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イベントレポート

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2014年10月4日(土)13:00~15:00

櫛浜 健治 (くしはま けんじ) / 丸山珈琲 東京セミナールームマネジャー

d-labo教室 わかりやすいスペシャルティコーヒー

1960年ごろのアメリカンコーヒーに代表される大量生産、大量消費のファーストウェーブ。1970年代のシアトル系コーヒーショップの登場によって良質なコーヒーが楽しめるようになったセカンドウェーブ。そして2000年以降の新たなコーヒーのムーブメント、サードウェーブが広がっています。豆の個性を重視するこの動きとともに広がったのが「スペシャルティコーヒー」。現在、確たる定義はありませんが素晴らしい風味特性を持ち、品質の高いコーヒーのこと。しかし、味や香りだけでなく、コーヒー豆を取り巻く環境、生産の段階からコーヒーを味わうまで、すべての段階にこだわり、管理徹底したものこそ"スペシャルティコーヒー"と言えます。今回のセミナーでは日本を代表するバリスタの一人である櫛浜健治氏をお招きし、コーヒーの飲み比べ、ならびに、簡単で美味しいコーヒーの淹れ方をレクチャーいただいた。

「おいしいコーヒー」=「スペシャルティコーヒー」

最近は雑誌などでもよく特集されるコーヒー。そのなかでよく目にするのが「スペシャルティコーヒー」という言葉だ。

では、「スペシャルティコーヒー」とは何か。「これを真面目に語り出すと難しい話になってしまいます」と講師の櫛浜健治氏。

「簡単に説明すると、飲んでおいしいコーヒーのことです」

まだ世界的に統一された基準は確立されていないが、一般的には8項目からなる味覚の審査を経て、合計平均が80点以上に達したコーヒーが「スペシャルティコーヒー」とされている。以前、日本では生豆の品質よりもおいしいコーヒーになるかどうかはロースター=焙煎師次第と考えられていた。櫛浜氏が勤める丸山珈琲も、創業以来、焙煎に力を入れて顧客に「おいしいコーヒー」を提供してきた。それを生豆の品質で評価しようというのが「スペシャルティコーヒー」。言葉自体が生まれたのは1978年で国際会議において提言された。背景にあるのは生産者の現状。コーヒー豆の生産地といえばほとんどは途上国。それまで農家の人たちは適正価格がわからないまま先進国から来たバイヤーによって自分たちのつくったコーヒーを安値で大量に買い付けられていた。このため経営難で農園を手放す人も多く、コーヒー業界のなかからも「このままではいけない」という声があがっていた。そのなかから出てきたのが「スペシャルティコーヒー」の概念。品質の良いコーヒーを適正価格で買い取り、生産者が事業を継続できるようにしていく。こうしたサステナビリティ(持続可能)な考え方でつくられた良質なコーヒーが「スペシャルティコーヒー」となる。また「カップ・オブ・エクセレンス(COE)」という品評会では、価格は国際オークションで決定。入札制のため生産者が潤う仕組になっていて、いまではコーヒー大国であるブラジルを始め、コロンビアやコスタリカなど生産国の多くで同じような品評会が開かれているという。また、こうしたシステムを取り入れているため、消費者も自分の飲んでいるコーヒーがどこの国のどの農園でつくられているかが追跡できる。こんなふうにトレーサビリティ(追跡可能性)とサステナビリティ(継続性)の2つを持つ点が「スペシャルティコーヒー」の特徴だ。

全員でコーヒーを飲み比べ。「どっちがスペシャルティコーヒー?」 

ここでさっそくコーヒーの飲み比べを実施。参加者に配られたのはAとB、2種類のコーヒー。ひとつは今年開かれたブラジルの品評会「カップ・オブ・エクセレンス」で1位を獲得した「スペシャルティコーヒー」で、もうひとつは同じブラジル産だが、どこででも売っている「コマーシャルコーヒー」。これを全員に飲んでもらった。

