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イベントレポート

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2015年4月25日(土) 14:00~16:00

金 裕美(きむ ゆみ) / 秘湯探検家

至福の絶景秘湯旅

歩いてしか行けない山の中の温泉や、船でしか辿り着けない離島に湧く温泉、大絶景の野天風呂など日本には息をのむような、「美しい秘湯」がたくさんあります。今回のd-laboセミナーでは、入念な下調べが必要な難所から手軽に行ける温泉まで、数々の秘湯を巡った温泉愛好家、金裕美氏をお招きし、秘湯の魅力について自ら撮影した写真や動画を交えながらご紹介いただきました。秘湯だけでなく温泉地での地元の方との交流や、自身が出演した温泉旅行番組でのエピソードもお話しいただき、『秘湯』を身近に感じる機会となりました。

秘湯探検は「私にとっては宝探し」

平日の顔はOL。土日ともなれば愛車を駆って全国の隠れた名湯を巡っている「秘湯探検家」の金裕美氏。テレビ東京の人気番組『極旅』などメディアでも活躍中の金氏に日本各地の「絶景秘湯」を案内してもらおうという今回の企画。土曜日の午後に開催されたセミナーは、一般の参加者はもちろん、趣味を同じくする多数の温泉ソムリエ有資格者が集まっての楽しい場となった。

日本人にとって温泉はなくてはならないもの。新聞の調査によると温泉入浴はマッサージやアロマテラピーをおさえて「ストレス解消の第一位に選ばれている」という。温泉に入れば、誰もがリラックスして癒される。「20代半ばから温泉にハマった」という金氏も、最初は普通の人と同じように温泉に入ることそのものに魅力を感じていたという。

「それが、秘湯ばかり行っているうちに、だんだんと温泉に入ること以外のことも楽しくなってきたんですね」

徒歩でないと行けないような山奥の秘湯を訪ねるには、当然困難が待ち受けている。そうしたことを繰り返している間に「温泉をゴールにしてその過程、探検を楽しむようになっていたんです」。そんな秘湯巡りは「私にとっては宝探し」。セミナーの前半は、その「宝探し」についてお話しいただいた。

「宝探し」の1つめは、式根島の御釜湾海中温泉。大潮の日の干潮の時間にしか現われないというこの温泉に金氏が向かったのは冬の2月。船をチャーターしての海中温泉訪問は危険と隣合せだった。温泉のある入江は激しい波が打ちつける岩場の海岸。桟橋はないので最後は泳いで渡るしかない。冬の荒れた海が一瞬静まった隙を突いた時にウェットスーツを着用し泳いで上陸した。高温の硫黄泉の源泉には海水を混ぜて適温にしてから入浴。船はチャーターするまでに「10件ほど電話で問い合わせたけど全部断られた」というし、その1隻だけ応じてくれた船も現場に着くと船長に「危ないから帰ろう」と諭されたほど。それでも諦めずに念願の温泉への入浴を果たしてしまうところはまさに「秘湯探検家」だ。

「もちろん、危険を感じたときは引き返す。あきらめるのも勇気です」

2つめの「宝探し」はその一例。万座にある「お湯の川=銅粉の湯」を訪ねたときは、猛吹雪の中を2時間以上かけて目的地に辿り着いた。そこで待っていたのは凍っていた川。温泉は見つけたが温度は23度。さすがにこのときは「入りたい」と叫ぶ温泉ファンの魂を押しとどめて引き返したという。

温泉旅が与えてくれる「地元の人たちとの出会い」

「ハードな話がつづいたので3つめはほのぼのとしたお話をしたいと思います」

舞台は和歌山県の古座川町。ここでは共同湯の管理人と親しくなり、地元の人たちと山奥に湧いている「柚ノ木谷の源泉」を訪ねた。湯舟は持参したビニールプール。森林浴もかねての入浴は最高だった。

