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イベントレポート

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2015年1月24日(土)14:00~17:00

辻 秀一(つじ しゅういち) / スポーツドクター

ご機嫌な自分と家族と組織をつくる
~心の整え方を学ぶ~

「一生懸命やっているのに、なかなか結果が出せない」「本番に実力が発揮できない」「どうすれば最高のパフォーマンスが発揮できるのか」。このような悩みを抱えている方は、多いのではないか? 現代社会では、このような悩みをポジティブに考えることで、心の状態をいい方向に持っていこうとする風潮が蔓延しているように思える。しかし、実際にはポジティブ思考でも、あまり効果が実感できないことを、みなさんも経験的に感じているのではないか? 今回、d-labo二子玉川では、フロー(=ごきげん)理論を基に独自のメンタルトレーニングによるパフォーマンス向上を専門にする、スポーツドクター辻秀一氏をお招きし、「心の整え方の思考法を学ぶ」ワークショップを開催した。

目には見えない心の質を高める

スポーツドクターとして多くのアスリートのメンタルトレーニングを行なう傍ら、年間200回以上のセミナーや講演を通じて、パフォーマンスアップを導く「心のための脳トレーニング」を提唱・実践している辻秀一氏。幅広い層から支持される「辻メソッド」が生まれるきっかけとなったのは、31歳で出会った映画『パッチ・アダムス』。実在の医師をモデルに、Quality of Life(人生の質)について描いたこの作品によって、「目には見えない“心の状態”に向き合っていこう」と決意したという。
「日本には病んだ心の専門家はいるけれど、心の質を高める専門家はいない。自分は人がよりよい状態になるための心の専門家になろうと思ったんです」
そこで選んだのがスポーツ心理学。スポーツは「心とパフォーマンスと結果の関係性が最も見えやすい」分野だからだ。しかし、日本のスポーツ心理学界は学問依存型。「大学にスポーツ心理学の専攻があっても、研究者が大学の体育会のトレーニングを行なっていない」という状況。より実践的な場を求めた辻氏はアメリカに渡り、応用スポーツ心理学の世界へ。そこで目にしたのは、「スポーツだけでなく音楽やビジネスの分野でも独自の方法論を活かしている」医師たちの姿。それが自らのライフワークとの出会いとなった。

不機嫌の正体を解き明かす

「辻メソッド」の柱となるのは、「心の状態がフロー(FLOW)、すなわち揺らがずとらわれず“ご機嫌”であれば、人間の機能は上がる」という法則。これは多くの人が体感として理解しているもので、フローの究極の状態が、いわゆる「ゾーンと呼ばれる領域」だ。
「私は機嫌が悪い方が良い仕事ができる、なんて人はいません。例外はないんです。機嫌が悪ければ機能は下がり、機能が下がれば当然パフォーマンスは落ちる。すると人は、自分の機嫌が悪いのは誰のせいなんだと考える。でも、いくらそんなことを考えても、自分の機能に責任を持つのは自分自身。結局、自分の機嫌は自分で取るしかないんです」
それにはまず「『機嫌が良い』ということに価値を認めることが重要」と語る辻氏。ここで参加者は4人ずつのグループに分かれ、「『機嫌が良い』とどのようになるのか」を話し合うことに。「『機嫌が良い』と食事が美味しい」「『機嫌が良い』と会話が弾む」等々。各グループで意見を出し合い、気づけば「『機嫌が良いこと』について考えるだけで機嫌が良くなる=心がフロー化する」ことを実感。座学とは違うワークショップならではのライブ感に、参加者の「心のフロー化」も加速していく。
“ご機嫌”の価値が体感できたら、次のトピックは「なぜ人間は不機嫌になってしまうのか」。それは全部「認知脳のせい」と辻氏。
「パフォーマンスを成り立たせている要素は2つ。『何をするか』と、『どうやって(どういう心の状態で)するか』。この、『何をするか』を決めているのが認知脳。」
認知脳は「環境、出来事、他人という外界と常に接着」し行動の内容を決定する、いわば第一の脳だ。ところが「認知脳は外界の事象について『意味づけ』をしてしまう」。しかも往々にして「ネガティブな意味づけ」を。例えば、雨だと気分が憂鬱になるのは「過去の経験から雨だと憂鬱になると思い込んでいるだけで、憂鬱になる雨は降っていない。人間は生まれた日に雨だからといって憂鬱になったりはしないですよね?」
ただ「水が降っているだけの現象』に「憂鬱」という意味をつける。「そういう仕組みが人間には搭載されている」ことが不機嫌の原因なのだ。

