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イベントレポート

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2015年6月21日(日)14:00~16:30

櫛浜 健治(くしはま けんじ) / 丸山珈琲 東京セミナールームマネジャー

自分だけの「好き」を見つけよう
~スペシャルティコーヒー・カッピング編~

自分だけの「好き」や「こだわり」、「軸」を持つことの意義。これをコーヒーの持ち味が一番ダイレクトに伝わるテイスティング方法である「カッピング」体験を通じ、参加者みんなで考え、共有していった。普段あまりコーヒーを飲まれない方、苦手と思われている方に有意義なセミナーであった。

“飲んでおいしい” スペシャルティコーヒー

軽井沢の名店として20年以上にわたり愛されている『丸山珈琲』。現在、長野県を中心に9店舗(8月14日に鎌倉店がオープン)を展開し、2012年には世田谷区内に東京第1号店となる尾山台店をオープン。そこから徒歩5分ほどの場所には直営のセミナー施設も完備。一般消費者からプロのバリスタまで、対象に合わせた各種のセミナーを開催し、コーヒーの魅力を発信している。

今回の講師は、そんな丸山珈琲の直営セミナー施設「東京セミナールーム」でマネジャーを務める櫛浜氏。コーヒーの持ち味が最もダイレクトに伝わるカッピングを通じて、バラエティー豊かなスペシャルティコーヒーを紹介していただいた。

「『スペシャルティコーヒー』の定義は国によって異なることもありますが、ごく簡単に言ってしまえば“飲んでおいしいコーヒー”のことです。その“おいしさ”を実現するには、生産、収穫、運輸、焙煎、抽出という全ての段階で適切な作業が行われる必要があり、徹底した品質管理とトレイサビリティが重要なポイントになってきます」

日本のコーヒー市場に占める割合は約5%と言われていますが、ここ数年は消費者意識の高まりを反映して、その流通量も増加傾向にあるという『スペシャルティコーヒー』。なかでも貴重なのが「カップ・オブ・エクセレンス(Cup of Excellence:COE)」という称号を持つ最高級品。各生産国の品評会で高得点を取った、いわばコーヒーのピラミッドにおけるキャップストーンにあたる存在だ。今回のカッピングは、そのCOEに入賞したコーヒーもテイスティングできる、ぜいたくな体験となった。

トライアングル・カッピングに挑戦

ワークショップは参加者4~5人ずつの3グループに別れて実施。まずはカッピングの基礎から教えていただく。

「カッピングはバイヤーが豆を買い付ける際の品質チェックの方法でもあり、その場のカップをなるべく同一条件下に置くことが必須とされています。出来るだけ人の手=技術を介さずにコーヒーそのものの品質を見ることが重要なので、ペーパーなどを使ってドリップすることなく、挽いた豆に直接お湯を注ぎます」

ほかにも「抽出時間はストップウォッチで正確に計測する。カップを変える度にスプーンを水につけて洗い、必ず紙で水を切ってから次のカップに移る」など、具体的な方法をレクチャーいただいた後、第1セッションがスタート。3つのカップの中から、他の2つとは異なる1つを見分ける「トライアングル・カッピング」に挑戦することに。

初めに粉の状態で「ドライアロマ」を、次に熱湯を注いで「クラストアロマ」をチェック。そこから4分経ったところで、カップの表面に浮いた層を壊す「ブレイク」を行い、下に沈んだ粉も一緒に4回かき混ぜ、表面のカスを取り除く。ここまでがカッピングの下準備。整えられたコーヒーを温度変化に合わせ約15分間かけてテイスティングしていく。

