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イベントレポート

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2016年2月2日(火)19:00~21:00

塚越 友子(つかこし ともこ) / 東京中央カウンセリング代表カウンセラー

"職場の困った人たち"から解放されるビジネス心理術
~ビジネス深層心理を活用して、精神的健康を高めよう~

厚生労働省の平成24年「労働者健康状況調査」によると、仕事に関するストレスのトップは「職場の人間関係」である。一方で、労働意欲を高めるのに重要だとあげられるのは「仕事自体への興味」についで、「良好な人間関係」だ。職場にはさまざまな年代・パーソナリティ・価値観・仕事スキル・対人関係スキルの人間が集まっている。
困った上司・後輩・同僚、女性同士のお付き合いなど、呉越同舟、降りられない船にのった状況で、ストレスを発散する・耐えるには限界がある。こんな時こそストレスの元への改善ができれば、「うつ」などの精神疾患で自分の大切なキャリアや人生を壊さないですむのではないだろうか。
このセミナーでは、関わりスキルや表現スキルをシステム心理学の観点から身につけ、上司や部下の性格は変わらずとも、自分のこころを軽くする。そんな職場の人間関係の悩みを減らす行動スキルをワークを交えて実践した。

ストレスは「悪」ではない

この日のセミナーは3部構成。第1部では「精神的健康」とは何なのか、心理学の見地から解説。第2部では「職場の困ったひとたち」との間に起きている問題について、その対処法を教示。第3部は質疑応答という流れで進行。2時間のセミナーは、講師である塚越友子氏の「今日はみなさんの精神的健康が高まる話をしていきたいと思います」という挨拶から始まった。

冒頭は「精神的健康」の定義。参加者に問うと、「精神的健康」とは「ストレスを感じないで気分良くいられること」、「いきいきとしている。自分が誰かの役に立っている状態」、「充実感をもって生活できている」といった答えが返ってきた。こんなふうに一般的な「精神的健康」のイメージは、「万事順調」や「問題がない」といった、ストレスがない状態。ところが心理学の世界では、「精神的健康」とは必ずしも「いっさいストレスがない状態」とは定義していないという。これをビジネスの世界で見てみると「個人の仕事へのやりがいと業務をする意味が結びついている状態」、あるいは「仕事にコミットすることで達成意欲が高まっているような状態」、そして目の前にストレスや課題があってもそれに「対処できている状態」がそれに当たる。ここで言いたいのは、ストレスは必ずしも「悪」ではないということだ。
「ストレスというと私たちは基本的に悪であり排除せねばならないものだと教えられてきましたが、最近のポジティブ心理学ではストレスはむしろ健康や活力の増進につながったり、パフォーマンスや生産性を高めることに役立ったりしていることがわかってきました」

わかりやすい例がスポーツ。選手にとって適度なストレスは「ちょうどいい緊張状態」をもたらし、それがピークパフォーマンスを生み出す。ある調査では「ストレス指数が高い国ほど平均寿命が長く、GDPや国民の幸福度も高い」というデータが出ているともいう。
「ですから、ストレスは避けたり紛らわそうとせずに向き合うことが大切です」

「職場の困った人」との関係をシステムにして考えてみる

もし強いストレスを感じる出来事が起きた場合は、逃げずに「その事実を認める」こと。そして「原因に対処する方法をしっかり考える」こと。その際は「ひとりでやるのではなく、他からの情報やサポートやアドバイスを求める」。大事なのは、「困難な状況を自分が成長する機会と捉えて、その状況において最善を尽す」ことだ。ストレスというものは、「逃げようとしても必ずやって来る」。なかには人生において先々まで予測できるものもあるし、病気や事故や戦争など予測できないようなものもある。それでも人は何とか対処して生きていかねばならない。
「まずは困難なことでも頑張ってみよう。勇気をもって行動してみようというマインドセットが必要です」

