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イベントレポート

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2014年9月2日(火)19:00~21:00

近藤 隆二郎(こんどう りゅうじろう) / 滋賀県立大学環境科学部環境政策・計画学科 教授
輪の国びわ湖推進協議会 会長

びわ湖一周サイクリング"ビワイチ"の魅力
-Mother Lakeを巡る湖国の旅-

自転車に乗る人なら一度は行ってみたい日本最大の湖「びわ湖」を自転車でめぐる旅。旅をする人からはいつしか「ビワイチ」と呼ばれるようになった。「びわ湖」を一周すると約200km。そのルートには近畿の水瓶である「びわ湖」を中心に毛細血管のように張り巡らされた大小あわせて約460本もの河川がある。「山と野と水に抱かれた豊かな湖国の暮らしを巡る旅は、"本当の豊かさとは何か"をカラダから実感する時間を与えてくれる」と近藤氏は語る。今回のセミナーではビワイチサイクリングの魅力や、知る人ぞ知るびわ湖の絶景スポットなど、自然と触れ合いながら楽しむ自転車の旅についてお話しいただいた。

「ビワイチ」でびわ湖の魅力と「自転車の力」を感じてもらいたい

『輪の国びわ湖推進協議会』やNPO法人『五環生活』の活動を通じて「びわ湖一周サイクリング『ビワイチ』」の普及に務めている近藤隆二郎氏。自転車の専門家ではない大学教授がなぜ『ビワイチ』なのか。その答えは自身が専門とする「環境」の中にある。
「僕の専門は環境社会計画。まちづくりなどを考えると、自転車に乗った方が環境にいいのは当たり前。そういうわけで、もともと自転車の利用促進を進めていたんです」
確かに自転車は環境にも健康にもいい。しかし、普段からマイカーを利用している人たちに自転車の利用をすすめてもなかなか切り替えてはもらえない。そんな経験から目を付けたのが「ビワイチ」だった。「ビワイチ」とはびわ湖を自転車で一周すること。いつ誰が言い始めたかはわからないが、近藤氏が目を付けたときには自転車乗りの間ではすでに浸透している言葉だったという。
ただし、これまでの「ビワイチ」は、「1日でびわ湖を1周する」といったチャレンジ的なものだった。びわ湖は1周すると約200キロメートル。ロングライドのトレーニングにはもってこいかもしれないが、それは上級者に限ってのこと。近藤氏が目的とするのは見どころの多いびわ湖を自転車で1周することで、びわ湖の魅力を知ると同時に「自転車の力」を感じてもらうことだ。
「だから、1日で1周ではなく、もう少しゆっくり。できれば1泊2日か2泊3日で、『ビワイチ』をゆっくりと楽しんでもらいたいんです」
今回のセミナーでは、その「ビワイチ」の魅力を紹介。集まった参加者は全員が「ビワイチ」未経験者ということもあり、舞台となるびわ湖そのものや自転車、服装、ルートなど基礎的なことから解説していただいた。

サイクリングにぴったりのびわ湖

びわ湖というと日本最大の湖にして近畿の水瓶。その巨大な湖から流れ出ている河川は淀川一本なのに対し、逆に注ぎ込む河川は大小合わせて460本もある。びわ湖を一周するということは、すなわち「460回河川を越える」ということ。また、日本最大の湖だけに琵琶湖大橋から北の「北湖」と、南の「南湖」では景色も雰囲気も違ってくる。自然に恵まれているのはもちろん、湖岸には数多くの史跡名所、旧街道の古い街並などがある。サイクリング中は国宝の彦根城に寄ってもいいし、国内の淡水湖では唯一人が住む沖島を訪れてもいい。パワースポットとして人気の高い竹生島(ちくぶじま)も見逃せない。山裾を通る箇所には坂があるが、その他は比較的平坦で初心者や子どもでも自転車を漕ぎやすい。宿泊施設や飲食店なども多く、サイクリングを楽しむにはもってこいの場所だ。
「ビワイチ」をチャレンジするのにおすすめの季節は春と秋。湖岸の景色を楽しみながら走るには「反時計回り=左回り」がいいという。自転車はクロスバイクかロードバイクがおすすめ。素人には乗った時の姿勢が楽なクロスバイクが適している。逆に向いていないのは「ママチャリ」。「ママチャリだとお尻は痛くなるし遅いしで、二度と自転車に乗りたくなくなってしまいます」と近藤氏。使う自転車は、自分の物があればそれでいいが、ない人にはレンタサイクルが用意されている。彦根にある近藤氏が立ち上げた『五環生活』では、クロスバイクを1日2,000円程度から貸し出している。服装は運動に適した服装ならサイクリングウェアでなくてもOK。長距離を走るのでグローブも欲しいところだ。
よくある質問のひとつは出発地。湖岸には大津や草津、近江八幡、彦根、長浜などの街がある。例えば彦根から出発する場合なら、1日目で山道の賤ヶ岳隧道を抜けて西岸の高島辺りで1泊ということもできる。もっと南の草津付近から出発し、山越えは翌日にまわして手前の木之本付近で1泊するという方法もある。一般的には「1日目は疲れて、2日目は慣れて楽になる」。自転車に慣れていない人は、1日目にはあまり無理をしない方がいいだろう。

