スルガ銀行 Dバンク支店

SURUGA d-labo. Bring your dream to reality. Draw my dream.

イベントレポート

イベントレポートTOP

2014年10月25日(土) 15:00~17:00

新田 正明,大木 貴之 /

d-labo教室 山梨ワインと産地への誘い
~昨今世界で注目されている甲州ワインや産地を一緒に感じてみませんか?~

8~9月にかけて収穫した葡萄を醸造し、ワインを出荷する10月。この月は山梨のワイナリーが最も活気づく、1年に1度のワインが出来上がる月である。今回は、11月3日の山梨新酒解禁日を前に産地である山梨から、ワイナリーの信頼が厚い老舗酒屋三代目である新田正明氏と「ワインツーリズムやまなし」プロデューサーである大木貴之氏をお招きし、「d-labo教室 山梨のワインや産地への誘い」を開催した。昨今世界で注目されている甲州ワインをこよなく愛する2人と一緒に、その裏にあるストーリーやこれからについて語っていただきながら、参加者みんなで一緒に山梨というワイン産地を丸ごと味わう機会となった。

本当に「食中酒」と呼べるのはワインだけ

この日のd-labo教室は、近年海外でも注目されつつある山梨のワインが主役。セミナーの前半では講師の新田正明氏にワイン産地としての山梨の現状やその特徴についてレクチャーしていただいた。
「まずワインってどんな飲み物? というところからお話しましょう」
世界中にはさまざまなアルコール飲料がある。身近なところでいえば、ビールに日本酒、焼酎、ウイスキー……。その中で唯一、「水で薄めていない飲み物」がワインなのだという。
「一滴一滴にその土地の持つものが凝縮されている。それがワインという飲み物です」
だから、その土地で採れた食材と相性がいい。フランスのブルゴーニュ産ワインなら、ブルゴーニュ地方の郷土料理と合う。これが、ワイン=「食中酒」と呼ばれる由縁だ。日本酒や焼酎も食中酒と言われるが、本当の意味でそう見なしてよいのはワインだけ。
「日本酒だと食事の前後にお酒だけをくいと飲み込みます。ワインの場合は咀嚼してペースト状にした食べ物をワインで喉に流し込む。そのときに食べ物の旨味とワインが持っているアミノ酸やリンゴ酸などが絡みあうことで生まれる戻り香で、マリアージュ(食べ合わせ)を楽しむ。アルコール度数も低めなので舌にからませても痺れることがない。こんなふうに食事と一緒に楽しめるのがワインなんです」
ワインを語るなら覚えておきたいのが原料であるブドウの品種だ。赤ワインならカベルネ・ソーヴィニヨン、メルロー、ピノ・ノワール、白ならシャルドネ、リースリング、ソーヴェニヨン・ブラン。まずはこの6品種を覚えておけば十分だという。もちろん、日本国内でもこの6品種は栽培されている。なかでも温暖な日本の気候に向いているのはメルローやカベルネ・ソーヴィニヨンだという。
「ワインの歴史は淘汰の歴史。いろいろなブドウを植えてみた末、ブルゴーニュではピノ・ノワールだけが生き残った。ボルドーならカベルネ・ソーヴィニヨンですね。いわゆる名醸地というものは、その土地に合ったブドウが生み出してきたわけです」

世界に向けて「山梨のワイン」を発信

名醸地の条件は「大きな川と侵食された山」があること。加えて言うと「日照時間が長く、夜温(やおん)が下がること」が望ましい。日本でいえば山梨はまさにうってつけ。その山梨でワイン生産が始まったのは明治時代。国内には他にもワイナリーがあったが、国産のブドウを使用したのは山梨だけだった。新田氏が店舗を構える勝沼はその発祥地。それが現在では県内の各所でブドウが栽培され、約80のワイナリーがワインを生産するまでに至った。ことにここ10数年は、海外でワイン造りを学んだ若手の醸造家たちが新しいワインを次々に生産。栽培農家も増え、その畑ごとに特徴的なブドウが採れるようになった。国産ワインというとどうしても海外のものに比べて見劣りがするイメージだったが、それはもはや過去の話。現在では代表的品種の甲州種やマスカット・ベーリーAが国際的審査機関であるOIV(国際ブドウ・ワイン機構)に登録され、「これは極東アジアの山梨で栽培された品種を使ったワインです、と大手を振って世界の方々に紹介できるようになりました」。
そうした動きのなかで、最近目立つようになってきたのが「自分の料理と国産ワインを合わせてみたい」といったレストランオーナーたち。日本の食材や料理には国産ワインが合う、ということに気が付いたシェフたちが山梨をこぞって訪れるようになったという。同時に一般のワイン愛好家の間でも注目度が上昇。もう1人の講師である大木貴之氏がプロデュースしている『ワインツーリズムやまなし』は、県内の産地を巡って山梨のワインを味わおうというイベント。年2回のイベントは、毎回大勢の参加者で賑わっている。消費者と直接触れ合えるこうしたイベントは栽培農家や醸造家にとっては「ハレ」の日。自分たちが素晴らしいものをつくっていると自覚できるいい機会となっている。
「全国の人に認められることで、産地もだんだんよくなっていく。みんなで産地をつくっていこうというのがワインツーリズムの大きな目的です」(大木氏)

