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イベントレポート

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2015年11月1日(日)15:00~17:00

清水 直哉、渡邉 賢太郎 /

旅大学オープンキャンパス
「旅とキャリアの繋げ方―世界を旅して分かった僕らの働き方―」

「旅を学ぶ、旅から学ぶ」をコンセプトに、全国でさまざまな講座を企画している「旅大学」。主宰しているのは、世界一周経験者が集まって立ち上げた会社「TABIPPO」である。
d-labo湘南で「旅大学」が開催されるのは、今回が3回目。「TABIPPO」代表の清水氏と、大手証券会社を退職して2年間の世界一周の旅に出たというユニークな経歴をもつ渡邉氏の対談形式で、「旅とキャリアの繋げ方」をテーマに、興味深いお話をいただいた。

リーマン・ショックで感じた「お金とは?」という疑問

d-labo湘南では3回目の開催となる「旅大学」。今回も社会人を中心に、多くの参加者が集まり、会場は熱気に包まれた。まずは、恒例のアイスブレイク。参加者同士、近くの席の人と4人一組になり、名前や出身地、好きな国や行きたい国などについて自己紹介を5分ほど行なった後で、「旅大学」を主宰する清水氏が改めて挨拶をする。

「今回は、旅の経験を人生にどう繋げていくのか、ということをテーマに、旅とキャリアについて考えていきたいと思います」

清水氏の今日の対談相手である渡邉氏は、大手証券会社に4年勤めた後、退職し、2年間にわたる世界一周の旅へ出発。帰国後、『なぜ日本人は、こんなに働いているのにお金もちになれないのか』というタイトルの本を出版し、話題を呼んだ。旅に出たのは、「お金のことをもっと知るため」だったという。

「入社2年目のときにリーマン・ショックが起こり、顧客のお金があっという間に半分になる、という事態を目の当たりにしました。ある建築会社の社長さんも、銀行からお金が借りられなくなって、会社をたたまなければならなくなった。海の向こうで誰かがハチャメチャなことをした結果、日本で真面目に働いていた人がこんな目にあわなければいけないなんて…。それがきっかけになって、お金のことをもっとちゃんと考えたいと思ったんです」

3年をかけて顧客の資産を元に戻した渡邉氏は、周囲の反対を押し切って会社を辞め、旅に出た。上海では証券取引所、ロンドンでは中央銀行と、観光ルートはまったく無視。お金について考え続けた。アルゼンチンでは、国境をまたいだ瞬間に、通貨の価値が半分に。「通貨の価値は絶えず変動している。あっという間に、お金は紙きれになるんです。旅をすると、そのことがよくわかる」

そして、渡邉氏はひとつの結論に達する。
「お金は本来、人間の幸せのために作られたもの。お金やリソースが、きちんと分配される仕組みづくりが必要だ」

お金があれば幸せ?旅とお金と仕事の関係とは

現在、渡邉氏は、社会起業家を応援するプログラム「SUSANOO(スサノヲ)」のプロジェクトリーダーとして活躍している。「環境や教育、福祉、医療などの分野で、“社会のためになることなのだけれど、これまでの常識や尺度ではお金がつかないようなこと”を、実現させるお手伝いをしています。起業ではもうからない、行政では発見しにくい、いわゆる市場の失敗分野ですね」

清水氏も、学生時代に「TABIPPO」を始めたときには、「そんなものはビジネスにならない、と言われた。でも、社会に出て仕事をするうちに、ビジネスの仕組みみたいなものがわかってきたので、『TABIPPO』だけでやっていけると思い、独立したんです」

「『SUSANOO(スサノヲ)』に参加している起業家たちも、みんな、好きなことを仕事にしようとしている人たちですが、それは、案外難しいこと」だと渡邉氏も同意する。働くことと生きること。仕事と趣味。両立させたいと思う人は多いが、ある参加者からは、「好きなことをするためにハードワークしてお金をもうける。でもそうすると忙しすぎて自由がなくなる。旅に出たいのに出られない」という悩みもあがった。

「いくらくらいのお金が、いつまでに必要なのか、をはっきりさせること。それがわからないままだと、ハードワークが続くだけになってしまう」と渡邉氏。「お金は、人生の選択肢を増やしてくれるけれど、選択肢が多いこと自体が、幸せだとはいえない。その手前で、自分が何をしたいのかを考えることが大切なんです」

清水氏も渡邉氏も、「経済的な豊かさ=幸せ、とは限らない、ということを、世界を旅する中で実感した」と語る。世界最貧国といわれるバングラデシュのスラム街で見た、温かな人間関係。インドの貧困層の子供たちの、キラキラと輝く瞳。清水氏は、「日本人は、パスポートひとつでどこでも行ける。経済的にも恵まれていて、できないことなんてあまりないはずなのに、幸せそうに見えないのはどうしてだろう」ということを、旅をしながら考えたという。

