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イベントレポート

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2015年8月2日(日)13:30~15:00

増田 美信(ますだ よしのぶ) / 株式会社榮伸 東京本社 営業部 営業課長。

ランドセルの達人
~いいランドセルの見分け方~

色もデザインも多様化するランドセル。最近は店頭展開が年を追うごとに早くなり、売り上げのピークはなんと8月だという。4月の入学式に合わせ、かつては3月に終了していた販売期間もどんどん長くなっているそうだ。その理由は海外からの旅行客が品質の良いランドセルをお土産に購入するケースが増えたこと、また、口コミで評判の良いランドセルは早々に売れてしまうので早目に購入する人が多くなっているため。ランドセルは愛する子供や孫が小学校に通う6年間を共にする大切な存在。今回はランドセル製造メーカー(株)榮伸 東京本社 営業部 営業課長の増田美信氏を講師に招き、ランドセルの種類や選び方、お手入れ方法などをお話しいただいた。

ランドセルの種類

ランドセルは外縫い仕立ての「学習院型」と箱型に縫い上げて外に縫い代がない「キューブ型」の2種類に分けられる。

「学習院型」のサイズは、外寸 250mm×315mm(内寸 227mm×310mm)、「キューブ型」のサイズが、外寸240mm×310mm(内寸 235mm×310mm)。「学習院型」はA4サイズのクリアファイルがピッタリ収まり、「キューブ型」はそれより一回り大きなA4サイズのフラットファイルが収まる。

「学習院型と呼ばれるのは大正天皇が学習院へ入学されるときに当時の首相であった伊藤博文氏がこのタイプのランドセルを献上したためと言われています。キューブ型はコンパクトで内寸が広いので人気が高まっていますが、通常のミシンでは縫うことができず、加えて工程も多くて作るのに手間がかかるため、値段はやや高めです」

では、素材についてはどうだろう?

「ランドセルの素材は本革製と人工皮革製に大別されます。本革には牛革とコードバン、人工皮革はクラリーノ等があります」

コードバンとは馬のお尻の革のこと。非常に繊維が緻密で丈夫だがあまり量が取れないため希少性が高い。クラリーノとは(株)クラレ製の人工皮革を指す。

「牛革は人工皮革に比べて硬く、コシがあり型崩れしにくいという特長があります。一方、クラリーノは牛革に比べて軽さと防水性に優れ、ここ数年はクラリーノの占める割合が70~80%と非常に高くなっています」

本革のランドセルにはラミネート加工された牛革を、クラリーノのランドセルには何種類かを使い分けて使用することが多い。

クラリーノは種類が豊富で、たとえば軽さが特長のクラリーノ、風合いが特長のクラリーノ・F、表面が傷つきにくいクラリーノ・レミニカ、さらに耐傷性に優れたクラリーノ・タフロック、メタリック調のクラリーノ・リビュート等がある。

ランドセルの優れた機能と選ぶ際のポイント

増田氏が「ランドセルは日々進化しているバッグ」と言うようにランドセルの機能は年々進化している。

まず「立ち上がり機能の付いた肩紐」これは肩にフィットしてズレにくく、背中に隙間なくぴったりくっつくため、体感的に軽く感じられる効果がある。

次に「ワンタッチで閉まる錠前」もはや片手で開閉できることは基本であるそうだ。

「型崩れ防止の補強」 ランドセルが少し重くはなるが、上から押してもそう簡単に型崩れしない。

「ナスカンがワイドに、そして外れやすく」ナスカンはランドセルのサイドについており、子供たちが給食袋をかけたりする部分。この給食袋などが電車のドアに挟まって引っ張られ、事故につながるケースが多いため、ある程度の荷重がかかると外れるように工夫されているものもある。また、サイズも大きく取扱い易いように進化している。

「肩ベルトがワイドに」まっすぐではなく、肩ベルトを肩に沿うように裁断することにより、肩にかかる負担を減少。

「反射材が付いてより安全に」冠、大マチ、ベルトなどの反射鋲、本体ベルト、玉緑等に反射材を付けて安全性をアップ。

「背裏の工夫」背中は子供たちが汗をかきやすいところ。凹凸をつけて風通しを良くし蒸れない工夫がされている。

「大型のハンドル」従来の金具だけでなく、持ち手状のハンドルがついて持ち運びしやすくなっている。

このように日々進化を遂げているランドセルだが、具体的にどう選べばよいだろう?

