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イベントレポート

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2016年1月16日(土)13:00~14:30

須﨑 大、藤井仁美 /  

はじめての犬との暮らしセミナー~ペットショップに行く前に~

自分に合った犬はどんな犬種?犬と一緒に暮らすには、どのくらいお金がかかるの?どんな準備をすればいいの?などなど、犬との暮らしをはじめたい方には、疑問や不安がたくさんあるはずだ。今回のセミナーでは、そんな疑問に、「犬の専門家」が回答。犬の特性を知り、自分のライフスタイルに合ったパートナーを選べば、その生活はとても素晴らしいものになる。犬とのより良い暮らしを実現するための、基本的な知識を教えていただいた。

人と暮らす動物としての犬について考える

d-labo湘南がある湘南T-SITEで、ペットフードや雑貨を販売する「GREEN DOG 湘南」。その店舗内には、災害救助犬の育成や殺処分ゼロに向けた犬の保護・譲渡を行なっている「ピースワンコ・ジャパン」運営の譲渡センターが常設されている。常時数頭の保護犬が、新しい飼い主との出会いを待っているわけだ。

ペットショップでかわいらしい子犬や子猫が買われていく一方で、年間3万頭もが殺処分されているという現実がある。「飼えなくなった」「売れ残って大きくなってしまった」などという無責任な理由で、犬を捨てる人は後を絶たない。今回のセミナーは、そうした現状に対して何かできないか、という「GREEN DOG」の思いから生まれた。

セミナー冒頭、ペットの問題行動の治療に、身体と精神の両面から取り組む獣医師の藤井氏が、参加者に質問を投げかける。
「犬とはどういう動物ですか?」
「人と犬との理想の関係は?」
「なぜあなたは犬との暮らしを始めるのですか?」
「今の不安を教えてください」

「犬は、賢くて忠実。人の暮らしを支える動物」「生活においてのパートナーという関係が理想」「犬と暮らすと家庭内が明るくなる」「子どものころ実家に犬がいたが、いざ自分で飼うとなると不安」といったそれぞれの回答を、うなずきながら聞く藤井氏。

「犬が人間と暮らし始めたのは、1万5千年くらい前だと言われています。人が捨てた残飯を、犬が食べにくるうち、だんだんと距離が近づいていき、犬の賢さに気づいた人間が、生活の中に連れ込んできたのではないかと考えられています。人間も犬も、互いの存在をありがたいと思い、一緒に暮らし始めたのでしょう」

その後、犬は人為的に選択繁殖され、さまざまな犬種が生まれた。犬種は、能力と目的別に、大きく3つに分類することができる。
①獲物を捕る(捕食)…ラブラドールレトリバーなどのガンドッググループ(鳥猟犬)、ハウンドグループ(獣猟犬)、テリアグループ(害獣駆除犬)
②守る、助ける…コーギーなどのパストラルグループ(家畜のために働く=牧畜・牧羊犬)、セントバーナードなどのワーキンググループ(人のために働く=護衛・作業・救助)
③その他…トイグループ(愛玩犬)、ユーティリティグループ(使役犬)

「犬を選ぶ時は、こうした特性をよく考える必要があります。たとえばボーダーコリーなどの作業犬は、一日中農場で家畜を見張ったり、群れを統率し移動させたりといった仕事を楽しく思える犬種。それなのに、長くお留守番をしなければならないような飼い方をしていると、ストレスで問題行動を起こすことも」

最期まで飼ってあげられるかどうかを考えることも大切だ。獣医学の進歩で、犬の平均寿命は伸び、だいたい13~14歳と言われている。子犬期(~2歳くらい)、成犬期(2~7歳くらい)、シニア期(8歳~)それぞれの時期に、適切な飼い方ができるか。今から犬を飼おうとするなら、自分の年齢にプラス14歳したところまでのライフスタイルを考えるべきである。もちろん、飼育にかかる費用についても把握しておく必要がある。

「動物福祉という考えでは、5つの自由を飼い主の義務として提案しています。
①飢えと渇きからの自由
②肉体的苦痛からの自由
③外傷や疾病からの自由
④恐怖や不安からの自由
⑤正常な行動を表現する自由。
この5つの自由を守りながら、家族全員が同じ方向を見て暮らせるか、ということが大切なのです」

犬を飼い始めたら、動物病院など専門施設を上手に利用しながら、自由で健康な暮らしを叶えてほしい、と藤井氏は結んだ。

“犬たちの言い分”をもっと知ろう

ここからは須﨑氏にバトンタッチ。ヒューマン・ドッグトレーナーという立場から、犬との暮らしについて解説していただく。

「私の仕事は、『犬たちの言い分を飼い主さんに知ってもらうこと』。犬のしつけは、犬だけの問題ではありません。『うちの子、無駄吠えがひどくて…』という飼い主さんのところに行ってみると、犬は悪いことをしているという気持ちがなくて、ただ、嬉しそうに吠えているだけだったりします。人間の暮らしに犬を合わせようとするのではなく、犬のことを知って、互いに歩み寄ることができればいいと考えています」

