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イベントレポート

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2015年4月11日(土) 14:00~16:00

SUGEE(スギ) / 音と植栽空間コーディネーター

都市空間における植物との共生

アフリカや中南米などに自生する植物の独創的なフォルムと癒しの力に溢れた生命力に、圧倒されたことはありませんか?今回d-labo二子玉川では、群馬県で温室を管理し、そこで熱帯植物を栽培しながら、アパレルショップやサロンなど都市空間にさまざまなスタイルで、植物との共生のかたちを提案しているSUGEE氏をお迎えいたしました。世界にはどのような植物があるのか、彼らはどのように進化し、どのように繁殖してきたのか、また、都市ではどのような植物との共生のかたちがあるのかを、実際にさまざまな多肉植物の寄せ植えを行なって、植物と触れ合いながら皆さんと一緒に考えていきました。

生き物が媒介する受粉の不思議

アフリカや中南米の旅を通して、「熱帯植物の生命力やフォルムの独自性などに魅了された」SUGEE氏。植物に深く興味を持つきっかけとなったのは、「受粉システムと、それを媒介する生き物との関係」だったという。

「たとえば、身近な存在であるだと思っているイチジク。漢字で“無花果=花の無い果実”と書きますが、現実にはむしろ逆。実(種)の無い花なんです。皆さんが食べているのは花を覆っている袋(花嚢)で、それを割ると出てくる粒々が花。じゃあぁでは、肝心の種はどこに?…というと、日本国内にあるイチジクには種ができないんです」

なぜなら、「受粉を媒介する『イチジクコバチ』という昆虫が日本に生息していない」から。受粉には、「イチジクコバチが卵を産み付けるために、花嚢の先端にあいた穴から中に入り込む」プロセスが必要。その媒介者がいない日本のイチジクは、「ほぼ全てが挿し木で増やされたクローン」のようなもの。

「何世代にも渡り挿し木されてきた日本のイチジクは、どこかヒョロリとして弱い印象を受けます。でも、原産地である中近東に自生する様子は非常にたくましく、まさに“大木”と呼ぶのに相応しい姿なんですよ」

興味深いのは、媒介者であるイチジクコバチもまた、このクワ科の植物がなければ子孫を残せないという事実。

「植物が昆虫の都合に合わせたのか、その逆か。その辺りは不明ですが、互いが共生しやすいよう進化しているのがおもしろい面白いですね」

生薬としての植物の可能性

受粉・交配と並んでSUGEE氏の心を捉えているのは、「植物の薬効利用」。一例として紹介いただいたのは、南アフリカのサン族が珍重する多肉植物の「ホーディア」。

「口にすると3日間は空腹を感じないといわれ、現地では狩りに行く前に食べる習慣があります。また、ホーディアを自力で見つけて狩りをしてくることが、成人の通過儀礼になっているほど、彼らにとっては大事な植物。僕も試しに食べてみましたが、確かに長時間空腹を感じませんでした」

近年、「このホーディアに含まれる成分に、とあるフランスの製薬会社が着目」。糖を摂取したかのように脳を錯覚させる脳に直接糖質を送るという仕組みを解明。「ダイエット用の錠剤に応用して高値で売り出した」こともある。

「一時期、この成分を使った棒付きキャンディが、あるお騒がせセレブ御用達ダイエットアイテムとして話題になったりもしたので、見たことがある人もいるかもしれません(笑)」

このような、「ローカルなコミュニティの中で、民間療法的に大切にされてきた植物が、実は西洋医学的見地からは大発見だった」というような事例は、「まだまだあるはず」とSUGEE氏。自身も、多肉植物の「ハオルシア」に注目し、星薬科大学の生薬研究室に分析を依頼。薬効が期待される未知の成分が検出されたという実績も持っている。

「マダガスカルの『バオバブ』や、南アフリカの『アロエ』などは、薬効という側面に限らず、日常生活でさまざまな場面で利用されています。その様子を見ると、人は植物なしでは生きていけない、ということを改めて感じます。それは都市生活においても同じ。植物の世話をしているつもりが、実は自分自身が癒やされている。植物があることで住環境が整えられていく、等々。植物を育てることは、必ず何かしらのフィードバックがあるんです」