この際、「最初から仲間外れの1つを探り出すのではなく、カップ毎に味や香り、口当たりなど、なんでもいいので感じたことを書き留めることから始めてください」と櫛浜氏。

「単純な好き嫌いや、他人にはわからない表現でも大丈夫。後から自分の中で答え合わせができるようメモを残すことが大切なんです」

そう促された参加者たちは思いおもいにメモを取り、最終的にグループ毎に“他とは異なる1つ”と感じたカップを発表。カップ①に票が偏ったが、果たして…。

「正解はカップ①。これはブラジル産のいわゆるコモディティコーヒーです。一方のカップ②③は、2014年ブラジル パルプトナチュラルCOE1位に輝いた『オウロ・ヴェルジ』というコーヒーで、オークション落札価格は1パウンド(約450g)=約50ドル。①は国際相場で考えると1パウンド=約1~2ドルなので、その差は歴然です」

櫛浜氏によると「『オウロ・ヴェルジ』は柑橘系の爽やかな酸味と、シルキーな口当たりが特徴で、①のコモディティコーヒーは渋味が強く、口の中がイガイガする感覚がある」とのこと。その言葉を受けて再度テイスティングしてみると、確かにその通りだと合点がいき、“答え合わせ”の大切さが感じられた。

バラエティに富んだスペシャルティコーヒーを体験

続く第2セッションでは9つのカップが用意され、①~③、④~⑥、⑦~⑨の3つのカップ毎に“他とは異なる1つ”を探し出すことにチャレンジ。第1セッションの「トライアングル・カッピング」を3セット行い、計6種類のコーヒーをテイスティングする。

カップ①~③はフルーティーで、④~⑥はチョコレート風味という具合に、3つの系統の大まかな違いはわかるものの、その中での細かな差異については確信が持てない参加者たち。櫛浜氏からの「①~③は口の中の質感に注意して」「④~⑥は苦味を感じるタイミングがポイント」といったアドバイスに耳を傾けながら、和気あいあいとした雰囲気でテイスティングは進行。先程と同様に、グループ毎の“他とは異なる1つ”を発表したところで、6種類のコーヒーそれぞれのプロフィールについて解説いただいた。

「最初はエチオピア『ハチラ』が2つと、同じくエチオピアの『ドリマ・ゼデ・グジ』が1つ。ハチラがトロッとした口当たりなのに対し、グジは軽やかな質感なのがわかると思います。次はグアテマラ『サン・ラファエル・ウリアス』が2つとコスタリカ『ドン・マーヨ・セドラル』が1つ。ウリアスがカカオ分の強いダークチョコレートのような苦味を最初に感じる一方、セドラルは液体に厚みがあって甘さが感じられますね」

この『サン・ラファエル・ウリアス』と『ドン・マーヨ・セドラル』はどちらも深煎り特有の苦味が強く、参加者からは「とくに違いがわかりにくかった」との感想も聞かれた。 「そして最後はケニア『ガチャタ』が2つと、2014年グアテマラCOE4位入賞の『ラ・フロリダ』が1つ。どちらも独特な華やかさがありますが、ラ・フロリダは一段と明るくフローラルな香りが特徴です」 正解発表とともに行われたレクチャーでは、各コーヒーの名前の由来や、コーヒーの実から生豆を取り出す生産処理の方法、生産国の事情まで詳しく解説いただき、150分間があっという間に終了。「今日(とくに後半)用意したコーヒーに明確な優劣はありません。テイスティングで気になったものがあれば、今度はぜひ丸山珈琲に足を運んで、ゆっくりその味わいを楽しんでみてください」という櫛浜氏の言葉でセミナーは締めくくられた。

講師紹介

櫛浜 健治(くしはま けんじ)
櫛浜 健治(くしはま けんじ)
丸山珈琲 東京セミナールームマネジャー
2005年よりシアトル系カフェにてバリスタとして働き始め翌年からバリスタの大会に参加。
2009年には第1回ジャパンラテアートチャンピオンシップにて優勝し、日本代表としてワールドラテアートチャンピオンシップに出場(世界第4位入賞)。
2010年からは軽井沢創業の丸山珈琲に勤務。小諸店店長、製造勤務を経て、現在東京セミナールームにてセミナーの管理、社内・社外でのセミナー講師を務める。