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イベントレポート

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2015年11月29日(日)13:30~15:00

柴田 秀夫(しばた ひでお) /

輝いているときの自分を写しておこう
~遺影としても使用できる1枚~

誰もが魅力的な表情をする瞬間がある。それは大好きな人とおしゃべりしているときかもしれないし、趣味や仕事など好きなことをしているときかもしれない。または愛するペットと散歩しているときかもしれない。そんな魅力的な表情を写真に収めるためのコツとは一体なんだろう?
今回は、その人の「らしさ」を感じさせる写真の撮り方から撮られ方までをお話しいただいた。お気に入りの写真を部屋に飾れば、毎日が華やかに。そして、自身に万が一のことがあった際には、きっとその写真は、遺される家族にとって親しみのある1枚になるはず。

今いちばん輝いている自分を写しておこう

自分では気づかなくても、人は、見ている相手がハッとするほど素晴らしい表情をすることがある。老若男女を問わず、そんな魅力的な表情を醸し出すことができるのだという。素敵な表情は素敵な日常、その人の人生の証ともいえる。そんな素晴らしい表情を撮るには、どうしたらいいのだろうか? 

今回のセミナーでは、1972年に国際児童年記念写真コンクールで「厚生労働大臣賞」を受賞後、数々の写真展を各地で開催、現在は写真教室「写友二水会」「写友三水会」などで講師を務める、柴田秀夫先生をお招きしてお話を伺った。

「アメリカ映画なんかを見ていますと、リビングなどに家族の写真が壁いっぱいに飾られていますよね。でも、日本の家庭では今でもそれほど写真を飾る習慣がない。これはちょっと残念だと思うのですよ。」

柴田先生が、そう言ってまず見せてくれたのは「ヤギと老人」の写真。老人が、まるでペットの犬を連れて歩くかのように、ヤギと寄り添って写っている写真だ。

「今から30年ほど前、山梨から長野のほうへ写真を撮りに出かけました。でも、なかなか良いものが撮れなくて。広い道から細い道へ。そんな風に歩いていたらこの老人と出会ったのです。」
この老人は、朝夕2回、大好きなヤギと一緒に散歩していたのだという。
「昨年、この老人がお亡くなりになったのです。ご家族によると、この写真をお葬式で使ったところ、本当におじいさんを象徴する写真だ、とみんなから大変喜ばれたそうなのです。」

自分らしい活き活きとした姿の写真は、それを見る人の気持ちも明るくする。
「自分らしい、魅力的な写真を部屋に飾ると、毎日の生活の中でも幸せな気持ちを保っていられます。そしてさらには万が一の際の遺影としても利用できるのです。」

では、どうしたら素晴らしい表情を引き出すことができるのだろう?

柴田先生いわく、笑顔を引き出すためには会話が必要、とのこと。

「ヤギと老人の写真のように、まったく見ず知らずの人の写真を撮らせてもらうときにはたいてい2つの質問から始めます。」

それは、「この辺に美味しいお店はありませんか?」とオススメのレストランを聞いてみることと、その道順を尋ねること。たとえその辺りの地理に詳しくても、あえて聞いてみると、初対面の相手に不信感を抱かれずに親しくなる手がかりがつかめる、と柴田先生は言う。

素敵な表情をする瞬間とは?

では、具体的にいい表情をする瞬間とはどんなときだろう?柴田先生が例に出されたのは以下の5つ。
1.好きなことをしているとき。たとえば、趣味の何かに夢中になっているとき
2.好きな仕事に熱中しているとき。たとえば、農業に従事している人が大きな大根を手に持ってその大根を見つめている姿
3.友人達と楽しい会話をしているとき。たとえば、レストランで美味しいものを食べながら話をしている姿
4.運動など、何かに真剣に取り組んでいるとき
5.可愛がっている犬や猫などと一緒にいるとき

