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イベントレポート

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2016年1月10日(日)13:30~15:30

杉本 弘美(すぎもと ひろみ) / Healing Light作家

Healing Light―モザイクキャンドルホルダーをつくろう―
~「自由」な心でいる時間~

光がある、闇がある
明がある、暗がある
喜びがある、憂いがある
二つが一つになるその場所で
私の輪郭はぼやけ、心を解放する
そして自由になる
(杉本弘美)

この詩は、今回の講師・杉本氏のポストカードに記されたメッセージ。光に慣れた現代人がキャンドルを求めるのは、揺らぐ炎と薄闇に、白黒をつけないある種の「寛容さ(=自由)」を見いだしているからかもしれない。
今回のセミナーは、チップ、ビーズおよびベネチアンガラスビーズなど、様々な素材を自由に組み合わせて、世界にひとつだけのキャンドルホルダーをつくってみよう!というもの。作り方の説明を受けたら実際に作ってみる。キラキラ光るガラスでどんな「ワクワクする心」が引き出されるのだろう。
さあ、キャンドルの自由な世界にトリップしてみよう。

自分を楽しませてあげよう!

静岡県富士市在住の杉本氏。装飾を施した器の中にロウソクを立てることで、光の陰影を楽しむ照明雑貨「モザイクキャンドルホルダー」との出会いから伝統工芸「モザイク」に魅力を感じ、2011年イタリアへ。エミリア・ロマーニャ州ラヴェンナの工房「KOKO MOZAICO」で修業したのち、帰国し作家として活躍中だ。

「“モノをつくる”というと、学校の美術の時間のように思われる方も多いと思いますが、私は、心を創る時間だと思っています。」

杉本氏の、活き活きした笑顔でセミナーはスタートした。

「誰かにプレゼントするときは、受け取った相手からどう思われるかしら?などあれこれ考え、“センスが問われる”ことを意識してしまいますが、今日は余計なことは考えずに、自分を喜ばせるものをつくってみましょう。」

自分はこんな感じの色が好きなのだな、自分はこんな考え方をするのだな、など、自分のことに思いを巡らせ、自分を楽しませる時間にしてほしいと杉本氏は微笑む。

参加者の各テーブルに置かれているのは、キャンドルホルダーのベースとなる透明のガラスの器、大ぶりのベネチアンビーズ、細かなビーズ、カラフルな端ガラス、ガラス用強力接着剤、ピンセットおよび竹串など。正面のテーブルには、杉本氏作の美しいキャンドルホルダーが並ぶ。

「つくり方は、ベースとなるガラスの器に、ビーズやガラスを貼るだけです。どんな風に作業を進めていただいても結構です。」

剥がれにくいパーツの貼り方のコツは、大きめサイズのガラスやベネチアンビーズを貼るときは直接そのパーツに、小さなガラスや細かなビーズのときはキャンドルホルダーとなるガラスの器に接着剤を塗る。

参考に、という形で提案された杉本氏のアイディアは、1カ所のポイントを決め、それが際立つように周りをちりばめていくこと。

「お好きなモチーフがあればそれを、“そんなのないわ”という方はグルグルと波のように貼ってみたりしてもOKです。ガラス切りもご用意していますので、小さいサイズにカットしたい時には、お声掛けくださいね。」

つくり手の個性が溢れる作品たち

さあ、いよいよ実践タイム。杉本氏も各テーブルをまわって適切にアドバイスを行ない、参加者の自由な創作を助けてくれた。

「ビーズは細かいので、ご用意した紙コップに入れ、接着剤を塗ったキャンドルホルダーに、パラパラと振りかけるようにするときれいに接着できますよ。」

“自分を喜ばせること”がテーマであったため、つくり方は参加者それぞれだ。

ガラスの貼り方も上から、真ん中から、下から、まったくランダムに、と様々。竹串やピンセットを使い、繊細にデザインする人がいれば、指で大胆につくりあげていく人もいる。黙々と貼り進める人がいれば、「先生、こんなところにこんなデザインはおかしいかしら?」とアドバイスを求める人もいる。

