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イベントレポート

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2015年10月3日(土)14:00~17:00

長沼 里奈(ながぬま りな) / 映画作家

映画をつくろう! 第1回:脚本作り編

時に感動を、時に喜び、怒り、悲しみを。さまざまな感情を私たちに呼び起こしてくれる存在、それが「映画」。夢研究所d-labo湘南での今回のセミナーは、「映画作り」。脚本、絵コンテ、カメラワークなど、映画作りの世界は分からないことばかり。本セミナーでは、映画作りのノウハウをレクチャーし、実際に作品作りをしていただいたのち、上映会まで行なう。参加者の皆さまに、映画監督になっていただく全2回のセミナー。第1回の今回は、脚本作りについて学んだ。

映像作品と記録映像の違いは“喜怒哀楽”の有無

講師の長沼氏は、北海道・札幌を拠点に活動する映画作家。高校1年生から映画を撮り始め、これまで独学でやってきた。映画制作だけでなく、映像や写真の演出、ミュージックビデオなども手がけるほか、たとえば「画家を主人公にした作品を、森の中のアトリエで上映する」など、作品世界を再現するようなユニークな上映会を企画し、映像の魅力を発信し続けている。

「まず最初に考えたいことは、『映像作品とは何か?』ということ。たとえば、友だちとの旅行で、風景や食事の様子を動画で撮影した。これは、思い出用の“記録としての映像”です。しかし、ここにあるものを加えると、単なる記録映像が“作品”になるんです」

卒業を機に離ればなれになる友だちと一緒に旅行したとする。そのとき、「寂しい時には、この旅行を思い出してね」という思いを込めて映像を撮ったなら、それは映像作品になるのだ、と長沼氏は言う。

「相手に伝えたいことがあって、その思いがこもったものが、映像作品として残ります。もちろん、きちんとストーリーを作って撮ったものも作品です。しかし、普段、たとえばお子さんの運動会を撮影したものでも、何を伝えたいかを考えながら撮影したり編集したりすると、映像は感動的になったり面白くなったり、悲しいものになったりする。喜怒哀楽のある物語、つまり作品になるんです。」

企画から上映まで、映像作品はこう作る

では、実際に映像作品はどのように作られていくのだろう。

「準備して、撮影して、編集する。これが映像制作の流れです。料理にたとえるとわかりやすいのですが、『準備』は、どんな人に食べてもらうのかを想像しながらレシピを考える。『撮影』は、素材を用意する。『編集』は、食材を調理、味付けして、どんなお皿に盛るのかを考える、ということです」

まずは『準備』。労力的にも時間的にも、映画製作の半分以上を占める。1週間の撮影期間に対して、1年以上前から準備する、ということもあるそうだ。どんな映画をどうやってつくるのか、ストーリーだけでなく、出演者やスタッフ、予算やスケジュールなど企画をたて、脚本を何度も何度も(短い作品でも6~7回は)書き直す。脚本が書き上がる前に、同時進行で撮影準備を行なう場合は、絵コンテをつくり、撮影に必要なものを準備する。撮影場所を探すロケーションハンティング(ロケハン)では、制作スタッフは細かいところまで気を配らなければならない。

長沼氏はここで、教材として、自身が監督した短編映像『re:design myself』の予告編を上映。

「たとえばこの、『カラフルなリボンの中を女の子が彷徨うシーン』で、私は『部屋いっぱいにリボンを吊るしたい』と言いました。しかし制作スタッフが『監督、そんなにリボンを買うお金はありません』と(笑)。撮影カメラマンとも相談し、『3m×3mくらいのスペースがあればできるだろう』ということになり、無事、このシーンが撮影されたわけです。そんな小さなスペースで撮られたとは思えませんよね? このように、監督の思いを叶えるために、技術スタッフが知恵を絞ってくれるのです」

