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イベントレポート

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2015年10月20日(火)19:00~21:00

宇治田 みのる、浦山 哲也 /

夏を終えたここからがサーフィン本番

風・波、自然のサイクルに身をゆだね、自然との調和をサーフボードと全身で乗りこなすサーフィン。ビジュアルだけでは伝えきれない文化と歴史がそこにはあります。春夏秋冬、朝日が昇りそして暮れていく。そんな多彩な自然の表情を楽しめるサーフィンをあらゆる角度からみてきたお二人に、秋からはじめるサーフィンの素晴らしさと魅力をお話しいただきました。

サーフィンのルーツは古代ポリネシアのカヌー漁

この日のセミナーはトークセッション形式。講師はテレビ番組等のメディアでサーフィンを紹介したり、サーフィン世界大会のMCなどを務めてきた宇治田みのる氏と、トッププロとして3年連続JPSA(日本プロサーフィン連盟)グランドチャンピオンに輝いた経験を持つ浦山哲也氏。今回は両氏に、サーフィン自体の楽しさはもとより、その歴史や2020年の東京オリンピックへの展望、スポーツという枠に留まらないカルチャーとしての一面など、サーフィンの持つさまざまな魅力について語っていただいた。
サーフィンと言えばマリンスポーツの代表格。その歴史を辿るとルーツは古代ポリネシア。タヒチやハワイなど、太平洋の島々では西暦400年頃から「サーフィンの原型」と呼ばれるようなものがあったという。
「ポリネシアの人たちは手漕ぎのカヌーに乗って漁に出ていました。彼らは陸に戻って来るときに波に乗ると楽だということに気が付いたんですね。あれ、これおもしろいから遊びでもやってみるか、と。そこで生まれたのがサーフィンだったんです(宇治田氏)」
山を見て登りたくなるように、波があれば乗ってみたくなる。それが人間というもの。日本にも大正期の海水浴場の写真を見ると「板子乗り」というまな板のような板を使って波に乗る遊びがあったことがわかる。しかし、こうした「サーフィンの原型」はその発祥地であるポリネシアでは西洋文化の流入とともに途絶えたという。ヨーロッパの宣教師たちはサーフィンを打ち消すべきポリネシア文化のひとつと見なし、長い間行為そのものを禁じた。そこに変化が表われたのが20世紀初頭。ハワイでは、観光産業の勃興とともにワイキキビーチでサーフィンをすることが黙認されるようになっていく。そのときに登場したのがハワイの英雄である水泳選手のデューク・カハナモク。オリンピックの金メダリストであり、世界選手権17連覇という偉業を成し遂げた彼はサーファーでもあった。カハナモクは金メダリストとして招待された国では、必ず現地でサーフィンをしたという。浦山氏が10代の頃に修業を積んだオーストラリアもそうした国のひとつ。今では「ほとんど国技(浦山氏)」と言っていいほどサーフィンの盛んなオーストラリア。カハナモクがこの国を訪れたのは1920年代。デモンストレーションで披露してみせたサーフィンにオーストラリアの人々は感動し、その後、一気にサーフィンは国中に広まった。日本でも戦後しばらくしてサーフィンが流行。幾度かのブームを経て多くの人に愛好されるスポーツとして社会に定着し、現在ではきたる2020年東京オリンピックにおいて追加種目の最終候補5種目に選ばれている。