テーマをくっつければもっと「ビワイチ」が楽しくなる

「ビワイチ」の特徴はリピーターが多い点。一度で終わらず、何度も来る人が多いことがデータからもわかっている。「輪の国びわ湖推進協議会」ではこの「ビワイチ」を愛好する人たちに向けてスマートフォンなどから申し込める「びわこ一周認定証」や回数に応じて色が変わる「びわ湖一周認定ステッカー」を発行している。申請をした人のなかにはもうすぐ100回という人もいるというから驚きだ。
ここで地図と写真を観ながら近藤氏たちが試走した「ビワイチ」の模様を紹介。1周200kmのコースは変化に富んでいて、それだけを見ても楽しい。自転車を漕いでいる本人はさぞかし気持ちがいいに違いない。パンク時などのサポート体制や駐輪場の確保など解決しきれていない課題も多いが、行政や民間が手を取り合って推進している事業だけに今後さらに整備が進むことが期待できる。
セミナー後半は「とっておきの楽しみ方」。ただ走るだけでも楽しい「ビワイチ」だが、そこに別の目的を加えるとさらに楽しくなる。近藤氏がここで紹介してくれたのは以下の10のテーマ。
・大絶景=自然豊かな北部の景色
・建築物=沿道にある巨大建築物
・歴史=寺社、城郭、戦跡、街道
・一周=元の場所へと帰って来る、円環を閉じる体験
・看板=滋賀県名物『飛び出し注意看板』と『顔出し看板』との出会い
・船旅=琵琶湖汽船を利用しての『サイクルージング』
・食堂=湖岸にはネットの検索では引っかからない名店がある
・風呂=太閤温泉や須賀谷温泉、銭湯など
・河川=460本の河川が注ぐ“Mother Lake”を感じる旅&江戸時代に造られた西野水道を探訪
・交通=自転車をそのまま載せられる近江鉄道のサイクルトレイン
こうしたテーマを持つ「ビワイチ」の他にも、最近では湖岸のそれぞれの地域で「夕日を眺めに行くツアー」や「カフェにした軽トラを伴走させるツアー」、「山本山攻略ツアー」など、おもしろい自転車ツアーが頻繁に行なわれているという。
近藤氏が最後に触れたのは自転車先進国デンマークのクリスチャニア自治区。自動車の乗り入れが禁止されているこのコミューンには大きな荷台を前に持つ「働く自転車」が開発されて走っている。
「僕の夢は自転車からまちづくりを考えていくこと。車を全否定はしませんが、クリスチャニアにあるような働く自転車が日本のまちにもあってもいいなと思います。自転車と行政はつながると思うのです」 

講師紹介

近藤 隆二郎(こんどう りゅうじろう)
近藤 隆二郎(こんどう りゅうじろう)
滋賀県立大学環境科学部環境政策・計画学科 教授
輪の国びわ湖推進協議会 会長
1994年大阪大学大学院工学研究科(環境工学専攻)単位取得課程退学後、和歌山大学システム工学部准教授を経て現職。工学博士。専門は環境社会計画。写し巡礼や古代遺跡、インド沐浴文化やエコビレッジの調査研究を進めた上で、五感や自転車、衣、食からライフスタイルを変革する身体計画論を模索中。NPO五環生活を立ち上げ、輪の国びわ湖推進協議会会長に就任。主な著書に「自転車コミュニティビジネス-エコに楽しく地域を変える-」(学芸出版社/編著)、「ぐるっとびわ湖自転車の旅」(京都新聞出版センター/共著)、「顔出し看板大全カオダス」(サンライズ出版/共著)、「コモンズをささえるしくみ」(新曜社/共著)などがある。