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イベントレポート

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2016年1月11日(月)13:30~15:00

花田 大助(はなだ だいすけ) / TOMA税理士法人 事業承継コンサル部 税理士

「間違いやすい確定申告のポイント」
~実践的アドバイス~

年が明けると、「そろそろ確定申告をしなければ」と思い始める人も多いだろう。「確定申告」とは、1月1日~12月31日の1年間の所得を確定させ、税金を税務署に申告するというもの。会社勤めならば、「年末調整」という形で計算されるので自己申告は不要な場合がほとんど。しかし、自営業、不動産・配当・年金収入がある、給与収入が2,000万円を超える、2か所以上からの給与をもらっている、年の途中で退職したため年末調整が受けられない、出産・手術などで多額の医療費を支払った、新たに住宅ローンを組んだ、および保険金をもらった人などは、確定申告を行なう必要がある。
今回は、TOMA税理士法人事業承継コンサル部の花田氏をお招きし、所得税を軽減する所得控除、今話題のふるさと納税による控除および住宅ローン控除などの税金対策についてお話をうかがった。
セミナー終了後は、花田氏による個別無料相談会も実施。控除や税金対策方法は年々変化しているため、内容が煩雑。そのため、個別無料相談を利用される方も多くいたようだ。

「所得控除」の種類を知って、税負担を減らそう

確定申告には、1年間の所得(収入)の合計金額のうち、一定額を非課税にできる「所得控除」と呼ばれる制度がある。所得税は、所得が高くなればなるほど税率が上がる「累進課税」の制度を採っており、現在は復興特別所得税を含む税率が課せられている。所得控除の対象には、次のような内容がある。

●医療費控除
生計を一にする人全員で10万円(総所得が200万円以下の人は所得の5%)を超える医療費を支出している場合、控除が受けられる。ただし、治療完了済みでも未払いの場合は控除対象外。医師による診療などを受けるために必要なもの(通院費、入院代、医師の送迎費、松葉杖・義足・義手・義歯などの購入費および介護保険制度下で提供されるサービスの対価などから、風邪薬などの一般的な医療品の購入費用まで可能)が申告できる。
なお、確定申告に使用した領収書は、確定申告書に添付する必要があるので、申告まで保管しなければならない。電子申告の場合、領収書の添付は必要ないが、5年間の保存義務がある。
「電子申告の場合は、領収書の提出を省略することができる、となっています。領収書の保管方法にお悩みの方は、領収書を提出する方法を採ることもできます。」と花田氏はアドバイスしてくれた。

●生命保険料控除
・新契約(平成24年1月1日以降の締結)の場合
一般生命保険料・個人年金保険料・介護医療保険料のそれぞれから、金額に応じて各4万円を限度に適用される。
・旧契約(平成23年12月31日以前に締結)の場合
一般生命保険料・個人年金保険料のそれぞれから、金額に応じて各5万円を限度に適用される。
・新旧双方の契約がある場合
保険料に応じて12万円を限度に適用される。

●小規模企業共済等掛金控除
・「小規模企業共済制度」
経営者・個人事業主の退職積立金として利用されている制度。平成23年1月からは、「共同経営者(個人事業の経営に携わる個人)」も、この制度に加入できるようになった。掛金を範囲内で自由に選ぶことができ、その年に支払った掛金の全額が所得控除対象になる。
受取った共済金は、退職所得扱いになり、税制上の優遇措置が受けられる。
・「個人型確定拠出年金」
個人が掛金を積立て、自分で決めた運用方法によって資産形成を行なうことができる制度。
国民年金第1号被保険者(20歳以上60歳未満の自営業者とその家族、自由業、学生など)なら月68,000円を限度に、国民年金第2号被保険者(60歳未満の厚生年金保険の被保険者)なら月23,000円を限度に、掛金を設定できる。全額所得控除になり、所得税および住民税が軽減される。

現行の「個人型確定拠出年金」は、企業年金がない人など加入できる人が限定され、60歳まで引出せない、積立限度額が少ないというデメリットもあるが、値上がり益、配当金および分配金が60歳まで非課税で、積立額が全額所得控除になるという大きなメリットがある。「現在は、利用している人が少ないようですが、国民年金第1号・第2号被保険者の方は、ぜひ活用をおすすめしたい制度です」と花田氏は話す。