テーマも様々だ。

「天の川みたいに」

「アナと雪の女王が好きだから」

「愛と平和を祈って」

心を自由にすると、つくる過程だけでなく、こんなところにまで個性はあらわれるのだ。

また、「お手本や見本がないと、どうしていいのかわからない。」という参加者には、いきなりガラスを貼り付けず、いったん手元に並べて一呼吸置くと良いとアドバイスをくれた。

「今日は、自分のための時間です。いつもは選ばないだろうなぁという色を使ったり、今までの自分にはないスタイルのデザインを楽しんだりしてみてください。」

楽しい方法で自分の気持ちを解きほぐしてほしい、今日のこの自由な時間を満喫してほしい、そんな杉本氏の思いが伝わる。

作品が完成し、接着剤が乾燥すると細かなビーズは取れやすい。そのため、完成品にはニスのスプレーを吹きかけると良いのだそうだ。

当日は会場のテラスでニスのスプレーを吹きかけたが、この日はとりわけ青空と太陽が美しかった。

「太陽の光に輝くガラスは美しいですよね。青空とのコラボも最高!」

杉本氏の笑顔もまた最高に輝いていた。

ガラスと自由が大好き!

自由に自分の心を解放してくださいね、と語る杉本氏。どのような経緯でこのように思い至り、心を解放する手伝いをするようになったのだろう。

「10年前に父を、8年前に3歳年上の姉を亡くしました。姉は癌だったのですが、つらい治療にもよく耐えていました。」

半面、杉本氏自身は、どちらかというと生きることに消極的だったのだそうだ。

「自分がどういう人間なのか、何がやりたいのか、そんなこともわからず生きることがつらいと感じることもありました。」

生きたい姉が亡くなり、生への執着のない自分が生きている。なぜ?どう生きればいいの?疑問や葛藤に対するひとつの答えをくれたのが、屋久島の旅だった。

「そこで出会ったガイドさんの生き方が素敵だったのです。キラキラしたエネルギーが溢れ出ていました。」

そして、運命のモザイクキャンドルとの出会い。

「たまたま受けた体験講座で、体が震えるほどの喜びを感じました。持ち帰り部屋で灯したら、今までにないほど幸せな気分にひたれたのです。」

その講座がステンドグラス教室主催だったこともあり、最初はステンドグラスに挑戦。しかし、決まったデザインや細かすぎる工程などを心から楽しむことはできなかった。

そこで杉本氏は、原点に立ち戻り“モザイク”を志す。それでも、イタリアでモザイクの勉強をした当初も、ルールが多くて楽しめなかったそう。

「でも、基礎を学んだあと自由につくっていいよ、と言われて、やってみたらそれはそれは楽しくて!ああ、私は“ガラス”と“自由”が好きなんだと実感できました。」

イタリアから帰国して10か月ほどは、自宅にこもって作品をつくり続けていたのだとか。

「これは、自分のために、自分が癒されるために始めたことなんです。自分が楽しくてやっていることで、“ついでに”ほかの方にも楽しんでいただけている。もう最高ですね。完成品を手にしたみなさまが“自分の作品が一番好き!でもほかの人の作品もとっても素敵”と思ってくれるような瞬間が平和で大好きなんです。」

最後に、夢について伺った。実は、杉本氏は幼い頃から夢を持つことがなかったそうだ。今はどんな風に変化したのだろう。

「心に浮かぶのは“東京の地下鉄の中吊りに、私のHealing Lightのポスターが揺れている”というイメージです。でも、なにより夢を持ったことのなかった私が夢を持っている、そのことが宝です。」

自分の言葉で、本当の気持ちを語ってくださった杉本氏に参加者から大きな拍手が湧き、あたたかい雰囲気の中、セミナーは終了したのだった。

文・土屋 茉莉

講師紹介

杉本 弘美(すぎもと ひろみ)
杉本 弘美(すぎもと ひろみ)
Healing Light作家
静岡県富士市在住。カラーセラピーやアートセラピーを学び、インストラクターの民間資格を持つ。チップ状のガラスなどで装飾を施した器の内側にロウソクを立てることで光の陰影を楽しむ照明雑貨「モザイクキャンドルホルダー」との出会いから伝統工芸「モザイク」に惹かれ、2011年にはイタリアへ渡航。エミリア・ロマーニャ州ラヴェンナの工房「KOKO MOZAICO」で修業を積んだ。
帰国後は作家として活動。