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イベントレポート

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2015年7月12日(日)14:00~16:00

HONZ(ホンズ) /

夏休みにはこれを読め!!
~HONZおすすめする2015上半期ベストノンフィクション~

気が付けば半年が過ぎ、もうそこまで夏休みが迫っていた7月12日。このあたりで上半期を振り返ってみようではないか、とHONZメンバーが集合した。折しも7月15日はサイト設立から4周年の節目に「月刊・成毛眞」と呼ばれるほど出版している代表を頭に、新たなメンバーのお披露目あり、旧メンバーの罵り合い、HONZの素顔を見る機会となった。HONZだからこそのオススメ本は、クセのある本が目白押し。d-labo二子玉川のHONZコーナーを見つめつつ、どの本を買おうか悩ましい時間を過ごす2時間であった。

総勢14名による本談義がスタート!

d-labo二子玉川に足を踏み入れると、まず目に入る、壁一面を埋める約1500冊の蔵書。著名なロングセラーから、通常の書店ではあまり見かけない版元のものまで、硬軟織り交ぜた、さまざまなジャンルの本たちが好奇心を刺激してくれる。

この魅力的な蔵書をセレクトしているのが、独自の視点で、主にノンフィクションの「おすすめ本」を紹介している書評サイト『HONZ』。1か月約100万PVを誇る人気サイトだ。

今回は、7月15日に設立4周年を迎えた『HONZ』から、個性豊かなレビュアーが集結。副代表の東えりか氏の進行のもと、各レビュアーの「2015年上半期 私の最も〇〇な1冊」と「夏休みに読む本」を紹介していただいた。メンバーは、編集長の内藤順氏から、現役大学生の峰尾健一氏までの総勢14名。あみだくじで決めたという席順に従ってズラリと並んだ様子は、なかなかの迫力だ。

前半は「2015年上半期 私の最も〇〇な1冊」。トップバッターの新井文月氏からは、いきなり「最も『HONZ』で紹介してはいけない本」という変化球が投じられ、一筋縄ではいかない『HONZ』らしさを発揮。続く内藤氏は「私の運命を変えた1冊」として『男のハンバーグ道』(土屋敦著/日本経済新聞出版社)を持参。「前編集長の土屋さんが、この本を書くのにかまけて『HONZ』の仕事をなおざりにしていたもんだから、“もらい事故”みたいな格好で私が編集長に指名されてしまった。まぁ、そういう意味で運命を変えた1冊ですね」と、青天の霹靂で編集長に抜擢された内幕を語り、会場を湧かせた。

17歳から自身の書評ブログをスタートさせ、今年の3月から『HONZ』レビュアーに加わった冬木糸一氏は、「上半期、一番売った本」として、『この世界が消えたあとの科学文明のつくりかた』(ルイス・ダートネル著・東郷えりか訳/河出書房新書)を紹介。

「最近、“世界の終焉”を扱った本がちょっとしたブームですが、本書はオカルトではなく、あくまでもサイエンスからのアプローチを試みています。一旦失われてしまった文明を再び作り出すために何をする必要があるのか。例えば、医療面では“手を洗うことの重要性”を説き、食料面では“塩の作り方”をレクチャーする。そういった、数々の具体的・根本的な例を提示した、いわば最速の文明復興マニュアルです」

『HONZ』と自身のブログを通して、すでに「100冊以上は売った」という本書について、「多くの人がこの本を読んでいたら、きっと映画『マッドマックス 怒りのデス・ロード』のような、荒廃しきった未来がやってくることはないはずです」という冬木氏の言葉が耳に残る。

バラエティに富んだ「最も〇〇な本」

都内の出版社に勤務する足立真穂氏が取り上げたのは、「最も手に入れて嬉しかった本」の『夜の木』(バッジュ・シャーム他著・青木恵都訳/タムラ堂)。中央インド・ゴンド民族のアーティストによる絵本で、聖なる木にまつわる神話的な世界が描かれている。

「2008年のボローニャ・ブックフェアで、この本に出会った田村さんという方が、日本でもぜひ出版したいと思い、自ら版元を起ち上げてしまった」というエピソードを持つ本書は、手漉き和紙にシルクスクリーンで1枚ずつ丁寧に刷られたオール・ハンドメイド。しかも、「刷りを重ねる毎に表紙の絵が変わる」という懲りようで、入荷即品切れを繰り返し、現在最新第5刷の出来待ちという状況だとか。

そんな入手困難な1冊は、独特な紙の手触りやインクの匂いなど、モノとしての本を手にする喜びに満ちた、まさに芸術品のような風格を漂わせていた。

ほかにも、「最も冷や汗をかいた本」「レビューしたかったけど全く手に負えなかった本」「うすうす感づいていたけど、はっきりと解らせてくれた本」など、多彩な切り口で次々と本が紹介されていく。レビュアー同士この日が初対面というメンバーもいるうえに、誰がどんな本を紹介するのか判らない状況は、どこかスリリングかつエキサイティング。会場の参加者は自分の好みに合いそうな本を吟味しつつ、レビュアー同士の丁々発止を大いに楽しんでいた。

『HONZ』メンバーが「これから読む本」とは?

後半は「夏休みに読む本」について。「やはり夏休みには戦争関連のものを1冊は読みたい」という麻木久仁子氏が紹介したのは、『海軍の日中戦争:アジア太平洋戦争への自滅のシナリオ』(笠原十九司著/平凡社)。

「日中戦争から日米開戦への流れの中では、とかく陸軍が悪者的な扱いを受けて、海軍はスマートな印象で語られることの方が多かった。でも、本当にそうなの?それって恣意的に作られたイメージなんじゃないの?ということを検証している意欲的な1冊…だと思って買いました」

学術系クラウドファンディングサイトを運営している柴籐亮介氏が選んだ『アカデミック・キャピタリズムを超えて:アメリカの大学と科学研究の現在』(上山隆大著/エヌティティ出版)は、ズバリ「“研究”と“お金”についての本」。

「現在、日本の生命科学の研究現場に、税金ではない民間からの資金が集まっている状況があります。これは1960年代のアメリカと同じ。その後、70年代にバイオベンチャーが台頭、90年代にはバイオバブルは崩壊を迎えます。その流れを知ることで、今後の日本のアカデミズムにおける“お金”の問題の指針に出来ればと考えています」

14名分の「夏休みに読む本」が出そろったところで、最後に内藤編集長から一言。

「4年の月日の中で、どうしてもレビュアーが同質化してきているという自覚があり、出来るだけ新しい書き手に参加してもらおうと画策している最中です。多様性を大事にして、1月に1人のペースでレビュアーを増やしていく予定なので、ぜひ期待してください」

『HONZ』の今後から、ますます目が離せなくなりそうだ。

なお、当日、登壇したレビュアー、紹介された本、および詳しい書誌情報に関しては『HONZ』活動日記(http://honz.jp/articles/-/41613http://honz.jp/articles/-/41615)に掲載中。今回のセミナーには登壇できなかったメンバーの推薦本も紹介されているので、ぜひご覧あれ!

講師紹介

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HONZ(ホンズ)

文筆家、才能あふれるビジネスマンや学生、医学部教授、タレントなど20名前後が所属。小説等の創作を除くすべて-サイエンス、歴史、社会、経済、医学、アートなど、あらゆる分野の著作を対象とする。
公式サイト:http://honz.jp/
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