イベントレポート
2015年3月14日(土) 14:00~16:00
中村 龍太,頼富 雄介 /
男性ファッション塾
~かんたん休日ジャケット攻略法~
休日にジャケットを着ることは難しいと思っていないだろうか?実は、ジャケットは簡単で便利なアイテム。「オシャレをしたご主人と一緒に歩きたい奥様」 「どんな格好をして出かけたら良いのか分からない男性」「記念日にオシャレなレストランで食事をしたいご夫婦」10,000人以上のパーソナルスタイリング実績を持つファッションレスキューのスタイリスト、中村氏と頼富氏に、ジャケット着こなしのコツを教えていただいた。
一般人を対象にするパーソナルスタイリスト

中村氏と頼富氏の肩書きである「パーソナルスタイリスト」の特徴は、「お客さまが一般の人であること」。テレビや雑誌で芸能人やモデルを相手にするスタイリストとは違って、体型や性格、社会的背景も千差万別である一般の人を対象にするため、「その人がどんな洋服を着て、どんな毎日を送るのか」という、リアリティのあるスタイリングが求められる。
今回は、男性の休日スタイルに焦点を当てて、ジャケットの楽しみ方を提案していただく。
「男性は、平日はスーツでビシッと決めていても、休日となるといつもTシャツとジーパン、というパターンの方も多いのではと思います。その『スーツとTシャツの間』が、今回のテーマです。フォーマルとカジュアルの間をつないで、シーンに合わせて自由に装いを行き来させる力??これを私たちファッションレスキューでは『装力(そうりょく)』と呼んでいますが、それがあれば、もっと自分らしく、ファッションを楽しむことができると思います」と、頼富氏。
そこで、スルガ銀行の男性スタッフをモデルにして、パーソナルスタイリングを実践することに。まずは「ナチュラル」「まじめ」「リーダーシップ」「トレンド」「コンサバティブ」といった、ファッションや印象のテイストを表現した言葉がたくさん並んだ、独自の“イメージスケール”を使って、「現在の自分」と「目指したい自分」に当てはまる言葉に、それぞれ5つずつ印を付けていく。
「ご自身を客観視したイメージは『まじめ』『落ち着き』『安心感』『かわいい』『頑固』といった保守的なキーワードが多いですね。そこに『スマート』『アクティブ』『ナチュラル』といった要素を加えたい、という願望が、イメージスケールから読み取れます」
職場での装いの許容範囲を確認したうえで、中村氏が提案したのはグレーがかったネイビーのジャケット。
「黒や紺といった定番の色ではなく、上品で優しい色合いです。素材は少し伸縮性のあるものを選んで、動きやすくアクティブに。さらにサイズ感を、標準より少し細めにしたことで、スマートな印象に仕立てました」
確かに、いつも着ているというジャケットと着比べてみると、より洗練されたイメージに変身している。
「ジャケットひとつでも、これだけイメージが変わってきます。好き嫌いだけでなく、相手にどういう印象を与えるかということを考えることも、ファッションの大切な要素なのではないでしょうか」
さらにこのジャケットは、ネクタイを蝶ネクタイにし、ポケットチーフをさせば、ちょっとしたパーティにも対応可能。デザインTシャツ+デニムと合わせれば、おしゃれな休日カジュアルに。1枚のジャケットで幅広い着回しを提案する中村氏のスタイリングに、会場からは感嘆の声が上がった。
「このような、着回しのできる休日ジャケットを1枚持っているといいと思います。ウール、シルク、リネン、コットン、ポリエステルなど、ジャケットの素材もさまざまあり、それによっても印象が変わりますので、ご自身の価値観に合った素材を選んでください」
おしゃれな着こなしに重要なのはバランス