心をマネジメントする第二の脳

「意味づけ」に汲々としパフォーマンスが上がらない状態は「自分の行動の質を外界に依存している」ことにほかならず「とてもリスキー」だと指摘する辻氏。では、そのリスクを軽減し心を整えるにはどうすればよいのか。その答えが「ライフスキル脳を育む」ことだ。
「認知脳だけですべてをやりくりしようとせずに、心をマネジメントする別の脳を使う。それが『ライフスキル脳』、つまり、パフォーマンスの質を決める2つめの要素である“どうやって(どういう心の状態で)するか”に関わる第二の脳です」
ライフスキルは「自分で自分の心をフローにする力」のことで、それを磨くことによって「いつでも“ご機嫌”を作り出すことができる」。通常、辻氏が行なうワークショップでは40ほどの思考をライフスキルとして学ぶが、今回は基本的な5つを紹介。まずは「①意味づけた自分に気づく」ことから。「心がノンフローに傾くのは、前述のとおり『意味づけ』の仕業。その意味という鎖を切るのが肝心で、それには何より『意味づけ』をした自分に気づくことが大切」。「シンプルで地味で、しかし画期的な方法」だ。次いで「②フローの価値を考える」こと。先程実践したように「『機嫌が良い』と○○だ」と考えるだけで心はフローに傾く。
「思考はエネルギーだから、フローの価値を考えるだけで脳の中にα波が出るんです」
さらに「③好きなことを考える」は、「多くのプロスポーツ選手が習慣にしている」有効な方法だ。参加者も「好きな食べ物」について語り合う過程を通して、その劇的ともいえる効果に納得。その後も「④『一生懸命を楽しむ』と考える」では「結果とは関係無く『一生懸命』が楽しかった事例」を思い出したり、「⑤感謝」では「ただ理由もなく相手に“ありがとう”と言ってみる」などの実践を通してライフスキルのレクチャーは続いた。
そして最後は「いかにしてライフスキルを身につけるか」について。
「ライフスキルを知ったからといって心がフローになるわけじゃない。それはドリブルを知ったからといってドリブルができるわけじゃないのと同じ。練習が必要です」
その際にポイントとなるのが「脳の中に体積を作る」感じ。「X(知識)、XY(意識)、XZ(シェア)」だ。まず、「心のための脳の使い方を知って、それを実際にやってみる」。
「意味づけ」に気づく、「一生懸命を楽しむ」と考える。すると、そこに「前よりプチ楽しいが増えたなぁ」などの「体感という面積が生まれる」。それを「他人と分かち合う=話す」ことで強化し、ライフスキルを「自動的に再現できる」ようになるのだ。
「ですから今日ここで聞いた話を周囲の誰かに喋ってみてください。そして、あなたが“ご機嫌”になることで、ぜひ家族や会社の皆も“ご機嫌”にしてあげてくださいね」

講師紹介

辻 秀一(つじ しゅういち)
辻 秀一(つじ しゅういち)
スポーツドクター
1961年東京都生まれ。北海道大学医学部卒業後、慶應義塾大学医学部で内科研修を積む。同大学スポーツ医学研究センターでスポーツ医学を学び、1999年に株式会社エミネクロスを設立。現在、「人間力ワークショップ」を年に3回開催するとともに、企業にも継続的なメンタルトレーニングを実施。セミナーや講演回数は年200回以上に及ぶ。一流スポーツ選手、経営者、ビジネスマン、主婦、学生音楽家など幅広い層から熱い支持を受けている。著書は、35万部を突破の『スラムダンク勝利学』『禅脳思考』他、約40冊。