「日本人は、世界一、お金のことを知らない」と渡邉氏は断言する。「たとえばイギリスでは、中央銀行の博物館の入り口に、インフレーションの仕組みを気球に例えて教えてくれる、子供向けのアトラクションがあるんです。お金の仕組みを作って来た国の人は、教育によってお金のことを学ぶし、途上国の人は、お金は不安定なものだということを経験から学んでいる。だけど、日本人は、お金の話をする機会がないまま、社会に出てしまっている」

「年収があれば幸せになれると思ってしまっている」と清水氏も同意。「お金はひとつの手段でしかないのに」

「お金って、“信頼の代替手段”なんです。逆に、信頼関係が築けていれば、お金を介在しなくてもいい。ハードワークで旅費を稼ぐことと同様に、旅先で泊めてくれるような友達をつくることも、旅を実現させるための行動なんですよね」という渡邉氏の言葉は、旅を夢見る参加者たちの心に響いたはずだ。

“人と違うこと”にこそ価値がある時代に

清水氏と渡邉氏は、これからの時代の働き方、生き方についても、共通する考えを持っている。それは、「他と“違う”ことこそ重要」ということ。

「旅をして気づいたのは、これまでは、“人と同じことが、人より優れてできる”ということが良しとされてきたけれど、世界がつながって、世の中の仕組みが変わってしまった現代では、“あなたにしかできないことは何か”を問われ始めている、ということ。人と同じことをしているのは、もはやリスク。すぐに誰かにとって代わられてしまいます」と渡邉氏が言えば、清水氏も「大量にあるものは安く、希少なものは高い、ということ。特に日本では、人は、レールから外れることが少ないですよね。だからこそ、オリジナリティが評価される。旅に出る、ということでもそうです。情報があふれればあふれるほど、そこに実際に行った、ということに価値が出る」と語る。

旅をキャリアにつなげるために必要なのは、圧倒的なオリジナリティと、共通言語―英語など語学だけでなく、プログラム言語も含む―だ。インターネットのおかげで、場所に縛られない働き方ができるようになった今、旅とキャリアを繋げる方法は、ぐっと広がったといえる。

「やりたいことを、やりたいだけ、やりたい人と、やりたい場所で」。清水氏が自身の仕事へのスタンスをそう説明すると、渡邉氏も、「働き方の制限をとっぱらうことができる時代。やりたいことをやらないのは、損」だと、力強く参加者たちの背中を押した。旅に出よう、やりたいことをやろう。一人ひとりの新たなる一歩への予感で、会場の温度も上がったように感じた、熱いトークセッションとなった。

講師紹介

清水 直哉、渡邉 賢太郎

清水 直哉(しみず なおや)
起業家/TABIPPO代表
東京学芸大学在学中に欧州一周や世界一周の旅を経験。帰国後にTABIPPOを立ち上げ、それ以来代表を務める。卒業後は大手WEB広告代理店である株式会社オプトに入社、ソーシャルメディア関連事業の立ち上げに参画する。入社2年目からの最年少マネージャーの経験などを経て、2013年11月に退職。TABIPPOを法人化して創業を果たす。TABIPPOは「旅で世界を、もっと素敵に。」を理念として活動。日本最大の世界一周イベント「TABIPPO2015」や、日本最大の野外旅フェス「旅祭2015」などを主催。2014年には旅のモノづくりブランド「PAS-POL」を立ち上げ、旅に出たくなる手帳「絶景手帳2015」、ウユニ塩湖日本初の本格写真集「UYUNI iS YOU」、「絶景ポストカード」なども発売。観光庁が主催する第1回「若者旅行を応援する取り組み表彰」にて奨励賞を受賞。

渡邉 賢太郎(わたなべ けんたろう)
NPO法人ETIC.プロジェクトリーダー/著述家
1982年生まれ。大分県別府市出身。立命館アジア太平洋大学卒業。 日本FP協会、認定AFP(=アフィリエイテッド・ファイナンシャル・プランナー)取得。リーマン・ショックを機に、三菱UFJモルガン・スタンレー証券を退職。2011年5月から2013年4月まで、2年間で40カ国を訪れる世界一周の旅に出る。旅のテーマは「お金とは何か?」。ピラミッドがある国エジプトではなく、お金という概念が生まれた国エジプト。ウユニ塩湖のあるボリビアではなく、投資と投機を生んだ国ボリビア。ビッグベンよりイングランド中央銀行。自由の女神よりウォール街。というように「お金」を巡る旅をする。帰国後、2013年8月より、NPO法人ETIC.に入社。Social Startup Accelerator Program『SUSANOO』のプロジェクトリーダーを務める。自分らしく生きる人々の挑戦が応援される社会をテーマに、次世代の起業家が育まれる「挑戦者の生態系」構築を目指す。特にソーシャルキャピタルマーケットと呼ばれる資金提供の枠組づくりにむけて奮闘中。著書に『なぜ、日本人はこんなに働いているのにお金持ちになれないのか?』(いろは出版)がある。