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イベントレポート

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2015年3月7日(土) 14:00~16:00

長友 姫世(ながとも ひめよ) / イタリア政府公認オリーブオイル鑑定士

テイスティングも体験!
オリーブオイルの奥深い魅力を知ろう

日本でも身近な存在となったオリーブオイル。現在、日本の輸入量は世界第4位であり、消費量も年々増え続けている。その一方で、「残念ながらオリーブオイルの本当の姿はなかなか知られていません」と、イタリア政府公認オリーブオイル鑑定士である長友姫世氏は言う。今回は、オリーブオイルはどのような食品なのか?どうやって作られているのか?オイルの種類は?見分け方は?使い方は?など、さまざまな角度からオリーブオイルについて解説いただいた。その知られざる魅力を知る機会となった。

一つひとつの緻密な作業から生まれるオリーブオイル

今回のセミナーは、小田原オリーブ研究会とd-labo湘南との共催で実現。そこで、セミナーに先立ち、小田原オリーブ研究会を代表して、小田原市役所農政課の青木氏から開催の挨拶が行なわれた。

「小田原はミカンやレモンの栽培で有名ですが、農家の高齢化や、イノシシやサルなどによる鳥獣被害といった悩みも多く、何か新しいことをしなければ、と、昨年立ち上げたのが、小田原オリーブ研究会です。小豆島から苗を取り寄せて栽培に挑戦しています。将来的には、湘南のオリーブとして展開できればと考えています。小田原でできたオリーブを使った、しぼりたてのオリーブオイルで料理をつくるのが夢です」

青木氏の挨拶に、長友氏も言葉を添える。

「かわいいオリーブが着々と育っています。どうか皆さんも、小田原市のオリーブ栽培を応援してください」
参加者からの拍手とともに、長友氏によるセミナーがスタートした。

「今、世界中にオリーブの品種がどれくらいあると思いますか?実は、2,000種もあるんです。その中で、イタリアで栽培されている品種がおよそ600種類。実の大きさや形もさまざまで、なかには姫リンゴ(直径約4cm)くらいの大きさのものもあるんですよ」

オリーブを栽培し、オリーブオイルができあがるまでには、あらゆる面で繊細さが求められる。水とアンチョビを使った、環境に負荷がなく効果の高い病害虫対策。成熟度を見極めての収穫のタイミングや手で枝をしごいたり幹を揺らしたりして行われる収穫。収穫後すぐに、かつ優しく行われる輸送。実を洗浄し、粉砕、ペースト状に練り込んで、そこからオイルを抽出するまで、すべての段階で行われたことの影響が少しずつ積み重なって、最終的にオリーブオイルの品質を左右することになる。

会場からは「作業の緻密さに驚いた」という声が。長友氏も、
「こんなふうに、細かいこと一つひとつに気を配って、それがようやくあの一滴になるんだ、と思うと、すごくありがたく感じますよね」
と、しみじみ語った。

オリーブオイルのテイスティングに挑戦

できあがったオリーブオイルの品質は、どのようにして判断されるのだろう。

「オリーブオイルは、2つの検査によって商品分類が行われます。まず1つは化学分析です。イタリアでは、たくさんの検査項目が法律で細かく決められています。余談ですが、この検査に採用されている分析機械に、日本の島津製作所製のものがあります。イタリアで日本の機械が大活躍しているのを見ると、誇らしい気持ちになりますね」

その緻密な化学分析に加え、人間の嗅覚、味覚を使った“テイスティング”も行なわれる。これが、長友氏たち鑑定士の仕事である。

「市場へ送りだす商品分類の鑑定に、人間の感覚による分析(官能検査)が取り入れられているのは、食品の中でもオリーブオイルだけ。香り、苦み、辛みを、嗅覚や味覚を使ってチェックしていきます。機械による化学分析ですべての基準をクリアしていても、実際にテイスティングしてみると、欠陥の要素が感じられる場合もあるんですよ」

ここで、参加者一人一人にオリーブオイルの入った小さなカップが配られ、実際にテイスティングに挑戦することに。28℃±2℃が、テイスティングに適した温度だということで、まずは手の平の上でカップごしにオリーブオイルを温める。

