に「関心を持ってくれた人たちと一緒に学び、活動する」というステージにまで活動の領域を広げている。
1本目の上映作品はサントリーと共同制作した『うごくえこよみ』。これは絵本『えこよみ』を原作に、二十四節気七十二候をアニメーションで表現した7分間のショートムービー。筆絵アニメで描かれた映像は、季節の移ろいを感じさせる。つづいてはプラネタリウム用の映像作品である『いきものがたり』。生物多様性をテーマにした作品は2010年に名古屋で開催されたCOP10(生物多様性条約第10回締約国会議)に合わせて制作されたもの。冒頭に登場するのは、暗い宇宙空間に浮かぶ青い地球。そこは3,000万種の多様な「いきもの」が暮らす星だ。高度なCGや、高さ80メートルのクレーンを使用した熱帯雨林の実写などを駆使した映像は迫力満点。生物多様性を知ると同時に、人間の活動によって絶滅へと追いやられていく生物についても思いを巡らす内容となっている。

人と地球をつなぐ「アースコミュニケーター」という職業があってもいい

セミナー後半は『いきものがたり』と同じデジタルプラネタリウム映像の『みずものがたり』を上映。こちらは海の誕生や地球の中を循環する「水」を追ったもの。地球上に水は限りなくあるように見えるが、水を星と同じ球体にした場合、その大きさは直径1,400km程度にしかならない。地球の直径1万2,742kmに比べればずいぶんと小さく、しかもそれを構成するのは大半が海水だ。このうち人間が使うことができる河川などの淡水だけを取りだすと、その直径はわずか70kmにすぎない。水はたとえ一滴でも大切。そして人間の体は成人でその6割が水でできている。地球と太陽の距離を考えたとき、「水」が存在すること自体が奇跡のようなもの。仮に、地球が金星軌道にあったら水は蒸発してなくなっていた。火星軌道では寒過ぎて凍っていた。この作品を見れば、水がどんなに貴重で大切なものかをあらためて学ぶことになる。
最後の上映作品は宮城県大崎市を舞台とした『映像詩・蕪栗沼ふゆみずたんぼ』。「ふゆみずたんぼ」とは江戸時代にも行われていた伝統農法。その特徴は、普通の田んぼと違い、「収穫後に再び田に水を張ること」。こうすることで秋から春にかけて、田んぼには微生物が繁殖し、それを食べる昆虫や、またそれを補食する鳥も来て、ひとつの生態系をつくりながら、栄養分豊かな土ができあがる。こうした田んぼで収穫する米はもちろん良質。農薬に弱いササニシキなどの栽培にも適している。上田氏は大崎市と協力し、この江戸時代から変わらない「ふゆみずたんぼ」のムービーを制作。ここでは8本あるムービーのうち「秋冬編」を上映。しっとりとした美しい映像、そして毎年渡って来るという10万羽という真雁の群れが印象的な作品だ。
上映の合間には「AQUA SOCIAL FES!!」、「GREEN POWER プロジェクト」など、“Think the Earth”が携わっている活動も紹介。最後は上田氏の現在の「夢」について。
「夢は、人と地球を結ぶアースコミュニケーターという職業をつくること。都内にそうした人が集う〈場〉としてのアースコミュニケーションセンターをつくりたいですね」
私たちが住む美しい地球。この美しさを保っていくためには環境問題を「他人事」ではなく「自分事」として考えることが、第一歩なのかもしれない。

講師紹介

上田 壮一(うえだ そういち)
上田 壮一(うえだ そういち)
一般社団法人 Think the Earth 理事・プロデューサー
2000年にソーシャル・クリエイティブの拠点として株式会社スペースポートを設立。 2001年に一般社団法人Think the Earthを設立し、 コミュニケーションを通じて環境や社会について考え、行動する「仕掛け」づくりを続けている。 主な仕事に「地球時計wn-2」や、書籍 『1秒の世界』、『グリーンパワーブック〜再生可能エネルギー入門』、プラネタリウム映像「いきものがたり」などがある。