「選び方のポイントは3つ。ひとつは信頼のできるお店で購入すること。2つ目はランドセル工業会の保証書(信頼と安心のマーク)が付いている物を購入すること。3つ目はできるだけ店頭で一度背負ってみることです」

ランドセルは毎日使用する物なので、壊れたり不具合が出て修理が必要になることもある。そのため、信頼のできる店で購入しておけば後々の対応が安心だし、必要であれば修理期間中に貸ランドセルを用意してくれる場合もあるというから、購入店にはこだわりたい。

また、引っ越しなどで購入した店が遠くなった場合や進物でいただいて購入場所がわからない時などは、保証書があれば記載された番号からランドセル工業会が相談に乗ってくれる。最近のランドセルは背中に密着するようにできているため金具等の当たり具合を実際に背負ってみることも重要ポイントのひとつ。

「新品のうちはランドセルの素材が勝ってしまうので、なじむまで少しルーズにフィットするよう調節してあげることも大切です」

手入れ方法とパターンオーダー

ほとんど毎日使用するランドセル。手入れはどうしたら良いだろう?

「基本的に人工皮革の場合は手入れ不要です。本革の場合は水分を嫌うので雨などで濡れたら柔らかな布で乾拭きして日陰で乾かしましょう。白革部が汚れたら少量のクリーナーと柔らかな布で拭いた後、少量のシリコン液を塗って被膜を作ってあげればOKです。白革部が硬くなったらほんの少し保革油を塗りこむとだんだん柔らかくなります」

既成品でもバラエティに富んだラインナップが揃っているが、さらにもっと自分好みのランドセルにしたい! という場合はパターンオーダーも可能だ。

今回は伊勢丹の例で説明をしていただいた。

「最初に学習院型かキューブ型か、ランドセルの型を選びます。次に牛革か人工皮革かを選択。そして本体のカラー・内装の柄・縁巻等・前ポケットのラウンドファスナーのカラーを10~11色の中から、冠の鋲を5種類の中から選択、さらに希望があればYベロのつまみにイニシャルを入れたり有料オプションとして大マチ部に刺しゅうを入れることができます。長く愛用する物なのでじっくりとこだわってみるのもいいでしょう」

さて、ここまでは新しくランドセルを購入するための話を伺ったが、もう使わなくなったランドセルを有効に活かす方法もあるのだ。

「2004年から使用済みのランドセルをアフガニスタンに送る活動を続けています。ランドセルと未使用の文房具は大歓迎で受け付けています」

時々ランドセルの内装に豚革が使用されている場合があり、宗教上の理由からそれらは除外。また、学校指定の鞄もNG。新品でもはさみや刃物は取り除いたりと念入りにチェックした後にアフガニスタンへ。

「海を越えたランドセルは海外でも愛用されています。しっかりした作りなので勉強机として利用する子供たちも。また、教育に対する親の考え方が進み、女子の就学率が増えてきているとの報告もあり、感無量です」

機能性に優れたランドセルは海外の目から見るとファッション性にも優れた素敵なバッグ。小学生だけが使うなんてモッタイナイ!とオシャレ雑誌に取り上げられることも。ランドセルの進化はまだまだ止まりそうにない。

講師紹介

増田 美信(ますだ よしのぶ)
株式会社榮伸 東京本社 営業部 営業課長。
鞄・ハンドバッグ等の総合問屋(株)松崎において、昭和52年より伊勢丹や東急のオリジナルランドセルの企画・販売に携わり、その後は高島屋やベネッセ等のランドセルの企画・販売も担当。平成22年度より、福島に自社工場を持つランドセルメーカーである(株)榮伸にて勤務。30年以上に渡り三越・伊勢丹オリジナルランドセルの企画・製造に携わっている。