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イベントレポート

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2016年1月23日(土)14:00~16:00

慶應義塾大学SFC清水唯一朗研究室 オーラル・ヒストリーゼミ /

インタビュアーになろう!~こどもインタビュアー体験教室~

毎日、家を出てから夜帰ってくるまで、お父さんやお母さんはどんな仕事をして、どんな人と一緒に働いて、どんなことを考えているのだろう?
今回のワークショップでは、お父さん・お母さんの仕事についてお子さまがインタビュー、いつもとは違う親御さんの新しい一面を発見していただいた。インタビューを通して発見したことや気付いたことは、冊子にまとめプレゼント。子どもたちはよい質問の作り方・聴き方を楽しく学び、すてきなインタビュアーになった。

相手のことをもっと知るために、何を、どう聞く?

オーラル・ヒストリーとは相手の話を深く「聴く」ための手法。質問の仕方や内容によって、相手のことをよりよく知ることができるのだという。今回は、オーラル・ヒストリーを研究テーマとする慶應義塾大学SFC清水唯一朗研究室から、清水氏と、4人の女子学生を講師に迎えた、子どもを対象にしたワークショップ。インタビュー手法を楽しく学んでいただき、家族の関わりを深め、コミュニケーション力を磨こう、というのが目的だ。

参加したのは、小学生低学年と幼稚園児(+未就園児)と、そのお母さん。今回はお父さんの参加者がいなかったため、お母さんについてのインタビューとなる。

「学校や幼稚園からお家に帰ってきたら、みんなはお父さん、お母さんに何を話すかな?今日あったことを話すよね。じゃあ、お父さんお母さんは、みんなに、今日何があったかってお話してくれるかな?」という清水氏の問いかけに、考え込む子どもたち。「しなーい」という声があがる。
「しない?あんまりしないよね。だから今日は、みんなに、お母さんにインタビューしてもらおうと思います」

ここで、清水氏は「難しいインタビューはこうやるんだよ」と、マイクを持ち、ひとりの子どもの前へ。
「こんにちは」(子どもにマイクを向ける)…「こんにちは」
「幼稚園では何を勉強しているんですか?」(マイクを向ける)…「おえかきです」
「好きなお弁当のおかずはなんですか」(マイクを向ける)…「…(無言)」

「…と、これが難しいインタビューです。自分が聞きたいことだけ聞いている。次は違ったやり方でやってみましょう」

「こんにちは!ねえねえ、幼稚園で楽しいことってなあに?」(子どもにマイクを向ける)…「ドッジボール!」
「へえ、ドッヂボールが好きなんだ。いつもだれとやっているの?」…「せんせーと、○○くんと××ちゃん」

親しみやすい口調で、相手の発言に沿って、その先を促すように言葉をかけるインタビュー方法では、子どももリラックスして楽しげに話していた。

「傾聴ボランティア、というのを聞いたことがあるでしょうか。震災のときにも話題になりましたが、とにかく相手の話に耳を傾ける、これもひとつのインタビュー方法です。対して、テレビや雑誌などのインタビューでは、記事をつくるために、あらかじめ聞きたいことが決まっていますよね。ただ耳を傾けるだけ、と、聞きたいことだけを聞く、という、このふたつは、真逆の方法です。私たちは、こうしたさまざまなコミュニケーションの形を考えながら、どういうふうに話を聞いたり、質問をしたりすればよいのかということを研究しています」

これまでは中高生を対象に行なわれてきたというこのインタビュアー体験。小さな子どもたち向けには今回が初めての開催とあって、期待が高まる。

お母さんのこと、どのくらい知ってるかな?

セミナーは、清水研究室の4人のお姉さんが中心となって進行。全員の自己紹介が終わったところで、紙と鉛筆が各家族に配られた。

「今からみんなでゲームをします。このゲームには、ひとつだけルールがあります。それは、“しゃべってはダメ”ということ」

そのゲームとは、「お父さんお母さんクイズ」。紙には、以下の4つの質問が書いてある。
①お母さん(お父さん)のおたんじょうびはいつですか?
②お母さん(お父さん)は、きのうなんじにねましたか?
③お母さん(お父さん)のすきな色はなんですか?
④お母さん(お父さん)の生まれたばしょはどこですか?

