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イベントレポート

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2015年12月15日(火)19:00~21:00

西脇 資哲(にしわき もとあき) / 日本マイクロソフト株式会社 業務執行役員 ・エバンジェリスト

ドローンが描く近未来をご紹介
~ドローンレースから産業利用まで~

2015年はドローン(小型無人飛行機)が非常に注目される年となった。大容量の積載が可能な大型タイプから手のひらに乗る超小型タイプまで、さまざまな種類のドローンが登場した。今回は、ドローンの普及活動を行なっているエバンジェリスト西脇氏をお招きし、実機を複数使ったデモンストレーションを交えながら、レース、産業用利用、法規制などドローンに関する最新情報やドローンがもたらす未来の形についてご紹介いただいた。

2015年、日本でも注目を集めたドローン

講師の西脇資哲氏は日本マイクロソフトの業務執行役員。普段はエバンジェリストとして自社の製品をプレゼンテーションしている西脇氏だが、最近はその仕事に自身が興味や夢を抱いているドローンの普及活動が加わっているという。
「それがとくに多くなったのが今年。5月には日本初開催となった『国際ドローン展』が開催されましたし、ちょうど時期を合わせて最新ドローンの発売が相次ぎました。今は全国の自治体や消防署などで週に2、3回は説明会を開いています」

にわかに注目を集めているドローン。一方では首相官邸への意図的な落下や、ルール違反で逮捕された「ドローン少年」など、ドローンが「悪者」扱いされるネガティブなニュースが流れたのも2015年だった。
「ドローンも車やバイクと同じ。新しい物事が社会に浸透していく過程ではどうしてもマナーの悪い人が出てくる。日本でも今年の12月10日にドローンを対象として改正航空法が施行されましたが、今後はそれをどう封じ込めていくかが課題ですね」

「ドローン」とは「無人での飛行が可能な航空機の総称」。その種類は大きさが10メートルを超える軍事用のものから重さ100グラムに満たない手の平サイズのトイドローンまでさまざまなものがある。このセミナーではそのうちトイドローンから中~小型の産業用ドローンまでを紹介。西脇氏には実際に何機かの機体を操ってのデモフライトも行なっていただいた。

ドローンは「空の産業革命」

ドローンというと最新技術といったイメージ。しかし、日本におけるドローンの歴史は古い。ヤマハ発動機が1987年に実用化した農薬散布用のラジコンヘリコプターは立派なドローン。現在、日本の水田の4割はこのドローンによる農薬散布がされているという。ただし、世界のドローン市場を見ると「日本は先輩であるのに中国やヨーロッパに完全に負けました」。世界のドローン市場の実に65パーセントを占めているのが中国のDJI。今年出た『Phantom3』という空撮用のクワッドコプター(4枚ローター機)は「ドローン好きの人はほとんどこれを買う」といった完成度の高い製品だ。そしておなじくDJIの『Inspire1』はCMやドラマなどの空撮で使われるプロ仕様のドローン。ヨーロッパに目を向けると、日本の「ドローン少年」が持っていたことで話題となったのがパロットの『Bebop Drone』。アメリカでは3D Roboticsという会社がマーケットを拡大している。では日本はどうか。自律制御システムの権威である千葉大学野波研究室が福島の被災地でドローンを生産中。大手メーカーを見るとソニーと自動車の自動運転技術を持つZMPが合弁してエアロセンス株式会社を発足。小型のドローンというとローター式が思い浮かぶなか、同社では長時間、長距離の飛行が可能な固定翼式のドローンも開発している。

こうしたなか、アメリカのFAA(連邦航空局)ではドローンの免許制、登録制を開始。日本ではまだそこまでいってはいないが、航空法を改正し飛行高度や飛行区域の制限などが法律化された。西脇氏自身は「免許制登録制に賛成」。ドローンは車と同じで事故を起こす可能性がある「動産」。この先、普及させていくにはしっかりとしたルール作りや保険への加入は欠かせない。その気になれば子どもでも扱えるドローンだが、危険でないと言えば嘘になるのも事実。実際、ヨーロッパでは失明事故も起きているという。

エバンジェリストとしての西脇氏にもっとも多く寄せられる質問は「ドローンで何ができるか」、「ドローンにはどんな未来があるのか」といったものだという。用途別に言うなら小型のトイドローンは「中高生くらいのお子さんへのプレゼントにはぴったり」。ホビー用は個人的な趣味。レース用はレースに参加したい人向け。そして撮影用、産業用となると自治体運営やビジネスにおいての需要が期待されている。
「ドローンは空の産業革命と言われているもの。ITと結びつけることで、ドローンにはさまざまな可能性が生まれます」

救命、救難、災害調査で活躍が期待されているドローン

わかりやすいところで言えば空撮。いまやアートやCM撮影、観光PR、スポーツ中継、報道などの分野ではドローンは欠かせない。測量、土木、建設分野でもドローンは大活躍。ドローンで撮影した写真を3D化すれば、それまで熟練の測量士が国土地理院の地形図と見比べながら時間をかけて計っていた測量が短時間で可能となる。農業にしても特殊な植生指数画像カメラを搭載したドローンがあれば、上空からそのときもっとも収穫に適した耕作地が一目で把握できる。他にもアマゾンが実用化に名乗りを挙げているように1キログラム以下の軽量なものならばドローンで配送が可能だ。また監視や防犯、パトカーとの連携といった分野にもドローンは適している。

そうしたドローンの持つ可能性の中で、西脇氏がぜひとも活用してほしいと願っているのが、災害や危険地域の調査や救命、救難といった分野だ。たとえば川の対岸を調べるのに、ドローンがあれば橋まで回り込む必要がない。山から煙が上がっていれば、消防隊がそこまで登らなくてもそれが山火事なのか焚き火なのかがわかる。東京消防庁はすでにドローンによる災害救援活動の訓練を実施。全国の自治体や消防署でもドローンの導入を積極的に検討しているという。
「青森や宮城、福島といった東日本大震災の被災地でデモフライトをすると、なぜ2011年の3月にこのドローンがなかったのかと知事さんをはじめ皆さんがおっしゃります。1機でもあれば全然違ったはずなんです」

ドローンがあれば災害状況が把握できる。AEDも輸送できる。海で溺れている人がいれば浮き輪を運んで落とせる。それを「声を大にして」訴えていきたいと西脇氏は語る。

風雨が強い日や磁場の強い場所では飛ばせない。バッテリーはもって15分から20分。ペイロード(積載可能な荷物の重量)は性能のよいものでも3キロがいいところといった弱点も併せ持つドローンだがその可能性は大きい。西脇氏の「夢」はドローンで「私たちがまだ見たことのないような地球上の景色や生物、驚きといったものを見ること」だという。
「障害がある人にもドローンでそういう映像を届けられる。そんな世界にしたいですね」

講師紹介

西脇 資哲(にしわき もとあき)
西脇 資哲(にしわき もとあき)
日本マイクロソフト株式会社 業務執行役員 ・エバンジェリスト
1969年岐阜県生まれ。2009年、マイクロソフトに入社。マイクロソフト製品すべてを扱う唯一の日本人エバンジェリストとして活躍。「年間250講演、累計5万人以上・200社以上が受講」という 圧倒的実績を持つNo.1プレゼン講師としても知られている。著書に『プレゼンは「目線」で決まる』など。現在はドローンの普及活動を各地で行ない、さまざまなイベント、企業、教育現場、自治体でドローンに関する講演やデモンストレーションフライトを行なっている。個人でもドローンを計16機以上を持つドローン愛好家としても有名。