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イベントレポート

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2015年4月21日(火) 19:00~20:00

浜口 玲央(はまぐち れお) / 東京健康クリニック 院長

がん予防のためにできること
~がんと生活習慣の関係~

日本人の2人に1人ががんに罹患し、3人に1人ががんで亡くなると言われています。がんになるのは生まれつきと思われているかもしれませんが、それは正しくありません。遺伝はがんの原因のおよそ5%程度であり、90%は 生活習慣であるということがわかっています。がん細胞は正常細胞とは異なる代謝で生きています。甘いものやカロリーの摂りすぎが肥満や糖尿病の原因になるように、がんが育ちやすいからだの環境があります。今回、東京健康クリニック院長の浜口氏をお招きし、がん細胞に特有の性質とがんの予防と生活習慣の関係についてお話しいただきました。

「がんになりにくい体」はつくれる

病院勤務時代は呼吸器内科医として「主に肺がんを診てきた」という浜口玲央氏。現在院長を務める東京健康クリニックでは「がんになりにくい体づくり」、「がんに負けないからだづくり」を目標に、がんの「検査」と「予防」、それに「がんの炎症・代謝を介したアプローチによるがん診療」に取り組んでいるという。

「メインはクリニックの仕事。他には企業の監督医としてがんの遺伝子検査を担当したり、籍を置く東京大学大学院では副作用の少ない抗腫瘍薬の臨床研究に取り組んでいます」

「がんになりにくい体づくり」はもともと「師匠である京大名誉教授の和田洋巳先生が提唱しているもの」。このセミナーでは症例やデータを見ながら、そうした「がんに負けない体づくり」の方法をお話しいただいだ。

まずはがんの転移が見られた50代の患者2名の症例から、がんはいかにすれば「おとなしくなる」のか、あるいは悪化した場合の原因はどこにあるのかを確認してみた。1人目の直腸がんが肺転移した患者の場合は、「これ以上がん細胞が大きくなったら抗がん剤治療を」と主治医に言われた時点で浜口氏のクリニックを訪ねてきた。そこで半年間、食事を変えてもらったところ、がんの成長がとまったという。2人目の症例では「腎臓がんの治療後しばらく経ってから、経過観察中のがんがわずか4ヶ月で急激に多発肺転移してしまった」。理由として考えられるのは免役力の低下と炎症。その間に患った肺炎やインフルエンザが免疫のバランスを崩し、炎症を進行させ、がんを悪化させた可能性がある。

この症例からわかることは、①食事によってがんはおとなしくなる・予防できる ②免疫力の低下ががんを悪化させる ③不要な炎症ががんを悪化させる といったことだ。

食事は糖分と塩分に注意

そもそも「がん」とはいったい何なのか。

「和田先生の言葉を借りると、〈がんというのは自分の体がつくってしまったもの〉です。日々の食事や生活習慣が体の体質を変えてがんをつくってしまうのです」

実際、がんの原因を見てみると、「喫煙」が30パーセント、「食事と肥満」が30パーセントと、生活習慣が大きく関与している。その次に高いのが「運動不足」や石綿やアスベスト被害などによる「職業要因」。一方、「遺伝要因」による発がんは全体の5パーセントとなっている。

「よく、うちはがん家系だから危ないと言う人がいますが、遺伝子が原因でがんになる人は10人に1人もいません。そう感じるのは家族だと生活習慣が似ているからなのですね」

遺伝要因を含めて「自分では努力してもどうしようもないもの」は約10パーセント。残りの9割は本人の心がけ次第で「変えることができるもの」。ひらたく言えば、食事や運動などの生活習慣で体は変わるのだ。

「大事なのは適正体重を維持することと食べるものに注意すること。体重はBMIで21から23。身長170センチの男性なら63キログラム、150センチの女性なら50キロが目安。運動は1日30分以上することが理想的です」