「これらは、ほんの一例にすぎません。ただ、誰もが素晴らしいものを持っているのだ、という前提で写真を撮っておくことを勧めたいのです。」

そのうえで良い写真を撮るための柴田先生からの提案は「被写体と十分に対話をすること」。
対話の中で、その人がどんな魅力を持っているのか見極めていくという。逆に、写真を撮られるときには、自分の趣味や好きなもの、愛すべきものなどを相手に伝えることが大切だという。
また、「さあ、写真を撮りますよ~」と声をかけられると、つい真正面に向きがちだが、少し横を向いた写真のほうがかえって趣が出るとのこと。
「特に、遺影の写真というと上半身だけの正面を向いている写真が通常ですが、その人の魅力を存分に出している写真であるならばどんなものでもいいのではないでしょうか?一心に自分の作品を見つめる姿、目線を外してくつろいでいる姿、そんな写真でもその人らしさが表れているものならば選んでいいのではないかと思います。」
また、遺影は、直近の写真でなくても問題ないとのこと。
「たとえば70歳から80歳まで病気で入院がちだったけれど、60歳までは元気に過ごしていて、そのときの写真が残っているのならば、それを使用すればいいと思います。そうすれば遺族の方にも活き活きと過ごしていた姿が蘇えるでしょう。」

ここで、参加者から「遺影に使いたいカラー写真があるのですが、だんだんとカラーが色あせていくのでどうしたらいいでしょうか?」と質問があった。
柴田先生「ラミネート加工などカラーを色あせないようにする加工法があるのでそれを試したらいいでしょう。」
カラー写真で気に入ったものがある場合でも心配はなさそうだ。

写真を楽しむための11か条とこれからの夢

実際に写真を楽しむためには、どんなことを心がければいいのだろう?柴田先生が提案するのは以下のとおり。

1.写真は自分の人生の記録。
特別なことではなく、日常・「自分が生きる今」を写す気持ちで、できる限りカメラを持ち歩こう。

2.「感動」を見つけたらシャッターを押そう。
感動は、朝起きてから寝るまで、あなたの周りにいっぱいあるはず。雨上がりの朝に散歩すれば、雲が虹のように光り輝く瞬間に出会えるかも!

3.「光」と「影」を積極的に見つけよう。
冬は、影が長くなるので、面白い写真が撮れるチャンスも。

4.撮りたいものを大きく撮ったり小さく撮ったり(近づいたり遠ざかったり)してみよう。
たとえば、動物園へ行って象を撮りたいと思ったら、最初は全体を1枚撮り、次に、自分が魅力的だと思う部分をクローズアップして撮ってみる。

5.人間・花および樹木など、なんでも語り合いながら写真を撮ろう。
声をかけて対話してみることが大切。

6.撮りたいもの、人および動物と同じ目線で撮ってみよう。
花なら花の高さで、犬なら犬の高さ、赤ちゃんなら赤ちゃんと同じ高さになって寝転んだり腹ばいになってみよう。違う世界が発見できる。

7.晴れた日だけでなく、曇りの日、雨の日もそれぞれに良い写真が撮れるチャンスだ。
雨に濡れた花などは特に美しい。

8.動きのある写真を撮ってみよう。
子供や動物など、動いているものを撮ってみると、活き活きとした躍動感に感動させられる。

9.物語のある写真を撮ってみよう。
「この後どうなるのだろう?」「このバックには何があるのかな?」など、見ている人に疑問を抱かせるようなミステリアスな写真は奥深い趣が出る。

10.気に入った被写体は縦位置、横位置など条件を変えて何枚か撮ってみよう。

11.主役をはっきりさせ、脇役は活かそう。

どれも、「なるほど」と納得させられる。
さて、そんな柴田先生のこれからの夢とは?
「写真を撮っていると、感動がどんどん増えていきます。何の変哲もない日常が感動でいっぱいになるんです。どんな人にも素敵なところがあります。それを見つけて写真に収めていきたいです。また、人だけでなく樹木も大好きなので対話しながら素晴らしい表情を撮りたいですね。それらを写真集や展示会で発表できれば嬉しいです。」

後半は、参加者が2~3人ずつのグループに分かれて、写真を撮り合う実践トレーニングの時間も。それぞれに柴田先生のアドバイスをいただくなど、盛況のうちにセミナーが幕を閉じた。

文・土屋 茉莉

講師紹介

柴田 秀夫(しばた ひでお)
柴田 秀夫(しばた ひでお)

静岡市生まれ。1972年国際児童年記念写真コンクールで「厚生労働大臣賞」を受賞し、国際児童年ポスターとして採用される。その後数々の写真展を各地で開催し、現在は写真教室「写友二水会」「写友三水会」などで講師を務める。著作には詩集「娘たちに」、写真と詩「続一枚の写真」、「平成24年度ベストエッセイ集」などがある。