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イベントレポート

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2015年9月20日(日)10:30~11:30

伊藤 憲男(いとう としお) / 毛髪診断士

第5回 プロと楽しむお街ゼミな~る 女性のイキイキ艶髪を手に入れる ~髪に優しいお手入れ方法~

今回のセミナーは「第5回お街ゼミな~る」の講座として開催された。「お街ゼミな~る」とは、静岡市の呉服町商店街が専門店の知識を活かし、ミニ講座を開催するイベントだ。
テーマはヘアケア。近年、育毛をサポートする商品が続々と発売されているが、使われている成分やケア方法についてきちんと理解し、使用している人は少数ではないだろうか。
そこで株式会社アデランス研究開発部に所属する毛髪診断士で、多岐にわたる研究開発プロジェクトリーダーである伊藤氏を講師に招き、「髪に対する正しい知識」や「髪と健康との関係性」などについての話を伺う。健康な髪でいつまでも若々しく元気な女性でいるためにはどうすればいいか、プロならではの視点からわかりやすくアドバイスしていただいた。

健康的な髪を保つために知っておきたいこと

髪は大きく毛幹と毛根に分けられる。毛根は毛乳頭、毛母細胞、色素細胞からなり、毛乳頭が受け取った血液中の栄養分を元に毛母細胞が分裂すると同時に、髪の色を決定する色素細胞も分裂し、縦に長く伸びていく。つまり健康な髪をキープするためには、材料となる血液中の栄養分と工場となる毛母細胞の働きが重要になる。また、植物とは異なり髪の毛(毛幹)は自ら修復できない。
頭髪の成長速度は1日に約0.35mm、1か月で約1cm、頭髪の数は約10万本、その寿命は約2~6年、直径は0.06mm~0.08mm、通常の抜け毛の本数は一日に100本、季節では特に秋に抜け毛が増加する。
ではどんな要因が髪にダメージを与えるのだろう?
まず、紫外線と乾燥。紫外線によりキューティクルが傷つき、乾燥によって髪の内部がもろくなるとキューティクルの隙間から内部の物質が流れ出してしまう。これを防ぐには日傘や帽子、髪用の紫外線防止剤などで髪を保護することが効果的だ。
次にドライヤーやヘアアイロンなどの熱によるダメージ。過剰な熱で髪が変形し、内部外部ともにダメージを受けてしまう。とはいえ、シャンプー後に濡れた髪を乾かさずにいることも良くないため、ドライヤーは20cmほど離して使用し、ヘアアイロンなども1か所に長時間かけすぎないようにすることが大切だ。
更に、ブラッシングのしすぎやシャンプー後の水分拭き取り時に髪をタオルでこすらないように気を付けよう。摩擦により髪の表面が損傷し、枝毛や切れ毛の原因になりやすい。髪がもつれて引っかかりやすいときには毛先から少しずつとかし、タオルドライは強く髪をこすらず、押さえて水分をとるようにすると良いだろう。
そして塩分や塩素、薬剤によるダメージ。
「海水に含まれる塩分やプールの塩素にはタンパク質を分解する力があります。海水浴やプールで泳いだ後はトリートメントなどで早めにケアするようにしましょう。また、カラーやパーマは同時施術を避け、1週間以上の間隔をあけるようにするのがおすすめです」
毛根から伸び始める髪は常に新しくまっさらな状態。健康な髪でいるためにはまずこの状態を保つ努力をすることが大切だ。そして髪は一旦痛むと元には戻らないため、傷んだ髪をそのまま放っておかないことが必要。枝毛ができてしまった毛先をカットするなど、こまめなケアを心がけよう。