つい「ねえママ…」と質問をしてしまいそうになる子どもたちに、「ダメだよ~」と優しく声をかけながら、しばらく時間をとる。そして、各家族で、緊張の答え合わせ。残念ながら全問不正解の子どもは、さすがに落ち込んでいる様子。

「毎日一緒にいるのに、お互い知らないことがたくさんある、ということが分かってもらえたと思います。みんな、知らないことがあったらどうしますか?質問しますよね。今日は、相手に質問してお話を聞き出す、インタビュアーというお仕事の人になって、お母さんに話を聞き出してもらいます」

子どもたちには、インタビュアーが仕事で使うものとして、メモとレコーダーが配られる。大人が使う本格的な機材を渡されて、子どもたちの顔がキラキラと輝いた。

まずは、インタビューのための質問を作る。
「質問には、首を振るだけで答えられる質問と、首を振るだけでは答えられない質問があります。たとえば、『今日、朝ごはん食べた?』というのは、首を振るだけで答えられるけれど、『今日はどんな朝ごはんを食べた?』というのは、首を振るだけでは答えられないよね。そんな、首を振るだけでは答えられない質問を考えてみてください」

子どもたちにとっては、これがなかなか難しい。「君たちが幼稚園に行っている間、お母さんは何してるのかなぁ」と、質問を思いつくためのヒントを与えるなど、お姉さんたちもサポート。

質問を書き上げたら、いよいよインタビュー開始。上手なインタビューのコツとして、
・うなずきながら、笑顔で聞こう
・気になったことは「どうして?」と聞こう
・最後まで聞こう
というアドバイスを受ける。レコーダーのスイッチを入れ、最初に「1月23日、○○がママにインタビューします」と吹き込んでから、順番に質問開始。

「ママはなんのべんきょうが好きですか?」
「お昼ごはんはどうやって食べているんですか?」
「なんでケーキが好きなんですか?」
「なんでおとうさんとけっこんしたんですか?」
「どうして青が好きなの?」

お母さんたちは、ひとつひとつの質問に笑顔で丁寧に答え、子どもたちは一生懸命、その答えを紙に書き込んでいく。微笑ましいインタビューの時間が終わると、子どもたちの手元の紙は、お母さんに関する情報でいっぱいになっていた。

最後はインタビュー内容をまとめて冊子に

「みんな上手に質問できたかな?それでは、インタビュアーの最後のお仕事、“まとめ”に入ります。みんなが書いた紙を、ふたつに折って、ホッチキスで留めて、本を作ります」

本の形にしたものに、絵を描いたり色を塗ったり、マスキングテープで飾ったりして、「1月インタビュアー体験」というタイトルの冊子ができあがった。子どもたちが仕上げをしている間に、お母さんにこっそり書いてもらったメッセージカードを最後のページに貼って、完成!

「では、みんな順番に、今日聞いた質問の中からふたつ選んで発表してください。そして、今日のインタビュアー体験で思ったこと、考えたこと、も言ってください」

ひとりずつ子どもが前に立って、マイクを持って発表。「こんなにお母さんのことを知ったのは初めてです」「初めはドキドキしたけれど楽しかった」「ママのことがいろいろわかってうれしかった」と、照れくさそうに感想を語ってくれた。

インタビューを受けたお母さんたちからも、「ふだんは子どもに自分のことを聞かれることがないので、質問してもらって、自分のことを知ってもらえる、というのが嬉しかった」「聞かれてドキッとするような質問もあって、答えるのに時間がかかりました(笑)」「いい経験になりました」と好評だった。

「家族や友達と話すときにも、このインタビューのコツを使って、たくさん聞き出してみてください」とお姉さんからメッセージ。コミュニケーションの喜びを改めて知ることができた、楽しいセミナーとなった。

講師紹介

慶應義塾大学SFC清水唯一朗研究室 オーラル・ヒストリーゼミ
慶應義塾大学SFC清水唯一朗研究室 オーラル・ヒストリーゼミ

オーラル・ヒストリーというインタビュー手法を通じて「聴くこと」を学ぶ研究室。「語る」、「聴く」というコミュニケーションを通じて、研究と自分の道を切り拓くことを目的に、2009年から慶應義塾大学湘南藤沢キャンパスで活動を行なっている。