ちなみにコーヒーの味は冷めてからの方がわかりやすい。ホットの場合、熱い方がおいしい気もするが、本当のところ「熱いうちは味がわかりにくい」という。

「冷めてもおいしいコーヒーはいいコーヒーだということですね。もし、一口つけて、これはおいしいと感じたら時間をかけてゆっくり飲む。逆に、あれ? と感じたら熱いうちに飲んでしまうといいでしょう」

どちらのコーヒーがおいしかったか。Aに手を挙げた人は3人。Bは8人。Aに対する感想は「酸っぱい」、「口の中でフワ~とする」、「まろやか」で、Bは「苦味がある」、「よくあるタイプの味」。人は慣れているものをおいしいと感じるのか、挙手が多かったのはBだが、実は1位になった「スペシャルティコーヒー」はAの方。評価が低かった理由のひとつは「酸味が苦手」という日本人独特の味覚も影響している。ただし、これがそうだと言われると不思議とおいしく感じ始めてしまうもの。確かに、最後まで飲んでいくとAのコーヒーは香りや余韻が残るが、Bは後味にひっかかりを感じるし、どことなく薬品っぽい臭いがする。もしおいしいコーヒーを探したいと思ったら、「味をみることができる人と一緒に飲んで勉強をする」のがいちばんの早道だ。

今回のAのコーヒーは「ノッサ・セニョーラ・アパレシーダ」農園の豆。落札したのは丸山珈琲。他社との共同落札という形で仕入れた豆は1ポンド(453グラム)で15.6ドル。審査員がつけたのは92.22点という過去最高の平均点。こんなコーヒーを飲めるのだから、日本の消費者は幸せだといえる。

豆本来の味や香りが楽しめる「フレンチプレス」

教室では他にもう2種類、CとDの「スペシャルティコーヒー」も飲み比べ。こちらの挙手はほぼ半々。Cはボリビアの「アグロ・タケシ・ティピカ」、Dはパナマの「リチェロ・ゲイシャ・エステート36」。前者は標高1,700~2,600メートルというコーヒー栽培の常識を超えた場所で生産されているコーヒー。後者はゲイシャ種というフローラルな香りのする品種で世界中で大人気のコーヒーだ。

丸山珈琲ではコーヒーは主にフレンチプレスという器具で提供している。これに挽いた豆(今回は1リッターの容器で46グラム)を入れ、熱湯を半分まで注ぐ。このときのポイントは「勢いよく注ぐこと」。そうすることで粉とお湯がしっかりふれあう。容器を見て、液体と粉と泡の3層がきれいにできれば成功。30秒待って、さらに残りを注ぎ、注ぎ始めから4分。最後は容器の上についた棒を押してフィルターを下げる。フィルターが容器内の粉を底部に押し下げたところで完成だ。紙のドリップ式と違い、プレス式のコーヒーは見た目が濁った感じ。これは微粉が混ざっているから。その分コーヒーの油分まで余すことなく抽出できる。慣れないうちは「粉っぽさ」を感じるかもしれない。しかし、コーヒー素材本来のおいしさを手軽に楽しみたいときはオススメ。ペーパーフィルターのドリップ式は見た目はクリアできれいだが、酸味を強く感じてしまうこともある。まずはプレス式で淹れてみるといいだろう。

d-laboにコーヒーの香りが漂った2時間。教室は質疑応答の時間を経て終了した。

講師紹介

櫛浜 健治 (くしはま けんじ)
櫛浜 健治 (くしはま けんじ)
丸山珈琲 東京セミナールームマネジャー
2005年よりシアトル系カフェにてバリスタとして働き始め翌年からバリスタの大会に参加。
2009年には第1回ジャパンラテアートチャンピオンシップにて優勝し、日本代表としてワールドラテアートチャンピオンシップに出場(世界第4位入賞)。
2010年からは軽井沢創業の丸山珈琲に勤務。小諸店店長、製造勤務を経て、現在東京セミナールームにてセミナーの管理、社内・社外でのセミナー講師を務める