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イベントレポート

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2015年2月14日(土) 14:00~15:30

真藤 舞衣子,五味 仁,五味 洋子 /

手前みそづくり~日本の発酵文化を学ぶ~

春夏秋冬がはっきりしている日本の風土は、カビの一種である麹菌の繁殖に最適な環境です。そのため、日本各地ではその地域ごとに収穫された農作物によって、材料や仕込み方が違う自家製「手前みそ」がつくられ、その出来栄えを自慢しあってきました。「手前みそづくり」を通して、「家庭のあじ」をもっと大切に感じていただき、さまざまな土地の風土や歴史を学ぶキッカケとなりました。

みその材料と種類をひもとく

今回のd-labo二子玉川セミナーでは手前みそづくりの体験を通じて日本の発酵文化を学んでいきます。前半は山梨県甲府市で明治元年から醸造業を営む五味醤油の六代目・五味仁氏と妹の洋子氏による、『みそ』に関するレクチャーから。現在、みそと麹の製造・販売を行なうかたわら、醸造文化の素晴らしさを広めるべく「発酵兄妹」というユニットとしても活躍中の2人。兄妹ならではの息の合った掛け合いで、わかりやすく解説いただいた。
「まずは、みその材料と種類についてお話ししますが、皆さん、みその分類の仕方っておわかりになりますか?」
色、米や麦、地名など、“○○みそ”の○○に入る言葉は思いつくものの、実際のところ、それらの分類が何を基になされたものかについては「曖昧な人が多い」。
「基本的に、みそには<麹の種類による分類>と<色による分類>があって、大きく分けると7種類のみそがあります」
みその材料はいたってシンプル。『大豆』、『麹』、『塩』の3つ。この組み合わせによって分類が決まる。まず、麹の種類による分類は、この4種類。
①米みそ:大豆+米麹+塩。全国的に最も広く作られていて、代表的なものは長野の「信州みそ」や、京都の「西京みそ」など
②麦みそ:大豆+麦麹+塩。九州や四国の一部などで作られていて、九州の「冷や汁」をイメージするとわかりやすい
③豆みそ:大豆自体を麹にしたもの+塩。主に東海地方で作られていて、基本的に2年以上醸造させるので色が濃い。みそ煮込みうどんなどに使われる「八丁みそ」が有名
④調合みそ:大豆+米麹と麦麹をミックスしたもの+塩。五味醤油が作る「甲州みそ」はこのカテゴリー。「ほうとう」が甲州みその代表的な料理
そして色による分類は「白赤の違いは熟成期間の違い。仕込み立てはすべて白。それをだいたい半年~1年寝かせたものが白みそで、1年以上寝かせたものが赤みそ」だ。
「豆みそは赤だけですが、①米、②麦、④調合にはそれぞれ白赤があるので大きく7種類。ちなみに今日仕込むのは米みそです」

手前みそづくりにチャレンジ

レクチャー後半は「そもそも『麹』とはなんぞや?」について。「麹=食べられるカビ」が酵素によって米や麦の主成分であるデンプンやタンパク質を分解し、糖へと変える働きを解説。大きな塊の分子をジックリジックリ小さくしていくことで、みその旨味・甘味が出てくる仕組みについてお話しいただいた。
そして、実際にみそづくり体験を行なう前に、食の楽しさを伝える取り組みとして2014年グッドデザイン賞にも輝いた「てまえみそのうた」を参加者全員で鑑賞。「みそ♪ みそ♪ みそ♪ 手前みそ♪」という一度聞いたら耳から離れないメロディと歌詞に、かわいらしい振付とアニメがプラスされた「3分でみそづくりがわかる」曲で予習は完璧。本日もう1人の講師である料理研究家・真藤舞衣子氏のレシピによる手前みそづくりがスタートした。
「今日作るのは大豆1:麹2の贅沢な米みそ。白赤どちらもおいしく、色が濃いのに甘いというおもしろいみそです」
準備されたのは山梨県北杜市の「無農薬大豆ナカセンナリ」、北杜市の米を使った「米麹」、イタリアの「天日塩」。それに、大きめのボウルとジップ付きポリ袋。
家庭でみそを作る場合は、前日に大豆を水に浸すところから始めるが、今回はあらかじめ煮た大豆を使用。参加者は1~2粒口にして、味を感じてからみそづくりに取りかかる。
まずは、ジップ付きポリ袋で「①塩と麹を混ぜる」。これは「塩の殺菌作用で麹以外の余計な菌を抑えるための土俵作り」のようなもの。次に「②大豆をつぶす」。ボウルに煮大豆を入れ、粒がなくなるまで手でつぶしていく。大量の場合はマッシャーなどを使うが、今回仕込む1kg程度なら手作業で充分。続いて、ペースト状になった大豆に先程混ぜた麹と塩、大豆の煮汁を加えて「③みそ団子を作る」。団子の直径は5~6cm、硬さの目安は頬の感触。ポイントはハンバーグをこねる要領で空気を抜くこと。そうすることで「カビが生えにくくなり、酵母が働きやすくなる」からだ。仕上げは、ジップ付きポリ袋に「④みそを仕込む」。講師の方々の「まず隅から埋めて、底を軽くテーブルに打ち付けると空気が抜ける」、「上の部分を外側に一折りしておくとジップ部分にみそがつかない」といったアドバイスを受けつつ、オリジナルみその仕込みが完了。ジップ付きポリ袋に日付と名前を書いた参加者は一様に満足げだ。

