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イベントレポート

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2015年4月9日(木) 19:00~21:00

梅北 奈鼓(うめきた なこ) / オリーブオイルマスターソムリエ・オリーブオイル品種マスター

~知っているようで知らない~
本当に美味しいオリーブオイルの選び方と活用法

平和の象徴として世界中の人々に愛されてきたオリーブ。その歴史は古く、6千年前から栽培されていたと言われている。今やその品種も数千種を超え、世界中で栽培され、オリーブオイルとして製品化されている。健康志向に伴い、国内でもオリーブオイル市場は拡がり続けているが、知っているようで意外に知らないことが多いオリーブオイル。今回は、オリーブオイルマスターソムリエの梅北奈鼓氏をお迎えし、オリーブオイルのテイスティングを行ないながら、本当に美味しいオリーブオイルの選び方と活用法を伝授いただいた。

健康にいいオリーブオイル

『日本オリーブオイルソムリエ協会』のマスターソムリエである梅北奈鼓氏。ひとくちにオリーブオイルといっても品種や種類はさまざま。ワインのソムリエがそうであるように、オリーブオイルソムリエもまた一つひとつ異なるオイルの味や風味を鑑定し、消費者に正確な情報を伝えることが仕事だという。
「オリーブオイルについて話すと、いちばん多く聞かれるのが〈どれを選べばいいの?〉。ですから今日は『選び方と活用法』をテーマにさせていただきました」

オリーブはモクセイ科の植物。栽培の歴史は古く、そこから採れるオリーブオイルは8000年以上も前に誕生したと言われている。発祥地は現在のトルコ付近。栽培が盛んになったのは紀元前6世紀頃で、食用の他、鎮静剤などに使用されてきた。生産地はスペイン、イタリア、ギリシャ、チュニジアなどの地中海沿岸が中心。その後、北南米に広まり、現在ではオーストラリア、南アフリカ、中国など世界の広い地域で栽培されている。日本国内には江戸時代末期にはじめて苗木が持ち込まれ、明治後期には国の施策で三重県、香川県、鹿児島県で試験栽培が行なわれた。このうち成功を収めたのが香川県。1959年の輸入自由化で国内栽培は一時減少したが、最近ではオリーブオイルブームもあって小豆島をはじめ各地で生産面積が拡大している。

「オリーブの木は、例えば国連の旗にも描かれているように、昔から平和や勝利の象徴として扱われてきました。実の絞り汁であるオリーブオイルにはオレイン酸が多く含まれ、高血圧や糖尿病、肥満などの生活習慣病の予防に効果があると言われています」

他にもアンチエイジングや腸内環境を整えるといったことに有効。脂肪酸の比率が母乳と似ているため、ヨーロッパでは粉ミルクと合わせて離乳食に使われている。また微量成分として含まれている「トコフェロール(ビタミンE)」には抗酸化作用があり、動脈硬化や冷え症、肩こり、肌荒れなどの予防に役立つ。近年は前立腺がんや胃がんなどの予防にも効果があるのではといった研究結果が発表され注目を集めている。さらに同じ微量成分の「ポリフェノール」には上記のアンチエイジング、「オレオカンタール」には心臓病や認知症の予防が期待できるという。こうして見てみると、オリーブオイルはまさに健康食品。この先もまだまだ市場が大きくなっていくことが予想されている。

収穫から瓶詰めまで、生産はスピードが命

では、オリーブオイルはどのようにつくられているのか。まず大切なことは「いかに傷つけずに収穫するか」。そして「できるだけ素早く運搬する」こと。オリーブの実は摘んだ瞬間から酸化が始まる。酸度を低く抑えるには畑で摘んだと同時に工場に運ぶ必要がある。運搬された実は洗浄し種ごと粉砕。油分を分離しやすくするために「練りこみ」というオリーブオイル独特の工程を経たうえで圧搾し、液体と固体とに分ける。さらに液体は水分と油分に分離させ、酸価の測定を行なう。酸価とは油の劣化の度数。オイルの「格付け」の目安となるものだ。酸価の測定が終わったら濾過。ヴァージンオリーブオイルは濾過したらタンクに貯蔵。それ以外のオイルは精製されたうえで貯蔵される。あとは瓶詰めして出荷。こうした製造工程には常に新しい技術が生み出され、改良が加えられている。オリーブオイルというと、昔からあるものだけに手摘みによる収穫などの伝統的な製法でつくられているのではといったイメージがあるが、実はその逆。酸化を防ぐために現在ではいっさい人の手を介さない製造方法も開発されている。日本国内で生産する場合の最大の問題はコスト高。搾油機械がすべて海外からの輸入品のためどうしても生産コストがかかってしまうのが悩みどころだという。