脱毛の種類と要因

髪の悩みの中でも特に多いのが脱毛。男性だけでなく女性も悩まされるのが男性ホルモンの働きが活発になることによる脱毛で、これは遺伝による個人差が大きい。男性は20代くらいから、女性は女性ホルモンのバランスが不安定になる50代くらいから増加し、頭頂部を中心に髪が細くなるのが特徴。毛周期と言われるヘアサイクルが短縮し、5年で約3割の髪が減少する。この他、円形脱毛症(これは皮膚科で治療が可能)、妊娠・出産に伴う分娩後脱毛、内分泌疾患に伴う脱毛、抜毛症(ストレスなどから自分で自分の髪を抜いてしまう)、抗がん剤治療など薬剤による脱毛がある。
では、環境要因による脱毛とはどんなことだろう?
まず血行不足。これは髪の材料となる血液中の栄養分が届かないことによる。次にストレス。ストレスは髪の成長をコントロールする神経に影響するという。また、頭皮の過剰な脂や乾燥、髪の材料となる栄養分の不足などが挙げられる。
「頭皮の皮脂は髪や頭皮に潤いを与えてくれますが、一方でベタつきの原因になり、これが分解されるとニオイの元に、酸化して炎症すると痒み、フケ、抜け毛を引き起こします」
つまり脱毛を防ぐには頭皮のケアがとても大切なのだ。
「フェイスケアと同様、頭皮をケアするという考えが育毛につながります」
では髪の毛のために心がけたいこととは?
「髪の毛も体の一部、体の健康なくして髪の健康はありません。偏った食生活では髪のための栄養も不足しがちになります。」
次に、ストレスについて。
「ストレスは髪だけでなく肌や健康にも影響しますので、溜め込まないよう趣味を持つなど工夫してみましょう。」
最後に頭皮について。
「頭皮はいわば髪の大地。洗いすぎるのも良くありませんが汚れが残らないよう正しいシャンプーを実践しましょう」

豊富な選択肢・脱毛への様々な対処法

脱毛への対処法として育毛・増毛・植毛・ウィッグなどがある。
育毛への第一ステップはシャンプー。髪を洗う頻度は毎日、朝よりは夜がおすすめだという。
「最近のシャンプーは保湿効果が高く、刺激が少ないものが多くなっています。そのため毎日シャンプーしても以前よりダメージは少ないです。また、その日の汚れをその日のうちに落とすという意味で洗うタイミングは夜がいいと思います」
基本は2度洗い。お湯で予洗いをし、たっぷり泡立てたシャンプーで髪全体を洗ったらよくすすぐ。次に少なめのシャンプーで頭皮をマッサージするように再び洗い、コンディショナーやトリートメントなどで髪の状態を整え、こちらも充分にすすいだ後、頭皮を中心に早めに乾かす。
次に育毛剤。使用感や香りなど自分に合うものを選び3~6か月間は使用してみること。朝と晩、頭皮が乾いているときにマッサージをしながら使用すると効果的だ。
育毛は今ある髪を大切にする方法であるため個人差が大きい。分け目やつむじなど部分的に気になる場合は結毛式増毛法も。数本単位の毛束を自分の髪に結ぶ方法で生え際など目立つ部分は少ない量を選択できるなど、色や量を自由に選べるメリットがあるが、一度に増やせる量に限度がある。また、自毛が抜けたりすることで消耗しやすい。
自分の髪を最大限に生かす方法がヘアトランスプラント(植毛術)。髪のある頭皮を部分的に切り取り頭皮へ植える方法だ。成功率が高く自分の髪で増やせるため、欧米ではかなりポピュラーになってきているが、外科手術のため日本ではまだ抵抗感のある人が多い。
確実に思いどおりに増やしたい人にお勧めなのがウィッグ。かつらや義毛等とも呼ばれ、ネットなどのベースに髪を植えてそれ自体でヘアスタイルを作ることができる。最近では人工毛が主流だそうで、固定には専用のストッパーを使用する。
ウィッグの良い点は、手軽で確実、自然でわかりにくい、朝のセットが楽、毛染めの回数を減らすことができる、簡単にイメージチェンジが可能である、といったこと。逆に良くない点は、装着時に違和感があることが多い、メンテナンスが必要、耐用年数が4~5年(使用状況により異なる)などが挙げられる。
「オーダーメイドで自分にピッタリのものを作ることも可能ですし、その日から使いたいという場合はレディメイドでも様々な種類が販売されています。どちらを使用する際も、ヘアスタイルや髪の質感などが自分に合っているか、納得するまでサンプルなどで確認することが大切です」
また、ウィッグを清潔に保つためには週1程度で洗うことが必要。洗った後のセットなど、取扱いが簡単なものを選ぶことも長く愛用するためのポイントに。
「髪の悩みが大きいと消極的になったり、毎日を楽しく過ごせない、とおっしゃる方もいらっしゃいます。でも、最近は様々な解消方法があり、これらを上手に利用することで活躍の場が広がるかもしれません。髪は長い友達。これからも自分の髪を大切にして同時にヘアスタイルも楽しんでください」

文・土屋 茉莉

講師紹介

伊藤 憲男(いとう としお)
伊藤 憲男(いとう としお)
毛髪診断士
株式会社アデランス 研究開発部所属。
内閣府認定公益社団法人日本毛髪科学協会認定資格「毛髪診断士/認定講師」を取得。東京大学共同研究スカルプケアサイエンス担当。
製品開発のかたわら、セミナー講師、雑誌・TVなどマスメディアにも出演。