スルガ銀行 Dバンク支店

SURUGA d-labo. Bring your dream to reality. Draw my dream.

イベントレポート

イベントレポートTOP

2015年4月16日(木) 19:00~21:00

西 加南子(にし かなこ),石井 美穂(いしい みほ),佐野 朋子 (さの ともこ) /

プロロードレーサー 西加南子さんになんでも聞いてみよう
「女子サイクリングトーク」

現役プロロードレーサー女王の西加南子さん(LUMINARIA所属)。「女は年齢じゃない、肌と筋肉だ!」をモットーに強さと美しさを兼ね備え走りつづける西さんに、LINKAGE CYCLINGのスタッフで、サイクリング大好きの石井美穂さんと初心者で運動音痴の佐野朋子さんが、日々のトレーニングや食事、美容法などプロ選手の実生活やレース中の様子について、本音トークを交えながら、聞いてみました。

ロードバイクとの出会いは短大時代。「沼津港にお魚を食べに行っていました」

西加南子選手を迎えてのトークショーは、アテネオリンピックプレーヤーの田代恭崇氏が経営するLINKAGE CYCLINGのスタッフである「ちゅなどん」こと石井美穂氏と佐野朋子氏をトークパートナーにスタート。西選手といえば国内のレースはもとよりナショナルチームのメンバーとして海外でも戦ってきた女子ロードレース界のトップ選手。一般の自転車乗りから見れば「雲の上の人」だ。そこでまず2人が訊いたのは、これならば自分たちともたいした違いはないだろうという「自転車との出会い」。すると期待どおり、西選手からはフランクな答えが返ってきた。

「ロードバイクに乗り始めたのは短大のとき。当時の私は陸上部にいたんですね。部の仲間が自転車に乗っていたので私も乗るようになったんです」

最初はレースに出るのではなく、大学から遠くない沼津港まで仲間とお魚を食べに行ったり、サイクリングを楽しんでいたという。

これを聞いて「なんだ、最初は私たちと一緒じゃん」と石井氏&佐野氏。レースも挑戦したのはロードレースではなくトライアスロン。西選手によると「陸上部だから走れたし、泳ぐのはいまいちだったけど、トライアスロンは楽しみながら出ていましたね」とのこと。

本格的にロードレースに参加するようになったのは、その後に転入した二松学舎大学卒業後。以後の、全日本自転車競技選手権優勝、3度に渡るジャパンカップ優勝などはファンであればよく知っているところ。そんな西選手に2人が尋ねたのは「いちばん印象に残っているレース」。

「いちばん思い出に残っているのは2011年のジャパンカップを2連覇で優勝したとき。あのときは前年に優勝していたからプレッシャーが大きかった。それだけに勝てて嬉しかったです」

次に印象深いのは2009年の全日本選手権での初優勝。

「あのときは残り2周で逃げに入ったら勝ててしまった。勝つと思っていなかったら、やった、ラッキーって感じでした」

「最後の最後で勝負が決まった」昨年の『ジャパンカップ』

ジャパンカップは昨年も優勝。「去年の前半は怪我でレースに出られなかったのでジャパンカップだけは優勝したいと思ったんです」と話す西選手に、2人は「狙ったレースで勝てるというのはすごいですね」と驚嘆。コース図を見ながらレースを振り返ってもらった。「いつもレースのことはそんなに覚えていない。だからレースレポートとか困るんですよ」と苦笑いしながらも「ジャパンカップはスタートしてすぐに急な上り坂なんですよ。だからアップは入念にしておかないと……」と説明してくれる西選手。宇都宮市森林公園を周回するジャパンカップのコースは「本場ツール・ド・フランスの山岳ステージに勝るとも劣らない名コース」。選手たちはスタートすると1周14.1キロメートルのコースを10周し、最終周回の10.3キロメートルを走ってゴールする。ゴールの手前3キロまでは「田圃の中を走る」。そして迎えた上りで「勝負が決まる」という。2013年のレースでは「金子広美選手にここで負けました」。去年のレースでは、同じようにトップグループを形成し、やはり最後の上りで金子選手との一騎打ちとなった。ペースアップする金子選手の様子を見て「これ以上はスピードを上げられないな」と判断してスパート。