社会人にとって、もっとも身近なストレスの発生源といえば、「職場の人間関係」。今回は、参加者全員にワークシートを配布。
自分にとっての「職場の困った人」を具体的にイメージしてもらい、円環状の「関係性マップ」を作ってもらった。書き込むのは「相手から見て自分の行動がどのように映るか」、「そこから相手にどんな反応・認知・行動が起きるのか」、「自分の相手の反応・認知・行動の前提は何か」など。そうするとたいていは「堂々巡り」の「閉じた円環システム」が現われる。

塚越氏がケースとして出してくれたのは「ベテランのシニア特別職であるAさん」と、「若手のBさん」の関係。Aさんは、Bさんの作るクオリティの低い書類を見て頭を抱え、代わりに自分がそれを作成する。
それが幾度かつづくうちにBさんに対し「最近の若いものは、自分で努力するとか必死に勉強する気がない。甘えている」と不満を募らせる。ついにはそれが爆発し、「こんなものしか作れないのか」と頭ごなしに怒鳴ってしまう。一方のBさんは怒鳴られながらも書類作成自体は「やってくれるのだから」とAさんに依存する毎日。職場ではありがちな、悪循環そのものの人間関係。
これを解決するには「閉じた円環システムを解放する」しかない。そのためには「視点を変える」こと。頭上に掲げた人差し指を時計回りに回してみる。回しながら、そのまま見下ろす位置まで下げていくと、時計回りに見えていた指の回転がいつの間にか反時計回りのように見えてくる。物事はこのように見る場所ひとつで見え方が変わってくる。

「ありがとう」の一言から人間関係は変わる

考え方のポイントは「ソリューションにフォーカスしてアプローチする」こと。「理想の状態というゴール」を設定し、過去に遡って原因を追究するのではなく未来を思い描く。肝心なのは「誰も悪くない」と思うこと。人は人間関係でストレスがあると「相手が悪い」と考えがちだが、嫌いな相手にも相手なりの「こうあるべき」というルール=前提がある。同時に自分には自分のルールがある。
職場の人間関係からは逃げられない。相手と現実的に関わらなければならない以上は、相手が本当はどうしたいのか、それを知ることが大切だ。AさんとBさんの関係なら、AさんはBさんを頭ごなしに叱るのではなく「何か困っていることはないか」と一言聞けば、そこから閉じたシステムが変わる可能性がある。また、よくある「職場での敵対関係」も、誰か第三者を通して相手を褒めたり、もっと簡単に「ありがとう」や「助かる」といった言葉をかけるだけで改善の方向に向かうものだ。

会場からは2名の参加者が、今現在の自身が体験している事例を披露。シェアした話を、他の参加者からどうすればいいか意見を募ってみた。人間関係の問題に「魔法の杖」はないものの、やはり人に聞いてもらうと自分では思ってもみなかった方法が出てきたりする。

現在はカウンセラーとして活躍している塚越氏だが、人生の一時期は「どん底」で「孤独でした」。それを変えてくれたのが、当時勤めていた銀座のクラブで出会った故・渡辺淳一氏の言葉だったという。
「人によって傷ついたなら人によって救われるよ。渡辺先生にこう言っていただいた瞬間、もっと人と関わっていこうと気付いたんです」

塚越氏の「夢」は「人が人を助けるのが当たり前、人が人に助けを求めるのが当たり前の世界をつくること」だ。
「ひとりが救われればその向こうにいる何人かも救われる。カウンセリングを通してそれを実践していきたいと思います」

講師紹介

塚越 友子(つかこし ともこ)
塚越 友子(つかこし ともこ)
東京中央カウンセリング代表カウンセラー
スイス生まれ。東京女子大学大学院にて社会心理学修士号取得。広報PR職在職中に、内臓疾患からうつを発症。昼間、長時間働き続けることが困難となりホステスへと転身。のちに銀座NO.1の座を獲得する。現在は薬を使わず心の問題を解決しようと心理カウンセラーとして活動中。ナカイの窓(日本テレビ)Rの法則(Eテレ)など多数のメディアでも活躍中。著者に「辞める前に読む今日から使える職場の深層心理」(世界文化社)など多数。