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イベントレポート

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2015年11月15日(日)14:00~16:00

慶應義塾大学 井庭研究室 Creative Media Studio /

Self Travel Cafe親子版 ぼく、わたしの大切なことって何だろう。
~子どもも大人も自分をみつめて親子で共有しよう~

毎日一緒にいても、目に見えない感覚や表現されない気持ちは共有するのが難しい。たとえば、お父さん・お母さんの得意なことや好きなことを、お子さんは認識しているだろうか?また、お子さんの得意なことや好きなことは?お子さん自身が大切にしていることで、おうちの方が気づいていないことはないだろうか?
一人ひとりが大切にしている価値観を可視化して、親子で共有する機会にしよう。お互いの理解が今よりもっと深まる親子向けセミナーとなった。

テーマは「自分らしさと向き合うこと」

d-labo湘南で9月に実施されたセミナーで、「プレゼンテーション・パターン」という表現のためのアイディアを使い、敬老の日のカードを作って好評を呼んだ慶應義塾大学の井庭研究室。さまざまなワークショップを企画しているが、今回は、学生や社会人を対象に「自分らしさと向き合う」ことをテーマとする「Self Travel Cafe」を、親子バージョンで初開催。会場には小学生のお子さんと、お父さんお母さんが集まった。ファシリテーターとして、井庭研究室の鎌田氏が進行を務める。

このセミナーの目的は、“自分を見つめる”ことと“共有する”こと。そのために、親と子は分かれて席に着く。お父さんだけ、お母さんだけ、小学校高学年の女の子だけ、そして小学校低学年の男の子と女の子混合のテーブルが2つ、参加者は合計5グループに分かれることになった。各テーブルには、ひとりずつ井庭研究室の学生がサポートにつく。

「お父さんお母さんが好きなものって何か、とか、お子さんが得意なことは何か、など、家族の間でもなんとなく知っている気がするけれど、改めて考えてみるとよく分かっていないことがあると思います。自分自身のことも、自分では案外分からなかったりします。今日のワークショップでは、グループで話したり、言葉にしたりしながら、好きなものや大切にしていることなどを見つけていければと思います」

感じたこと、考えたことをどんどん話すこと。誰かが話しているときは聞くこと。「どうして?」「どういうところが?」「どんな気持ちになった?」を聞き合うこと。「そういえばこんなこと大切にしてたな~」「私ってこんなこと考えてたんだ」と、気づいたことはどんどんメモする。これが、ワークショップを効果的に進めるための大事なポイントだ。

自分のことを、思いつくままに紙にメモしていく

最初のテーマは「できたさがし」。井庭研究室で作成された“考えるためのヒント”が書かれたカードを、サポートの学生が参加者に渡す。大人と子ども、それぞれに向けて、語り口調は異なるが、カードの内容は、「自分には『できない』と思うことを探すのではなく、自分が『できた』ことを探してみよう。過去は小さな『できた』がたくさんつまった宝物。のぞけばたちまち、チャレンジする勇気がわいてくる」ということが記されている。

「かけざん」「なわとび」「かんじ」「なわとべ(なわとび)」。成長真っ最中の子どもたちは、「できるようになったこと」をどんどんテーブルに貼られた大きな模造紙に書き付けていく。高学年のお姉ちゃんが集まるテーブルでは、「テストでいい点がとれた」「プールで級が上がった」と、内容もより具体的に。嬉しそうに発表する子どもたちの姿はちょっとした自慢大会のようで、微笑ましい。「できるようになってどう思った?」と尋ねられ、「うれしかった!」

一方、大人のテーブルは、初対面という遠慮もあってか、子どものようにはいかない。けれども、お父さんのテーブルでは、徐々に仕事の話を中心に話が盛り上がり始め、お母さんのテーブルも、「雪道の運転ができるようになったんです」「子どもに頼まれてお姫様の衣装を作って…」と、ママ会のような打ち解けた雰囲気になっていった。