なかでも都市生活にマッチするのが多肉植物。「キク科、ユリ科、キョウチクトウ科など、いろいろな植物が水のない厳しい環境に適応し、どんどんとその生息域を広げていって生まれた」多肉植物は、「さほど手をかけずとも、環境さえあえば素直に育つ」優等生。

「人類の歴史とシンクロするように進化しているところにも、愛着を感じます」

多肉植物の寄せ植えを楽しむ

セミナー後半は、実際に多肉植物の寄せ植えを体験。まずは、各々の鉢に土を入れていく作業から。底に穴のある鉢には、「水はけがよく、リサイクルにもなるので」、割れてしまったテラコッタを一片。穴のないものには、珪酸塩白土(けいえんさんはくど)を薄く敷き、根腐れ防止対策を施す。この珪酸塩白土を敷くことで、「ワイングラスなども鉢として使える」ので便利だ。続いては両者同じように、赤玉土の中粒をひと一つかみ。そこにSUGEE氏オリジナルブレンドの土を入れていく。

「今回用意したのは、コンポスト、砂、もみ殻を焼いたくん炭、赤玉土の小粒、バーミキューライトを混ぜたものです。最近は、ホームセンターでもサボテン用の土が売られていますが、品質にムラがあるのが難点。買うなら一般的な花用培養土の方がベターでしょう」

次に、根ダニ除けの殺虫剤をごく少量加え、鉢の上縁から2~3cmのところまで土を足していく。寄せ植えの土台ができたら、お待ちかねの多肉植物選びの時間。中南米原産のベンケイソウ科を中心に、大小のカット苗が並ぶ。参加者は、受付を済ませた順番に従って、気に入った苗をチョイス。鉢のサイズにあわせ、大3個、中3~4個、下草用セダム4~5本を目安に選んでいく。一見サラミのような形状の「カランコエ・フミリス」、赤色が可憐な「クラッスラ・火祭り」、小さな花を付けた「グラプトベリアエケベリア・白牡丹」、等々。「相性の良いものだけを持ってきている」ので、神経質にならず、感性にしたがって従って自由に選べるのがうれしい嬉しい。参加者同士は互いに何を選んだかに興味津々。ちょっとした品評会が開かれ賑やかだ。

「最初の水やりは1週間ほど経ってから。その後は底穴のある鉢なら月に2、3回、たっぷりと。穴のないものは月に1、2回、お猪口に1杯程度で充分。休眠期に当たる夏冬は根腐れてしまうので水やりは控えるNG」。また、「多肉植物は水も空気も循環を好む」ので、空気が淀む部屋の隅は避け、「ガラス越しでもいいので自然光に当てる」。ただし、「直射日光(とくに西日)には弱いので気をつけること」。

真剣にメモを取る参加者にはこんな助言も。

「基本的には、人が生活できる環境なら大丈夫。一緒に生活していくうちに“水が足りないな”とか、“ちょっと調子悪いかな”というのはわかってきます」

そのためにも、「ぜひ長い時間をかけてかわいがってあげてほしい」とSUGEE氏。

「季節による色の変化や、成長にともなう形状の変化はとてもおもしろい面白い。それに、剪定(せんてい)していくことで、自分の気に入った姿に仕立て上げていくのも大きな楽しみですよ」

講師紹介

SUGEE(スギ)
SUGEE(スギ)
音と植栽空間コーディネーター
群馬県館林市生まれ。90年代後期より、沖縄、東南アジア、中南米、キューバ、西アフリカ等を旅し、各地の祭礼音楽との交流の中から、唄と打楽器という独自のスタイルを確立。また、各地のシャーマニズムで扱われる薬効を持った植物に深くインスピレーションを受け、帰国後は植物を使った空間コーディネーターとしての活動も開始。現在、アーティストとして国内外で活動中。都市における癒しと喜びを人々に提供することをライフワークとしている。