ひとつとして同じ波がない、そこに「ハマる」

サーフィンのいいところは「単純でシンプル」な点。サーフボードとウエットスーツ、それにボードと自分とをつなぐリーシュコードの3つがあればいつでも始められる。ボードはゆったり乗れるロングボードから、技を競うのに適したショートボードまで、「絶対に皆さんのスタイルに合うサーフボードがあります(宇治田氏)」。楽しみ方は「波に乗る」というただそれだけ。が、一度でも乗れたらその楽しさに「ハマる」。もちろん、自然が相手である以上、難しい面もある。「サーフィンが難しいのは、同じように見えてひとつとして同じ波はないところです」と宇治田氏。1日の中でも潮の満ち引きや風向きで波の大きさやコンディションが変わる。サーフィンとはその自然を相手に「技を決めたいという人間のエゴを出す」スポーツ。プロとして活躍しつづけてきた浦山氏にしても「今まで100パーセントのライディングというものはしたことがない」という。
「どのスポーツでもそうですが、これができたらまた次に何かやりたいという欲が出るんですね。だから、もっとやりたい、次はあの波に乗りたい、とつづけてこられたんです」
サーフィンの映像でよく見るチューブライディング。大きな波が割れる直前にできるチューブ=空洞の中を滑るのは「サーフィンの醍醐味」だ。まわりはすべて水なのに呼吸ができる、そんなチューブの中にいるとき、サーファーは「地球とひとつになったような感覚になる」。波の下に下りて行ってチューブの中に入った瞬間は「すとんと音がなくなる」。耳に入るのは「パキッとガラスが割れるような音」。実はそれこそが「本当の水の音」だ。こんなふうに陸上では決して味わえない感覚を味わえるのがサーフィンの魅力だ。コンペティターとしてプロを目指すのもいいし、ただ海に入ってリラックスするだけでもいい。「どんなサーフィンでもサーフィン」というのが宇治田氏、浦山氏に共通する思いだ。そしてサーフィンには、ファッションやサーフミュージックといった付随する「カルチャー」もある。海という自然が相手だからか、知らずに五感が磨かれていくし、自然環境にも目が向く。だから、「サーファーはけっして海にゴミを捨てません(宇治田氏)」。

2020年東京オリンピックの追加種目候補に

始めると、見えなかった景色が見えてくるのがサーフィン。宇治田氏、浦山氏が多くの人にサーフィンを勧めるのは「うまくなってください」と言っているわけではない。海に触れることで見えてくる大切な何か。サーフィンはそれを教えてくれるからだ。一方で純粋に「うまくなりたい」と願うなら「人が少なくなるこれからの季節がいい(浦山氏)」。
「冬は人がいないところで努力する時間。辛いけれど努力したぶん進化するはずです」
注目の東京オリンピックでの採用は可能性大。今年は全米オープンで日本人の大原洋人選手が優勝するなど「追い風」も吹いている。自然相手ゆえに競技条件が変わるサーフィンの場合、「人工波を立たせるウェーブプールでの開催」も検討が必要だろう。ウェーブプールのメリットは、誰でも安全にサーフィンを楽しめるところ。宇治田氏の「夢」はこのウェーブプールを実際に造って、そこを入口に「子どもたちに自然に触れてもらうこと」だ。そして浦山氏の「夢」は「より多くの人にサーフィンの魅力に触れてもらうこと」。
「始めたいと思ったら、一度サーフショップにトライしてください。経験がないけどサーフィンを始めたい。そう言って相談すればお店側もしっかり応えてくれるはずです」

講師紹介

宇治田 みのる、浦山 哲也
宇治田 みのる、浦山 哲也

宇治田 みのる(うじた みのる)写真左
DJ・音楽プロデューサー・ラジオパーソナリティー
これまでに数多くのFM番組のDJやTV番組の司会、ドラマや映画出演等を経験し、DJ・クラブという観点からの若者への影響だけではなく、幅広い年齢層への影響力を持っている。サーフィン・スノーボード等のアウトドアスポーツにも精通しており、サーフィン世界大会のM.Cやブランドのオーガナイズ等、幅広い独自のスタイルを展開中。

浦山 哲也(うらやま てつや)写真右
JPSA公認プロサーファー
JPSA公認プロサーファー。1998,1999,2000の3年連続JPSAグランドチャンピオンに輝く偉業を達成。世界サーキットを含めた戦歴と経験を活かし、現役生活を終えてからは国内サーフボードメーカーのモデル開発や選手育成コーチングなど、日本サーフィン界の底上げに注力する。