スパークリングからフルボディまで、多彩な甲州ワインを堪能

後半は参加者全員による試飲会。新田氏いわく「採算度外視」で持参していただいたワインは、白がスパークリングを含む6種、赤もスパークリングやロゼなどを加えた6種の計12本。これを白、赤の順で試してみた。
トップバッターはスパークリングワイン2種。機山洋酒工業の『キザンスパークリング トラデショナルブリュッド 2013』は日本で初めての土着品種による本格的スパークリングワイン。シャトールミエールの『ルミエール ペティアン デラウェア 2012』は食用でも人気のデラウェアを使った優しい泡立ちが特徴。他にも甲州種ワインの人気ナンバーワン商品である勝沼醸造の『アルブランカ イセハラ 2013』や旭洋酒の『天屋原甲州 樽発酵 2013』などを次々に口に含む。代表的な甲州種でも、地区や畑によって、またワイナリーによって味が大きく異なる。その違いがわかるのが試飲会の楽しいところだ。
赤ワインも多彩。キスヴィンワイナリーの『キスヴィン ホワイトジンファンデル 2013』は、日本では大変稀少なジンファンデル100パーセントのワイン。四恩醸造の『四恩窓辺 淡紫 2013』は有機栽培のマスカット・ベーリーA種を使用。普通、試飲会では出されたワインをすべて飲み干すことはないが、「これだけは全部飲んでください」とすすめたのが、カベルネ・ソーヴィニヨンとメルローを使用したフジッコワイナリーの『NOANOA』と、勝沼産のメルローを用いたシャトージュンの『メルロー2012』だ。
他にも白はシャルドネ、赤はアジロンダックのスパークリングワインなどをテイスティング。「ワインはまず酸を味わう」、「香り構成表であるアロマホイールを使って、匂いや香りを表現する」といったアドバイスを聞きながら、12種のワインを味わってみた。
最後は新田氏の著書である『本当に美味い甲州ワイン100』を紹介。山梨のワインをセレクトした同書には、この地でワイン造りに尽力してきた人々の歴史も綴られている。
「甲州のベスト100選が書ける時代が来たかと思うと感慨深いですね」と新田氏。毎年11月には新酒が解禁される。「まずは山梨へ」を合い言葉にd-labo教室は幕を閉じた。

講師紹介

新田 正明,大木 貴之

新田 正明 (にった まさあき)
勝沼ワイナリーマーケット新田商店

1964年 山梨県生まれ。勝沼ワイナリーマーケット新田商店オーナー。大学卒業後、テレビ制作会社にて番組ディレクターを歴任。平成6年に地元・山梨で家業を継いでからは、日本ソムリエ協会認定のワインアドバイザーや、甲州ワイン品質審査委員、甲州市ワイン教養講座講師などを務め、ワインのスペシャリストとして活躍している。ワインに対する誠実さと経験豊富な知識で地元のワイナリーからの信頼が厚く、新田商店でしか取扱いのない希少なワインも多数取り揃えている。


大木 貴之 (おおき たかゆき)
ワインツーリズムやまなし プロデューサー

1971年 山梨県生まれ。LOCAL STANDARD株式会社 代表。都内某企業にてPR・広告・編集・店舗開発などを経験の後、地元山梨へ。「地方こそ人材が必要。まずは人の集まる場をつくろう」と、2000年に「Four Hearts Cafe]をオープン。 また、2008年に始まった地場産業であるワインを使って地域を元気にしていこうというイベント「ワインツーリズムやまなし」では、プロデューサーとして「地方からの発信」をテーマに積極的な活動を行なっている。