「一昨年はアタックをかけたら併走されてやられてしまったんですけど、今年は優勝することができました」

そう話す西選手の顔には、傷跡が残っている。顔の怪我は海外でのレースでの落車によるもの。せいぜい集団で走っても40名程度の塊にしかならない国内のレースと違い、海外のレースでは130~140名が集団となる。海外の選手には「そこそこ走れるけれどテクニックがない選手」が少なくない。そうした「危ない選手」は見ていればだいたい察しはつく。とはいえ集団の中で転倒されると、どうしても巻き添えになってしまう。ここからは「去年タイでの落車で吹き飛ばされた話」や「環境が過酷だったベトナムの病院の話」など。タイでの落車では大腿骨が圧迫されて骨盤にひびが入るという怪我を負った。帰国してしばらくは松葉杖で歩行。それでも「自転車に乗っているぶんには痛みがなかった」のでトレーニングはつづけ、無理かと思っていた全日本選手権に出場することができた。同じく去年のベトナムでの落車では顎を負傷。ニュージーランドのレースでは鼻柱が欠けて8針を縫った。まさに満身創痍。だが「レーザーで傷跡を焼くとか、さがせばきれいに治す方法はあります」と西選手は屈託なく笑う。もちろん、これは代表選手としてギリギリの戦いをしているからこそ背負うリスクだ。

「日本で安全にサイクリングしていれば、こういうことはまずありません」

辛いことは「忘れてしまうのも強さのうち」

話は写真を見ながらの「海外レースの裏話」へ。現地での移動手段はレンタカーやバスの相乗り。予算が限られているため宿は安ホテルだし、アジアなどでは食事は屋台でとることが多い。ステージレースの移動ではウェアのままシャワーも浴びずに動くことがある。場所によってはトイレをさがすにもひと苦労。華々しいイメージとは逆に、裏では苦労も多いのが海外レースだ。

トークは休憩を挟んで質問タイムに。「中高年ならではのトレーニング」は「内容よりも回復に気を遣うこと」。「ヒルクライムで楽に上る」には「手っ取り早いのは体重を軽くすること」。世界と比べた日本の女子の実力は「正直まだまだ。欧米の選手との差は筋肉量」。女性ならではの「生理のときの対応」については「ここぞって大会のときは中容量や低容量のピルを使う。あんまりきついときは休む」。「辛かったとき」の乗り越える方法は「忘れてしまうこと。忘れることができるのも強さのうちです」。と、次々に寄せられる質問に小気味よく答えていただいた。d-laboからの質問である「夢」に関しては、「夢はなかなか叶わないもの。もし叶わないと思ったら見切りをつけて、別の夢を見つけるといいのではないでしょうか」。

今年の目標は「しばらく上っていない全日本選手権の表彰台に上ることと、ジャパンカップでもう一度優勝すること」。

飾らない人柄が魅力の西加南子選手。今年の活躍もおおいに期待したいところだ。

講師紹介

西 加南子(にし かなこ),石井 美穂(いしい みほ),佐野 朋子 (さの ともこ)

西 加南子(にし かなこ)
静岡県掛川市出身。静岡県立掛川西高等学校卒業後、日本大学短期大学部入学。その後、二松学舎大学に編入。大学卒業後、本格的に自転車競技を開始し、初出場となる全日本自転車競技選手権大会では7位。2009年全日本自転車競技選手権大会優勝 2010年ジャパンカップオープン女子優勝 2011年ジャパンカップオープン女子優勝(2連覇) 2014年ジャパンカップオープン女子優勝
公式サイト She’ll be Right!!
トークパートナー
石井 美穂(いしい みほ)/佐野 朋子 (さの ともこ)
アテネオリンピックプレーヤー田代恭祟氏率いるLINKAGE CYCLING(リンケージサイクリング)のスタッフ、石井美穂氏と佐野朋子氏。サイクリングパートナーとして、日々、自転車の楽しさを初心者サイクリストに伝播している。
公式サイト LINKAGE CYCLING