みそスイーツとワインを楽しむ

仕込みを終えたら、真藤氏特製のみそを使った「マフィン」とワインのペアリングを体験。合わせるワインは、真藤氏のご主人が醸造責任者を務める四恩醸造の『ローズ 白 2014』。昨年収穫した「デラウェア」を種ありで使ったもので、現在は入手困難な1本だ。またアルコールが苦手な参加者は、同じ四恩醸造の巨峰100%ジュース『虫の音楽隊』を試飲。偶然にも今日が誕生日だという五味仁氏による乾杯の発声とともに、素材の良さが際立つマフィンとの組み合わせを堪能した。
最後は仕込んだみその保存方法について。なるべくなら直射日光の当たらないところ。それが無理なら「今日の新聞で包んで本棚に収納するのがおすすめ」と五味洋子氏。「半年~1年後、包みを開けたときに、今日何があったのか思い出せる」プチタイムカプセルというわけだ。発酵が進んで、みその香りが立ってくるのが梅雨時から。味がほぐれて食べ頃になるのは7月くらい。「食べてみてOKだと思えばその後は冷蔵庫で保存。半分冷蔵庫、半分はさらに発酵させて好みの味を追求するのも良い」とのこと。また、カビの処理方法や、発酵の過程で生じる“たまり”の扱い方についても教わり、セミナーはフィナーレ。真藤氏からは「同じ日、同じ材料で作っても、作った人と発酵の環境で違う味になるのが手前みそのポイント。半年後が楽しみですね」、五味仁氏からは「あまり難しく考えず、生き物を飼っている感じで、気楽にみそと付き合ってみてください」、五味洋子氏からは「かつては“買いみそは恥”という言葉があったほど、家庭でのみそづくりは当たり前でした。ぜひ今回を機に、みそづくりに親しんでいただけたらと思います」との言葉をいただいて、今回のセミナーは閉幕した。

講師紹介

真藤 舞衣子,五味 仁,五味 洋子

真藤 舞衣子(しんどう まいこ)

料理研究家

赤坂でカフェ&サロン「my-an」を6年半営んだ後、ワイン生産者との結婚を機に山梨へ移住。東京と山梨での料理教室の主宰や店舗プロデュース、レシピ開発、青森の南部や岩手で食べられる手打ち麺「ひっつみ」を広める活動、食育の講座・子どもイベント・ワイン会開催などを行なっている。また、山梨で有機農業の推進や食育に関するプロジェクトを進めている。主な著書に『簡単みそづくりからはじめる カラダがよろこぶ魔法のこうじレシピ(平凡社)』などがある。

五味 仁(ごみ ひとし)

五味醤油六代目(発酵兄妹)

東京農業大学で醸造と経営を学ぶ。卒業後、タイの醤油メーカーに勤めた後、明治元年創業の実家の五味醤油に戻る。現在は、みそとみそづくり用のこうじの販売、みそづくり教室をさまざまな場所で開催している。

五味 洋子(ごみ ようこ)

五味醤油(発酵兄妹)
東京農業大学醸造科学科卒業。2009年、ライフスタイル提案会社に就職。社員食堂の立ち上げや新規事業部で商品企画を担当。2013年、味噌屋の娘に生まれた使命を果たすべく帰郷を決意。「心地よく暮らすこと」が人生のテーマ。 

五味醤油 HP