和食とオリーブオイルの相性は抜群

こうやってつくられるオリーブオイルは世界45か国が加盟する『国際オリーブ協会』の規格である「理化学検査分析」と「官能的検査分析」によって格付けされる。オリーブで驚かされるのは約2,000から3,000種という栽培種の多さ。単一品種では結実しにくいという特性に加え、もともと野生種だけで多種だったものが交配や品種改良によって増え、それが今もつづいている。食用で代表的なものは酸度が0.8パーセント以下の「エキストラヴァージン」。スーパーなどで手に入るのはこのエキストラヴァージンオリーブオイルか、精製オリーブオイルに少量のエキストラヴァージンオリーブオイルを混ぜたピュアオリーブオイルだ。後者にはオリーブオイルの栄養価はほとんど含まれていないので、体にいいものを選ぶのならエキストラヴァージンオリーブオイルに限る。もちろん、一概にエキストラヴァージンオリーブオイルと言っても産地や品種、生産者によって味は変わる。タイプで分けると「軽やか・スイート」、「ほろ苦く力強い」、「スパイシー・フルーティ」の3つ。賞味期限はだいたい18か月から24か月。買うときは必ずラベルで日付を確認してほしい。開封したら2か月以内に使いきること。保管の際は、蓋はしっかりと閉じ、直射日光の当たらない場所に置く。ボトルは酸化防止に適した遮光瓶が望ましい。いちばんの問題点は「品質が金額と比例しないところ」。海外からの輸入品が多いオリーブオイルは運搬の際に劣化してしまうこともある。そのため開封したらまず香りや味を自分の鼻と舌で確かめることが大切だ。オリーブオイルの活用法として梅北氏が推奨しているのは「和食との組み合わせ」。

「イタリアンはもちろんですが、発酵食品の多い和食はオリーブオイルと相性がいい。酸化しにくいので揚げ油にも最適ですし、料理の仕上げにも使える。朝に大さじ一杯分ほど飲めば便通の改善にもなります」

セミナーの後半は5種類のオリーブオイルを参加者全員でテイスティング。オーストラリアやスペイン産のエキストラヴァージンオリーブオイルと、レモンや薫製、チョコレートなどのフレーバーを加えたオリーブオイルを試飲してみた。テイスティングの目的はそのオリーブオイルの魅力を探ること。

「これはいいオリーブオイルだなと思ったら、それをどういう料理に合わせるか、といったところまでぜひ落とし込んでください」

梅北氏の「夢」は「もっと日本人にとってオリーブオイルが身近な食品となり、多くの人が自分で美味しいオリーブを選ぶことができる時代がくること」。

「そのためにもオリーブオイルの啓蒙活動をつづけていきたいと思います」

講師紹介

梅北 奈鼓(うめきた なこ)
梅北 奈鼓(うめきた なこ)
オリーブオイルマスターソムリエ・オリーブオイル品種マスター
鹿児島県出身。鹿児島読売テレビ勤務、サンフランシスコ留学を経て、鹿児島でははじめての野菜を使ったカクテル「アジュガ」を鹿児島最大の繁華街である天文館にオープン。2008年からは、「野菜もお肉も主役になれるしゃぶしゃぶ」がコンセプトの「梅屋」を開業し、お店を切り盛りする傍ら、2015年1月には、オリーブオイルの正しい情報の提供と普及を目的とする「照国オリーブラボ」を開業。オリーブオイルの研究所として注目を集める。(一社)日本オリーブオイルソムリエ協会南九州支部長を務め、2013年、2014年、2015年とOLIVE JAPAN世界オリーブオイルコンテスト日本人審査員に選ばれる。また、資格を活かした「アンチエイジング」などをテーマにした講演・セミナーが好評。
照国オリーブラボ