「温まってきたら、香りを嗅いでみてください。どんな香りがしますか?青々とした草の香り?トマトのような香り?では、今度はオリーブオイルを口の中に入れて、舌の上にまんべんなく行き渡らせてください」

口を横にひき、空気を吸い込む。口蓋の奥に、再び香りが広がる。

「苦さを感じますか?辛みは?そうですね、辛いですよね。苦み、辛みというのは、オリーブオイルにとってはポジティブな部分です。料理に使ったときに、この苦み、辛みが生きてくるんです」

喉にもピリピリとした刺激が。これは、ポリフェノールを含んでいるからだという。

続いて、別のオリーブオイルを同じようにテイスティングしてみる。最初のサンプルと比べると香りはそれほど強くない。口に含んでみるとマイルドで、ほんの少し苦みがある程度。「どちらが好きでしたか?」という長友氏の質問には、最初のサンプルに圧倒的な人気が集まった。

「実は、2番目は欠陥品なんですね。実の段階で劣化し、輸送中にすでに発酵が始まってしまったのではないかと思われます。このような特徴があるものは、あまり品質のよいものだとはいえません」

健康にも効果が期待されるオリーブオイル

最近の研究で、オリーブオイルには、がん細胞の抑制も期待できることがわかったという。ユネスコ無形文化遺産にも指定されている「地中海式食事法」でも、オリーブオイルは毎日摂るべき食品とされており、健康や美容への効果で高く評価されている。

「油、というと悪者扱いされがちですが、大切なのは、どんな脂質を取り込むかということ。いい脂質を摂れば、より健康になれます」

ゆでた野菜や、焼いた魚介類に使い、ハーブやビネガーで味付けするのが手軽な使い方だが、熱して煙が出る温度、“発煙点”が約210℃と高いオリーブオイルは、揚げ物に使うのもおすすめだ。

「オリーブオイルだとカラッと揚がります。『揚げ物に使うのはちょっと贅沢だなぁ』という方は、少量で揚げ焼きにするといいのでは。オイル漬けなどの保存食にも抗酸化成分を含むオリーブオイルはよく合います」

料理に合わせてオリーブオイルを使い分けられるようになれば上級者だ。

「たとえばパンチの効いた料理には、辛みや苦みが強いオイルを。やさしい料理にはマイルドなオイルを。似たもの同士を組み合わせることで、相性が良く、より素材や料理の個性が引き立ち、おいしくなるんです」

参加者からは、価格や保存方法についての質問も出た。

「日本ではまだまだ市場が成熟していないので、価格と品質は決して比例していません。高ければおいしい、というものでもないんです。知識を身につけて、消費者が自分自身で判断や選択ができるようになればいいなと思います。また、保存方法ですが、オリーブオイルはボトルに入った状態でも劣化していきますので、光のあたらない涼しいところで、理想的には13〜15℃で保存し、開封後は2か月ぐらいを目安に使い切れるとよいでしょう。ただし、そのオリーブオイルの持つ特徴や置かれる状態によっても変わります。」

長友氏の夢は、「オリーブオイルが、外国のものとして一過性のブームに終わることなく、日本の食文化にも馴染んでほしい」ということ。そのために日本でも世界基準の鑑定士の制度をつくることに尽力したい、と語る。

「今日からのオリーブオイルライフを楽しんでいただきたいですね」

講師紹介

長友 姫世(ながとも ひめよ)
長友 姫世(ながとも ひめよ)
イタリア政府公認オリーブオイル鑑定士
企業の広報やラジオDJ、フリーアナウンサーとして活躍後、イタリアへ留学。外国人では難しいとされるイタリア政府農林食糧政策省公認のオリーブオイル鑑定士の資格を取得、登録。オイル鑑定のほか、オリーブオイルや食に関する講演・執筆活動、企業へのコンサルタントを行なう。国際オリーブオイルコンテストにてアジア唯一の審査員を歴任。日本における鑑定士育成にも尽力。日本オリーブオイルテイスター協会代表理事。近著に『オリーブオイル・ガイドブック』(新潮社)。