※上記は、平成27年度における控除要件。控除要件は、毎年変更になる可能性あり。詳細は、国税庁のホームページを参照

税金対策の種類を知って、必要に応じて活用しよう

前述した各種控除に加え、「ふるさと納税」、保険および不動産を活用した税金対策があるので、こちらも合わせて知っておきたい。

●住宅借入金特別控除(住宅ローン控除)
住宅の新築や中古住宅の取得、住宅の取得とともにする敷地の取得および一定の増改築などで住宅ローンを組んだ際、一定の要件を満たした場合に受けられる控除。合計所得金額が、3,000万円以下の世帯のみ受けられる。消費税10%への引上げ時期の変更を踏まえ、現在は、適用期限が平成31年6月30日までになっている。

●「ふるさと納税」を活用
自治体に対し、寄附ができる「ふるさと納税」。寄附額の2,000円を超える部分について所得税の所得控除および住民税の税額控除が受けられる。なお、平成27年4月1日以降に行なわれる寄附については、「ふるさと納税ワンストップ特例」が適用される。寄附先の団体が本人に代わって控除手続きを行なってくれるという制度。
自治体によっては、寄附金額に応じて、その土地の名産品・特産品などの特典がもらえるとあって、世間から注目を集めている。ただし、「ふるさと納税で得た特典は、一時所得として課税の対象になると国税庁のホームページに記載されています。多額のふるさと納税を納め、多くの特典を得た場合は注意をしましょう。」と花田氏は話す。

●「生命保険」を活用
保険金の契約の際、契約者、被保険者および受取人を誰にするかで、受取る保険金の課税科目が変わってくる。一時所得の扱いになったり、みなし相続財産になったりするので、専門家のアドバイスを受けながら契約内容を検討したい。

●「不動産」を活用
不動産所得は、「総収入金額-必要経費-青色申告特別控除」の形で算出する。不動産所得が事業的規模(要件あり)であれば、「必要経費」の部分に、専従者給与(事業に従事した家族の給与など)、減価償却費、修繕費、支払利息、固定資産税を含む租税公課および損害保険料を算入することができる。

新制度も把握し、申告漏れを防ごう

税制度は、毎年変化していると花田氏は語る。損をしないためにも、平成27年度の確定申告分から整備された制度について触れておこう。

●「財産債務調書」
これまでは、所得合計額が2,000万円を超える人が、「財産及び債務の明細書」を確定申告の際に提出していた。今回の改正で、「所得合計額が2,000万円を超える人」かつ、その年の12月31日時点で「財産の総額が3億円を超える人」または「国外転出課税の対象財産(有価証券など)を1億円以上持っている人」は提出を義務付けると要件が追加された。

●「国外財産調書」
その年の12月31日において、国外財産(国外預金および国外不動産など)の総額が5,000万円以上の場合は、「国外財産調書」を提出しなければならない。制度は、平成24年度に創設されたが、罰則が適用されるのは平成27年度1月1日に提出するものから。

これらの制度は、近年、国外財産を所有する人が増え、所得や相続財産の申告漏れを防ぐために制度されたそうだ。また、平成27年度より、所得税、法人税、相続税および贈与税の税率も変更になっている。
年々変化する税制をすべて把握することは大変なため、プロに相談しながら、賢く利用していきたい。

■こちらのレポートはセミナー実施日時点の税制に則っております。 文・河田 良子

講師紹介

花田 大助(はなだ だいすけ)
花田 大助(はなだ だいすけ)
TOMA税理士法人 事業承継コンサル部 税理士
TOMAコンサルタンツグループは、明治創業で、東京駅前に本社をかまえ、200名の専門家が所属。2015年10月には、静岡駅前に支店を開設し、税務、財務、相続、事業承継、M&A、人事労務、業務改善、などのコンサルティングサービスを行なっている。
花田氏は、事業承継・自社株・相続税対策のコンサルティングを得意とする税理士。相続については、税金対策だけでなく、ご家族が生涯にわたり、豊かで実りのある人生を送ることができるように支援を行なっている。また、中小企業の役員会や、家族会議に参加し、会社を存続させることを第一に考え、従業員ならびに家族の幸せを守る事業承継や資本政策などのコンサルティングを展開。お客さまの立場に立った実践的アドバイスに定評がある。