準備が終わったら、いよいよ『撮影』。このとき、最も重要なのは、「決められた日数の中で問題なくすべてを撮りきること」。10分ほどの映像を丸1日(25時間)で撮影したという『re:design myself』のメイキングを見せていただくと、キャストもスタッフもまったく無駄のない動きで、現場は緊張感に包まれつつも、真剣な表情の合間にも笑顔がこぼれることも。濃密で充実した時間が流れていると感じた。

最後は撮影した映像を『編集・仕上げ』。上映会を行なって、作品は完成する。

「つまり、『映像制作は大変、だけど面白そう』ということです。今回は、皆さんが監督となって、作品作りに挑戦していただきます」

機材として使うのは「iMovie」というアプリ。iPadなら撮影~編集までできるし、iPhoneで撮影+Macで編集することもできる。長沼氏と、湘南T-SITE内の「Apple Authorized Reseller」スタッフが、参加者に使い方を説明。撮影した映像を分割し、順序を入れ替えたり、組み合わせたりする編集作業が、ドラッグするだけで簡単にできる。試しに20秒程度の映像を2パターン撮影し、組み合わせてみるなど、しばらく「iMovie」を操作し、使い方を覚えていく。

キャッチコピーやテーマを考え、脚本を作る

ここからは、3週間後の作品上映会に向け、長沼氏が参加者に脚本作りを指南。実際に企画をたてるときに同じようなものを使っているというA4の紙が、全員に1枚ずつ配られる。「タイトル」「監督・脚本」「キャッチコピー」「色」「出演者」「テーマ」「ストーリー」と、項目が並んでいる。

会場内には、キャッチコピーを書いた紙が10枚並べられていた。
「かなしいときも うれしいときも 今日もここへきている」
「なんだかとっても気になる○○」
「ドキドキする○○」
「この想いよ、とどけ」
「この気持ち、誰にも見せない でも気づいて」
「とけてしまいそうな時間」
「走った、まるで何かに追われているように」
「誰にも言えない」
「いつもこう、わたしっていつもこうなの」
「夢のような時間」
参加者はこの紙を見ながらイメージをふくらませていく。他にも、「バンザイ」「幸せ」「ありがとう」「がっかり」「ぞっとする」など、感情にまつわるキーワードを書いた紙も膨大に並んでいて、創造のヒントになる。

30分ほどの熟考の後、男性参加者が代表して、どんな映像を考えているか発表することに。

「感情は“辛い”からだんだん“楽しい”になっていくようなお話を。主人公の男性と、彼が大切にしているぬいぐるみとの交流を描いてみたい」

「テーマは、失っていくものと生まれるもの。コップの中の氷が溶けていく様子と、撮影者の感情の変化や日常を表現していきます」

「約束があるのに仕事が終わらない女性の焦り。コーヒーを淹れてほっとひと息、頑張ろうと思ったらまた仕事を頼まれて…、その感情の変化を、映像を組み合わせて表現したい」

長沼氏は、それぞれの脚本案に対して具体的なアドバイスをした後、「どの作品もとても面白そうです!巨匠たちの傑作を楽しみにしています!」と講評。3週間後の第2回セミナー「上映会編」に向け、期待をふくらませつつ、セミナーは終了となった。

講師紹介

長沼 里奈(ながぬま りな)
長沼 里奈(ながぬま りな)
映画作家
高校卒業後、映画制作だけでなく「作品世界の体感」をコンセプトに、映画上映とライブやパフォーマンスなどを組み合わせた独特な上映スタイルで、道内外で活動している。『丹青な庭』(2002)は、撮影当時20歳で、現場スタッフにプロを迎えて制作し、「AsianCinema&Culture Festival2002」(南仏・リヨン)にて招待上映された。その他、CMやTVドラマ、ミュージックビデオ、クラシックコンサートの映像演出、大学での講師・ワークショップなど、幅広い映像制作活動の中で様々な表現者とコラボレートしながら、「映画表現」を追求している。HP