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イベントレポート

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2015年9月27日(日)15:00~17:00

松田 光一、南 まい、恩田 倫孝 /

旅大学オープンキャンパス「旅を仕事にするためのキャリア学」

「旅大学」とは、世界一周経験者が集まる会社「TABIPPO」が主催する新しい学びの場。「旅を学ぶ、旅から学ぶ」をコンセプトに、全国各地でさまざまな講座を企画している。d-labo湘南では2回目の開催となる今回は、「旅を仕事にするためのキャリア学」と題し、グラフィックデザイナーの松田光一氏、旅人タレントの南まい氏をゲストに招いてトークショーを行なった。

510日間にわたる世界一周旅行が人生を変えた

「旅で世界を、もっと素敵に」を理念とするTABIPPOが提案する学びの場「旅大学」。今回は、「旅するポエマー」を自称するTABIPPOの恩田氏を進行役に、d-laboでは「夢を叶える絵」をテーマにしたセミナー講師としてもお馴染みのグラフィックデザイナーの松田氏、旅人タレントとしてメディア出演や著述業などで活躍中の南氏をゲストに迎えてのトークショーを行なった。

恩田氏は、2013年から翌2014年にかけて世界一周をし、帰国後、TABIPPOに入社。Webやイベント、ものづくりなどを通じて、旅の楽しさを伝えている。今回の「旅大学」は、キャリア学がテーマということもあり、参加者のほとんどが社会人。北海道から来た人も数人いるなど遠方からの参加も多く、会場は期待感に満ちあふれていた。

まずは「旅大学」恒例の、参加者同士のアイスブレイク。近くに座っている人同士、数人で、自己紹介をする。旅という共通の話題があるため、初対面でも盛り上がり、短い時間ですっかり打ち解けた雰囲気となった。

「それではトークショーを始めましょう。まずはプレゼンテーションとして30分ずつ、お話しいただきます」

恩田氏の紹介を受けて、南氏がマイクを持つ。世界一周の旅を2回経験し、現在も1年の3分の2は海外で過ごすという南氏。2014年の飛行機搭乗回数は、なんと80回!しかし、最初からこんなふうに旅を仕事にできるとは思っていなかった、と語る。

「実は私は、25歳まで、女優という、今とはまったく別の人生を歩んでいました。出演作は、ゾンビと戦う女子高生役とか(笑)。でもある日、所属事務所が突然解散する事態になってしまって。当時の私は、心身ともにまいっていたので、この機会に仕事を休んで、以前から夢見ていた世界一周の旅に出よう!と思い立ち、ゾンビ映画のギャラで世界一周航空券を買い、まずはブラジルへ飛びました」

ブラジルでリオのカーニバルに参加するところから始まった南氏の世界一周の旅は、510日間にも及んだ。世界一周航空券の有効期限は1年間だが、出発から1年経った時点ではイエメンにおり、そこでチケットを捨て、そのまま旅を続けたという。

「いつまでに帰ろうとか、帰ったら何をしようとか、目標も目的も何もたてずに、ひたすら旅を続けました。好きなことしかやらない、好きなものしか食べない。『自分は何がしたいのか、何が好きなのか』という決断が続く日々です。一人だから考える時間もものすごくある。そういう毎日を続けていくと、自分が研ぎすまされるというか、クリアになっていくんです。そのうち、地球ってすごい、とか、神様ありがとう、なんて気持ちがわいてきて(笑)。そんなある日、ヒマラヤの前で瞑想していたら、突然、芸能界時代の知人から国際電話がかかってきて、『今どこにいるの?帰って来たら、本を出さない?』って話になったんですよね」

この出来事について、南氏は、「本を出そうと思って旅をしていたわけではなかった。ただ、旅をし、さまざまなものを見て、いろんなことを考えるうちに、自分の中から『この経験と想いを表現したい、伝えたい』という欲求が自然に湧いてきて、そうしたら国際電話がかかってきた」と語る。結局、帰国後に出版した著書「独女世界放浪記」が話題となり、南氏は、旅を仕事にする人生を送ることとなったのだ。

“ライフワーク”のために“ライスワーク”も大切にする

「旅を仕事にする」という今回のテーマについて、南氏は少し厳しい意見を述べる。

「趣味と仕事の違いは何か、を考えてみると、趣味は単なる自分の“エゴ”。でもそれが、自分の利益だけではなく、他人へプラスの影響を与えられ、社会的に貢献できたとき、初めて仕事として成立する、と私は思います。たとえるなら、“カラオケ好き”と“歌手”の違い。お金は、周りへの影響と、社会に貢献した対価としていただくもの」

実際に、南氏は「世界一周したので本を出したいんです」という相談を受けることがあるというが、そういう考えを「今や、世界一周している人なんて珍しくない。それだけでお金にはならない」と一蹴する。「どのくらい本気で旅をしたか。人にインパクトを与える旅人でないと、仕事には結びつかない」

