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イベントレポート

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2015年4月25日(土)12:00~13:00/14:00~15:00

中野 拓哉、岡崎 秀一 /

知っておきたいご当地食材!"湘南はちみつ"を食べよう

江の島を擁し、観光地としての印象が強い湘南・藤沢だが、農業が盛んであるという意外な側面も。そんな中でも特別なのが「湘南はちみつ」。これは辻堂東 海岸の花の蜜からできた100%天然の希少な「はちみつ」のこと。本講座では中野養蜂園四代目、中野拓哉氏をお迎えし「湘南はちみつ」の生産、商品化までの道のりなどについて語っていただく。また、湘南はちみつと、湘南はちみつを使用したスイーツ(御菓子処 丸寿が製造、販売)の試食も。お一人でもお子さま連れでも楽しめる内容となった。

ミツバチの知られざる生態

d-labo湘南の周辺には子育て世代が多く、住宅街が広がっている。そんな環境の中で養蜂業を営んでいるのが中野養蜂園の中野氏だ。今回のセミナーは、藤沢をはじめ湘南地域に密着した無料情報紙「フジマニ」とのコラボレーション企画として、編集長の三浦氏を進行役に迎え、住宅街の真ん中でつくられている中野養蜂園の「湘南はちみつ」について、お話をうかがった。

まずは、はちみつの基礎知識から。ミツバチから採取できるものは、はちみつ、ローヤルゼリー、花粉(ビーポーレン)、プロポリス、ミツロウ。それぞれミツバチの栄養源になったり、巣を維持していくために必要なものだったりするわけだが、このうちはちみつは、ミツバチが集めてきた花の蜜が、巣箱にいっぱいになったところで、遠心分離機にかけて採取する。

「中野養蜂園では、店の裏に巣箱が5箱設置してあり、そこからはちみつを採っています。一箱にミツバチが約8万~10万匹いますが、そのうちの働きバチが、巣箱から飛んで行っては、近隣の花の蜜を集めてくるわけです。ミツバチの行動範囲は、巣から半径約2kmですから、ここ、d-labo湘南も、うちのミツバチの行動範囲内ですね。このあたりには野生のミツバチはほとんどいないはずなので、公園や庭先でミツバチを見つけたら、それはほぼうちのハチです」

春には藤の花、タンポポ、菜の花、アザミ、アカシア、ラベンダー、クローバー。夏にはヒマワリ、シイノキ、コスモス、ガーベラ、ナツメヤシ、バジル、ヨモギ。広い公園や学校、庭のある住宅も多いこの地区には、思いのほかたくさんの種類の花が咲いていて、春から夏にはミツバチたちも蜜を集めて回るのに忙しい。さらにミツバチは、体に花粉をつけて花から花へと飛ぶので、受粉も助けている。

「花が咲いていると、『たくさん蜜がとれそうだな』と、ついミツバチ目線で見てしまいます(笑)。もしミツバチがいなくなったら、受粉がされないので、スーパーマーケットから野菜や果物が消えてしまう。ミツバチによって受粉したイチゴは、人工的に受粉させたものに比べて、形がとてもキレイなんだそうです。ミツバチは植物にとっても人間にとっても、欠かせない存在なんですね」

1日に3000個の卵を生み続け、長くて8年生きるという女王バチのことや、巣の中にいるほとんどのハチは卵を生むための産卵管が毒針に変化したメスの働きバチで、生まれてからの日数によって、卵の世話、巣のメンテナンス、蜜の受け渡しなど仕事が完全分業制になっていること、外に出て蜜を集めるのは寿命が残り2か月くらいになったハチであることなど、ミツバチの社会性についてのお話も興味深く、参加者たちからは驚きの声も上がった。

100%天然の湘南はちみつが誕生

中野養蜂園は、小学校の目の前にある。住宅地の真ん中にミツバチの巣箱があって、そこからはちみつをとっていると聞くと意外な気もするが、近年、市街地や住宅地でミツバチを飼う都市養蜂は世界的に盛んになっており、有名な「銀座はちみつ」をはじめ、パリのルーヴル美術館の屋上で養蜂が行なわれていたり、N.Y.でもミツバチの飼育が許可されるなど、話題を呼んでいる。中野氏も、銀座で活動している養蜂家に勧められ、挑戦したのだという。