食事は「高カロリー食品や甘い物は控える」。食品を選ぶときは100グラムで125キロカロリー以下のものを買う。避けるべきは、スナック類やファストフードのメニュー、赤身肉やベーコン、ソーセージなどの加工肉、スイーツ、チーズやヨーグルトといった乳製品など。体によいのは野菜や根菜、果物、穀類、豆類、鶏のささみなどの脂肪の少ない肉や魚など。甘い物がいけないのは「がん細胞は糖分を取り込んで生きている」から。体内の血糖値が上がれば、当然がんができたり成長したりするリスクは高くなる。

もうひとつ、気を付けたいのは塩分。がん細胞は代謝のときに塩に含まれるナトリウムと交換で乳酸を排出する。つまりナトリウムが多い環境はがんにとってポンプを回すのに都合のいい環境といえる。このポンプをとめるには「今のところ塩分摂取量を減らすしかない」。日本人はこの塩分摂取量が中国に次いで2番目。平均すると1日あたり10グラム摂取している。これは明らかに摂取しすぎ。世界保健機関(WHO)では1日5グラム以下にすることを推奨している。塩分を減らすことは日本人全体の課題だ。

「生活習慣の違い」が「がんのリスクの違い」となって表われる

がんをつくらない体にするのに有効なのはやはり野菜。「毎日5種類、400グラム以上の野菜をとっている人にはがんになる人が少ない」という。野菜は多くの抗酸化物質やビタミンを含み、体内をアルカリ性にする。酸性を好むがん細胞にとって野菜は苦手な相手。同じ植物性食品のキノコ類にも免疫力を高めてくれる効果が期待できる。

アルコールは「飲まない方がいい」のは当たり前。飲むにしても男性ならビールでコップ2杯、女性はその半分程度に抑えるべき。ごはんは血糖値の上がりやすい白米より玄米がおすすめだ。食事や生活習慣の改善がうまくいっているかを知りたければ、血液検査を受けて採血データを見ることだ。白血球数なら5,000から6,000以上(9,000くらいまで)、好中球とリンパ球の比率は1.5以下、CRPは0.05以下が理想的、というふうに食事や生活習慣が数字になって表われてくる。

他に知っておきたい「がん予防のためのポイント」は「サプリメントよりも食事から栄養を摂る」ことや「育児は母乳で行なう」、「がんの治療歴のある人は専門家による栄養指導を受ける」など。むろん、喫煙は厳禁だ。「タバコには数千種類の発がん物質が含まれているだけではなく、タバコは炎症を起こし、がんを育てます」

最後に見比べてみたのは66歳の女性と46歳の男性の検査データ。体重も生活習慣も「理想的」な女性のがんリスクがもっとも低いAなのに対し、「肥満傾向で運動不足、肉食で野菜はちょっとだけ。濃い味が好きで酒飲みでヘビースモーカー」である男性のリスクはD。このままでいけば5年以内にがんになる確率が高い。このデータを見ると、がんは生活習慣病だということがよくわかる。

「まとめると、がんを予防するためには、医学用語で言う『がん微小環境』をつくらない、つまり自分のからだの環境を変えること。それを決めるのは食事や運動などの生活習慣です」

浜口氏の「夢」は「がん診療の考え方を変えていくこと」だという。

「これまでは、がんと診断されると抗がん剤や手術や放射線治療をただ受け身でやるしかなかった。そうではなく自分でできることもいろいろあるのです。食事や生活習慣を変えて治療を受けることで、さらに治療効果が増します。そのお手伝いがしたいですね」

講師紹介

浜口 玲央(はまぐち れお)
浜口 玲央(はまぐち れお)
東京健康クリニック 院長
1977年神奈川県生まれ。金沢大学医学部卒業後、平塚共済病院(呼吸器科)にて勤務。その後、東京医療センター(呼吸器科)、武蔵野赤十字病院(呼吸器科)を経て2013年より現職。日本内科学会認定内科医、日本呼吸器学会呼吸器専門医、日本がん治療認定医機構がん治療認定医。