ジャケット選びのポイントを学んだ後は、「着こなしのバランス」について学ぶことに。
「おしゃれの優先順位は、①バランス ②サイズ ③カラー です。バランスがよければ、かっこよく見えるし、逆にバランスが悪いと、最新のデザインでも野暮ったく見えます。では、ジャケットのバランスについて、具体的に解説していきましょう」
ジャケットで大切な「肩」は、肩先に手を入れてみて指で軽くつまめるくらいがすっきり見える。楽だからと大きめのサイズを選ぶ人もいるが、あまりダボッとしているとバランスが悪い。
「胸」は、前のボタンを閉めたときに、お腹との間に拳がひとつ入るくらい。拳ふたつが入るようなら大きい。
「袖」は、ペンギンの足のように手首を甲側に曲げたとき、袖口が手の甲に当たるか当たらないかくらいがすっきりと見える。さらに、袖口からシャツの袖が小指1本ぶんくらい見えているのが美しい。
「背中」は、首の付け根にシワが出ていないかをチェック。
「着丈」は、総丈の半分より-2cmくらいが今風のバランス。長くなれば年齢が高めに、短くなれば若々しく見える。
実際に、ジャケットを着用していたセミナー参加者数名に前に出てもらい、中村氏がひとつひとつチェックしていく。「肩がもう少し詰まっていたほうがいい」「丈があとこれくらい短ければ」と言いながら、中村氏がジャケットの布をつまんだり折ったりしてほんの少しバランスを変えるだけで、ぐっと印象が変わる。それを見て、参加者たちは大きくうなずいていた。
「ファッションに正解はありません。自分が好きなもの、落ちつくものも大事ですが、相手にどう見られたいのかを意識して装うことが大人のおしゃれの一歩です」
お気に入りのジャケットを手に入れたら、そのケアも大切だ。
「型崩れを防ぐためには、4.5cmくらいの厚みがある木製ハンガーがおすすめです。ジャケットの肩幅から1?2cm小さいくらいだと、きれいにかけられます。ブラシは、まず下から上にかけてホコリをかき出し、最後に上から下へかけて毛を寝かせます。素材に合わせてブラシも変えるのが理想です」
ファッションの素朴な疑問を次々と解決

「女性に比べて、男性のファッションにはアイテムが少ないので、ジャケットにはベストやストール、ブートニエール(衿に開いているホール。花をさしたりピンバッチなどをあしらったりする)、ポケットチーフといった小物をうまく組み合わせて、バリエーションを楽しんでください」
参考として、ポケットチーフの使い方を数パターン教えていただく。わざわざ入れなくてもいいものを入れていることで、今日の為に「おしゃれしているな」という気持ちが伝わり、相手からの好感も期待できる。
セミナーの最後には、参加者から活発な質問が出た。
「シャツの下に着るインナーは?」「蝶ネクタイのときにはウィングカラーでなければいけないのか」「肘にレザーを貼るエルボーパッチはどういう素材に合うのか」「ボタンダウンのシャツはフォーマルなシーンにはNGか」など、素朴な疑問に、具体例を挙げつつ答えていただいた。おしゃれへの意識が高い参加者たちは、熱心に聞き入っていた。
中村氏の夢は、「日本の服装改革ー装力を広める」こと。頼富氏の夢は、「可能性を信じてチャレンジする文化を、服装教育を通じて日本に広める」こと。
ファッションから広がる夢を実感できる、熱いセミナーとなった。
講師紹介

- 中村 龍太,頼富 雄介
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中村 龍太(なかむら りゅうた) 写真左
有限会社ファッションレスキュー パーソナルスタイリスト
文化服装学院を卒業後、メディア系のスタイリストとして5年間活躍。2010年ファッションレスキューに入社し、4年間で延べ1,000人以上のスタイリングを手掛ける。同社代表、政近準子著の書籍「チャンスをつかむ男の服の習慣」の制作にも深く携わる。メンズスタイリング、オーダースーツ部門の責任者としてファッションレスキューを牽引する存在。
頼富 雄介 (よりとみ ゆうすけ) 写真右
有限会社ファッションレスキュー パーソナルスタイリスト
早稲田大学スポーツ科学部卒業後、ソフトバンクモバイルにて勤務。その後、同社が運営するパーソナルスタイリスト養成学校を卒業し、ファッションレスキューへ入社。パーソナルスタイリングの現場にて「装うことの力=装力」の可能性に着目。「装力」を伝え広める学びの場としてファッション教育事業にも着手し、同社を新たなステージへ引き上げる存在。