「湘南はちみつ」は、中野養蜂園のミツバチが周辺に咲く花々からせっせと集めた蜜でできている。100%天然のものなので、味わいもそのときどきで変わってくる。「春」と「夏」とにわけてあり、夏の湘南はちみつのほうが色味が濃く、味わいにもコクがあるという。生産量は天候に左右されるが、だいたい年間400kgほど。1匹の働きバチが1回に持って帰る蜜の量が0.04~0.07g、1000~2000回往復してようやく小さじ1杯になることを考えると、感謝の気持ちがわいてくる。

「はちみつの水分量は20%程度。糖度85%で、酸性ですから、くさらない。ピラミッドの中から出て来た3000年前のはちみつも食べられたほどです。私のところでも、ミツバチたちが一生懸命集めた蜜を横取りしたら(笑)、あとはゴミをとるだけで、何の手も加えません」

地元の人たちにとっては、自分の家の庭や、いつも通る道の街路樹など、身近な花からはちみつができているわけで、親しみもわく。今年の春の分も、そろそろ販売開始とのことだ。

地元和菓子店とのコラボレーション

中野氏が湘南はちみつをつくり始めたきっかけのひとつに、「地域の飲食店のメニューやお菓子などに使ってもらって、湘南の名物ができれば」という思いがあった。それが叶ったのが、地元の和菓子店「丸寿」の「湘南はちみつカステラ」。2014年の販売開始以来、人気商品となっている。ここで、丸寿ご主人の岡崎氏が登場。セミナー参加者には「湘南はちみつカステラ」が配られ、お話をうかがいながらの試食タイムとなった。

Facebookを通じて知り合ったという中野氏と岡崎氏。湘南はちみつを使って何かつくろう、という話になったが、岡崎氏は「カステラに使われるはちみつの分量はそんなに多くないので、違いが出るかどうか心配だった」。しかし、実際につくってみると、ピタッと味があい、トントン拍子で商品化へ。

「春の湘南はちみつで作ったカステラは柑橘系の香りがします。花によって風味も変わってきます。また、春と夏とでは、はちみつの粘りも違うので、カステラの膨らみ方も異なってくるんですよ」

いただいた「湘南はちみつカステラ」は、しっとり、ふわっとした食感と、ほんのりとしたはちみつの甘さが上品で、大人から子供まで好まれる優しい味わい。完全“ご当地”産のカステラのおいしさに、セミナー参加者も思わず頬をゆるめる。

これからも湘南はちみつを使った商品を開発していきたい、と語る二人。どんなおいしさが生まれるのか、楽しみに待ちたい。

最後に、中野氏に夢を聞いてみると、「近所に駄菓子屋を復活させたい」とユニークな答え。

「子供にとって、駄菓子屋って、社会の入り口だったと思うんです。自分のお小遣いを持って、何を買おうか迷って、決断して、支払って、お釣りをもらって。そういうことが、今はできなくなってしまった。子供が気軽に買い物できる駄菓子屋を近所につくりたいな、と思っています」

講師紹介

中野 拓哉、岡崎 秀一
中野 拓哉、岡崎 秀一

中野 拓哉(なかの たくや)
中野養蜂園 代表
昭和40年から辻堂の住宅街で営業を続ける「中野養蜂園」の4代目。静岡県や神奈川県で養蜂、自家採蜜したはちみつをはじめ、世界の様々なはちみつや、はちみつの関連商品を製造、販売。また辻堂東海岸の住宅街の真ん中に蜂箱を置いての「湘南はちみつ」の生産に着手し、低カロリーで体にやさしい自然甘味料としての「はちみつ」の可能性を日々探究している。

岡崎 秀一(おかざき しゅういち)
御菓子処 丸寿 代表
辻堂羽鳥にある和菓子店「丸寿」の3代目。和菓子の領域にとどまらず、さまざまなお菓子作りに挑戦する藤沢市のお菓子作りの第一人者。湘南はちみつを使用した「湘南はちみつカステラ」は2014年より製造、販売を開始し、瞬く間に人気商品に。日夜新商品の研究、開発に励んでいる。