「でも、本当に言いたいのはそれじゃないんです」

一番の宝物は、このときに生まれた「地元の人たちとの御縁」。宿では地元の人々に囲まれて「鹿のすきやき」や川で獲れるモズクガ二などを堪能した。「窓を開けてみて」と言われて外を見ると、河原には「たった1人の来客をもてなすため」の竹灯篭が並んでいた。美しいライトアップに感動した。秘湯を旅するということは、同時に「普通では味わえない旅の醍醐味」を味わうことでもあるのだ。

秘湯探検は国内だけではない。海外にも行った。フランスのバルネア温泉ではピレネー山脈を望む絶景露天風呂を満喫した。雇ったタクシーの運転手はカメラマンがわりに写真を撮ってくれたばかりでなく、「日本から有名なブロガーが取材に来た」と施設と交渉して入場料をただにしてくれたという。

北海道の薫別温泉(くんべつおんせん)は「熊の恐怖と戦いながら」、廃道となった林道を歩いて訪ねた。セミナーのつい前の週には「2年間かけてさがしていた兵庫県の妙見さんの湯に入ることができました」。これはある地区に住むたった3軒の家が執り行っている年2回のお祭りのときにのみ開放されるという温泉。ネットにもろくに情報がない中、幾度も通ってつきとめた温泉は鉄分豊富な「金色の湯」。温泉を管理する主催者はいきなり訪ねてきた金氏をこころよく迎え入れ、祭りに参加させてくれた。

「みなさんも温泉に行かれたら、観光だけではなくぜひ地元の人とのいい出会いを見つけてほしいと思います」

女優2人との『極旅』も「宝物」

温泉が与えてくれた「出会い」はこれだけではない。後半は「『極旅』の裏話」。『極旅』は、滝や棚田など、その道のマニアがタレントを案内するといった旅番組。金氏が担当しているのはもちろん「秘湯」。案内の相手は「温泉好き」である女優の芦川よしみと根本りつ子。ここでは、テレビ取材に難色を示す秘湯の宿との「交渉」や、撮影時の苦労話を開陳。温泉というと「極楽」のイメージだが、秘湯巡りはやはりハード。マイナス7度の中を浴衣にコートを羽織って訪ねた「標高2000メートルの雲上の露天風呂」、「朝5時起きで入った」という「水道水くらいの温度の非加熱源泉」、「途中に沢渡りや湿地帯がある徒歩40分の野湯」と、女性でなくても音を上げそうな「秘湯探検」を、2人の女優は嫌な顔ひとつ見せずに笑顔でやってのける。

「よしみさんもりつ子さんも本当に素敵な方。スタッフも含めて、私にとっては『極旅』は本当に宝物です」

ラストは圧巻といえる「至福の絶景秘湯」。北海道の新得町にある「天然の打たせ湯」から、「絶景といえばこれ」という九州は薩摩硫黄島の東温泉まで、これまで訪ねた秘湯のうち約100ヶ所を一挙紹介。こうした人里離れた秘湯巡りではGPSや硫化水素計が必需品。中にはすでに立ち入り禁止となった箇所もあるし、宿でも残念ながら現在は休業中といったものがある。驚くべきは、日本にはガイドブックに載っていないような秘湯がたくさんあること。しかもその多くは人の手で加工されていない湧き出たままの新鮮な湯。

セミナー後に控える今年のGWは「トカラ列島の秘湯を探検する」という金氏。「夢」は「絶景温泉をもっと歩いて、みなさんに読んでもらえるようなフォトブックや本をつくること」だという。

「こんな温泉があるんだ、と本を介していつまでも覚えていてもらえたら嬉しいですね」

講師紹介

金 裕美(きむ ゆみ)
金 裕美(きむ ゆみ)
秘湯探検家
大阪の会社に勤める傍ら、これまでに海外を含む全1600ヶ所以上の温泉を巡った。旅館・共同浴場だけでなく、険しい山奥や自分で地面を掘って入る秘湯をも楽しむ“温泉 ツアーコンダクター” “温泉マニア”として記事掲載、TV出演等多数。
温泉ブログ「YOOMI’S 至福温泉日記★」