人間が「問題だ」と感じる犬の行動は、実は犬にとっては、犬種の特性や性格などからくる精一杯の行動であり、そうした認識の違いを飼い主に知ってもらうことが大切なのだと須﨑氏は言う。

たとえば、警察犬や盲導犬など、ワーキングドッグといわれる、仕事をする犬たちを例にとって考えてみる。警察犬は、あらゆる状況の中で、ハンドラーの指示に忠実に従うという特性をもつ。「行け!」と言われたら「行けます!」という犬だ。しかし、盲導犬はその真逆。ハンドラーに言われたことも、自分で判断して「無理です」と言えなければ、指示されたままに赤信号を渡るなどして、ハンドラーを危険な目に合わせてしまうことになる。介助犬には「夜中に起きた人間に対して『トイレ?行きましょ行きましょ』と付いてくるようなストーカータイプ」の犬が向いている。

「大事なことは、飼い主さんが『どういう暮らしをしたいか』ということ。犬を膝の上にのせてお酒を飲みたいのか、アウトドアで活発に過ごしたいのか。家族構成においては、物理的な意味で犬をケアする能力があるか。住環境はどうか。集合住宅か戸建かによっても、選ぶべき犬種は変わってきます」

こうしたことがクリアになって初めて、ペットショップ、ブリーダー、保護施設などへ足を運ぶことになる。なかでも保護施設について、須﨑氏は印象的なエピソードを語ってくれた。

「N.Y.で犬のシェルターを見学したときのことです。そこはものすごくきれいで、スタッフも大勢いたのですが、私はつい、そこで保護されている犬たちのことを『かわいそう』だと言ってしまった。そうしたらスタッフに怒られたんです。『この子たちには、十分な食事と十分な運動を与えられ、そしてこれから、素晴らしい飼い主との未来が待っているんですよ。かわいそうな犬ではありません』と。日本と海外の違いを思い知らされました」

必要なのは、「犬のことをもっと知りたいと思う心」だと、須﨑氏は何度も強調していた。

犬種や暮らし方について参加者から熱心な相談が

質問コーナーでは、「共働きで家を不在にする時間が長いのだが、どういう犬種がよいか」「柴犬が好きで飼いたいのだけれど、どんな性質の犬ですか?」「実際に飼う前に、犬と触れ合えるところはありますか?」「パグが飼いたいのですが、どういうところに気をつけたらいいでしょうか?」など、具体的な疑問が相次ぎ、藤井氏、須﨑氏がそれぞれの専門分野からアドバイス。犬との暮らしを夢見る参加者の背中を押していただいた。

最後に、おふたりの夢を伺うと、藤井氏は、「私自身、動物への理解者が多いイギリスで長く暮らしていたこともあって、『どうして日本ではなかなか理解が進まないのだろう、早くなんとかしなければ』という思いでこれまで活動してきましたが、なんと今年のおみくじで、『遠くのことを考えて取り越し苦労をするよりも、日々、できることを積み重ねていきなさい』と書いてあって(笑)。だから私は、目の前を見て、人との出会い、コミュニケーションを大切に、毎日を過ごしていきたいと思っています」

須﨑氏は、「パートナードッグのジャーマンピンシャーと一緒に、世界一周したい」と語った。「国や地域によっても、犬と人間の関係性や、動物に関する文化は違います。それを一緒に見て回ることで、自分も、彼(パートナードッグ)も、人生の経験値を上げていくことができたら」

犬のこと、犬との暮らしのことを、たっぷりと学べた時間となった。

講師紹介

須﨑 大、藤井仁美
須﨑 大、藤井仁美
 
須﨑 大(すざき だい)
DOGSHIP LLC.代表。
ヒューマン・ドッグトレーナー。実務経験と、動物の行動学と心理学を学問してきた立場から、人と犬、人と人の相互関係をライフワークとして研究。また、社会人向けに「動物から学ぶコミュニケーション」をテーマに、企業や自治体・ホテル等にて、講師としても活動を行なう。2015年11月、4冊目の書籍「愛犬が長生きする本(宝島社)」を出版。

藤井仁美(ふじい ひとみ)
英国にて伴侶動物の行動学を学ぶ。その知識と経験を生かし、代官山動物病院でも行動問題の治療、しつけ方指導、病気のパートナーのメンタル面(精神面)のケアを専門に行なっている。