あっという間に紙が「できるようになったこと」で埋まっていく子どもたちに比べ、大人のテーブルはほぼ真っ白。井庭氏が「ブレストのように、どんどん書いていってくださいね。子どもたちはすごいですよ!」と発破をかける。

次のテーマは、「好きなもの」。カードには「他の人のこと、まわりのことが気になるとき、自分と比べてしまうときは、いろんな『好き』を探してみる。『好き』を考えているうちに、大切にしたいことがわかってくる。ざわざわする気持ち、落ち着かない気持ちも遠くなっていく」と書かれている。

「えいご」「バナナ」「セカオワの歌」「国語」…どんどん発表していく子どもたち。大人も「家族」「仕事」「お酒」「猫」「読書」と、少しずつ紙が埋まり始めた。

「好きなことを書き出してみると、なんだか似たようなものばっかりで、自分を再発見できた」とはあるお母さんの弁。「好き」と向き合うことは、自分を見つめることにもつながるのだろう。

メモから言葉をピックアップして「今の自分」を認識する

最後のテーマは「未来」。「どんな自分でいたいか、どんな人生を送りたいか。想像力を働かせて未来を大きく描こう。わくわくする未来を描けば、次の目標も自然と生み出せる」というカードのメッセージをヒントに、「たのしい未来」を思い描いてみる。

高学年の子どもたちの描く未来は具体的だ。「○○中学に行きたい」「チアの世界大会でアメリカに行きたい」「マックでバイトしたい」「彼氏つくる」「保育士さんになりたい」。小さな子どもたちも「おとうさんになりたい」「いしゃになりたい」「みんなであそびたい」と、楽しい未来を夢見る。

お父さんたちは「家族と過ごす時間をもっととりたい」という意見がほとんど。そしてお母さんたちは意外にも「私なんかもうこのままでいい」「自分の未来の姿が想像できない」と苦戦中。

ワークショップのまとめとして、自分が目の前の紙に書いたたくさんの「できるようになったこと」「好きなもの」「たのしい未来」に関するメモから、自分が「これは特に大切にしているな、特に好きなものだな」と感じる言葉を探して、丸い形の色紙に書き出し、それを「パーソナル・ピクチャー」という二つ折りのカードに貼っていくことに。ずらりと並んだ言葉が、今の自分を表している、ということになる。

作った「パーソナル・ピクチャー」を、親子で、夫婦で見せ合う。「すごいね!」とお母さんに褒められた子どもの、照れくさそうな笑顔がかわいい。「え、そうなの?」と、家族も知らなかった一面に驚く声も。「お家に帰って、お互いのパーソナル・ピクチャーを見ながら、たくさん話し合ってください。好きなもの、大切なものは、自分で決めつけてしまいがち。意外に認識しにくいものなんです。時間をおいてまたこうした機会を設けてみると、変化が感じられてよいと思います」と鎌田氏。

参加者からは、「夫と子どもはいつも受け身で、自分の想いを言葉にするのが苦手なので、こういう機会が持ててよかった」「知らない人と話すのが新鮮だった」「子どもも、親ではない、初めて会ったお兄さんお姉さんと話せたことで、自由に発想できたようだ」「このパーソナル・ピクチャー、家宝にします!」といった喜びの声が。自分のこと、家族のことについて、理解をぐっと深めることができた、充実の2時間となった。

講師紹介

慶應義塾大学 井庭研究室 Creative Media Studio
慶應義塾大学 井庭研究室 Creative Media Studio

「創造社会をつくるチェンジ・メイカー」の集まりです。
創造社会(Creative Society)とは、「人々が、自分たちで自分たちのモノや仕組みをつくる社会」のこと。井庭研究室では、その実現のために、創造・実践活動の秘訣を言語化する「パターン・ランゲージ」の作成と、それによる組織・社会変革の支援・実践に取り組んでいます。トップダウン的に大きく仕組みを変えるのではなく、認識や思考、コミュニケーションのあり方が変わる「新しいメディア」をつくることで、社会や人びとに変化を引き起こすことを目指し、日々活動しています。