南氏のプレゼンテーション終了後にマイクを受けて話し始めた松田氏は、趣味と仕事の違い、についてこう語る。

「僕にとっては、それが“絵”なわけですが、もの心ついたときから現在に至るまで、僕はずっと、好きな絵を描いているだけの人。昔からやっていることはまったく一緒、アウトプットしているものは変わらない。でも、さっき南さんがおっしゃった、カラオケ好きと歌手の違いという話で思い出したことがあります。世界遺産をテーマに絵を描くようになってから初めて、熊野古道センターというところで開催した個展でのこと。子どもや大人たちと一緒に熊野古道を歩いてスケッチをする、というイベントをやったのですが、すごく喜んでもらえたし、自分自身もとても楽しくて、『これがやりたかったことなんだ』と思った。このとき初めて、自分が絵を描くことで、何をしたかったのかということがわかったんですよね」

「カラオケ好きが歌手に変化した瞬間ですね」と南氏が同意する。

「ただ描きたいものを描いているだけでは食べていけません。僕の場合、アートは“ライフワーク”で、デザインが“ライスワーク”。芸大卒業後にデザイン会社で働いた後、アーティストとして独立し、最初の1年はアートの仕事だけをやろうと決めたんですが、そうすると、『絵を売らなければ』というプレッシャーがすごくて、全然楽しくない。そこで、特技としてアウトプットできる“デザイン”を仕事にしようと思ったんです。企業などから依頼を受けて、財布などの小物に自分の作品をデザインすることもあります」

南氏にとっては、ツアーコンダクターの仕事が“ライスワーク”にあたる。松田氏は、「好きなことを仕事にしたいなら、まずは自分が生きて行くための最低月収を打ち出してみるといいですよ。家賃・光熱費払って、食費がいくらで…って計算して。それがわかっていればやっていけるし、気持ちも楽」とアドバイスする。

世界一周についていえば、松田氏の場合、きっかけは仕事がらみだった。「6大陸にある世界遺産の絵を商品に使いたい」という依頼を受け、「ではせっかくなので行ってきます」と出発。カッパドキア→エジプトのピラミッド→パリ→モン・サン・ミッシェル→マチュピチュ→グランドキャニオン→グレートバリアリーフを巡ったが、その期間はわずか26日間。

「行きたい場所に行って、スケッチして、帰国して色をつける。この繰り返しで、世界の文化、人々の姿を、ひとつの絵に表現していきたい」

自分自身の力で体を整えていくことの大切

その後の質問コーナーでは、「今まで訪れたなかで一番好きな国は?」「旅に持っていくおすすめアイテムは?」「今の仕事の大変さは?」などについて、お二人がそれぞれ回答。旅先でのユニークな体験談も飛び出し、会場は大いに盛り上がった。

今後のキャリア、夢として、南氏は、「世界を旅して痛感するのは、日本人にいかにグローバルな視点が足りないか、ということ。こんなに素晴らしい国なのに、周りとの調和がとれていない。仕事をするときでも、世界の中の日本なんだよ、という感覚、グローバルマインドをもっともってほしい。私が語り、伝えることで、人々がグローバルなビジョンを持つきっかけづくりになれば」

松田氏は、「世界の美しさを表現した作品を集めた美術館を作りたいですね。Web上には5年以内に、建物としては、死ぬまでに実現できたらいいな、と思っています」

最後に恩田氏が、「旅大学では、こうしたキャリアの話以外にも、さまざまなテーマで講座を開いています。ぜひいろんな回に参加してみてください」と挨拶してセミナーは終了。夢を新たに、今日から歩き出そうと思える、内容の濃い2時間だった。

講師紹介

松田 光一、南 まい、恩田 倫孝

松田 光一(まつだ こういち)
グラフィクアーティスト
世界遺産を巡りながら、壮大な景観を独特の表現手法で描く画家。作画には、ロットリングやアクリル絵具、写真やコンピューターを用いる。世界遺産図展と題する展示会やトラベルプロダクトの企画、旅に関する講演や夢を描くワークショップなど、幅広く活動する。大阪芸術大学芸術学部デザイン学科出身。

南 まい(みなみ まい)
旅人タレント
タレント・女優として、TV「ショムニ」や、映画「さくらん」「岸和田少年愚連隊」等に出演。25歳の時、所属事務所の解散をきっかけに、世界一周ひとり旅を南米ブラジルからスタート!約55カ国、100ヶ所以上の世界遺産を周り、510日間の旅から無事帰国。書籍「独女世界放浪記」(ポプラ社)を出版 し、旅番組レポーターや、メディア、ラジオ出演の他、各種旅のイベントでのトークライブやセミナー、講演、旅コラム提供、バックパック開発なども行なっている。2012年、NHK BS1 「エルムンド」海外レポーターとして番組ロケで約70日間の世界二周目も達成!ワンワールドHPにて世界一周体験レポート掲載中。旅程管理主任者資格を保有し、現在ツアーコンダクターとして、ひと月の約3分の2を海外で過ごす。訪問国数70カ国以上。

恩田 倫孝(おんだ みちのり)
1987年生まれ。新潟出身。慶応大学卒業後、商社入社。社会人開始と同時に、シェアハウスを始める。2013年8月に世界一周へと出発。アメリカの砂漠での奇才フェス「バーニングマン」を旅のスタートに、900kmにも及ぶスペイン巡礼、ブラジルサルバドールで5週間太鼓の練習をして、カーニバルへ参加。
アフリカ大陸では、バスで大陸を縦断するオーバーランドツアーに参加。全10回の連載を「ordinary」にて執筆。