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イベントレポート

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2016年2月23日(火)19:00~21:00

チャーリィ古庄(ちゃーりぃ ふるしょう) / 航空写真家

写真で見る世界のビックリ空港&おもしろエアライン2

昨年、ご好評いただいた世界の変わった空港や、日本では考えられない航空会社のフライトなどを写真でお見せしながら解説するセミナーの第二弾。新しい旅の話やなかなか行くことができない地域の飛行機旅の話などを、撮影現場の解説や裏話、苦労や楽しみを写真を交えながら、航空写真家のチャーリィ古庄氏にご紹介いただいた。

ヘリコプターを借りての空撮は「1分間で5,000円」

昨年5月につづいて二度目の開催となるチャーリィ古庄氏の『写真で見る世界のビックリ空港&おもしろエアライン』。今回は世界の航空機の中でもANAを中心にスターアライアンス各社の機体、そしてチャーリィ氏ならではの珍しい航空機や空港などの写真が満載。前回同様、撮影の裏話などを交えながら、航空写真の魅力に迫ってみた。
冒頭のスライドはチャーリィ氏が居宅を構える成田空港周辺を離着陸するANA機。航空機の撮影というと空港で行なうものというのが一般的なイメージかもしれないが、チャーリィ氏のようなプロの写真家となると最適の撮影ポイントを求めて空港外に撮影場所を定めることも珍しくはない。その究極はやはりヘリコプターやセスナを借りての空撮だ。
「ヘリは普通に借りると1分5,000円。管制塔の指示で待たされたりすると、すぐに5万円くらいはドブに捨てることになります」
田園風景の上を飛んでいる旅客機を真上から写した1枚。実はその1枚には数十万円の費用がかかっていたりする。それを写すカメラマンはというと「風や震動の中、窓から身を乗り出して撮る」。気温が低いうえにスピードを下げても時速150キロ程度という空からの撮影はまさに命がけのハードワークだ。
前半はスターアライアンス各社の機体の内観や外観。同じボーイングやエアバスの機体でも会社によってシートやトイレの仕様が違う。人気のシンガポール航空となると、通常のエコノミー、ビジネス、ファーストに加え「スイート」まであるという豪華さ。珍しい機体は必ずしも日本発着便があるわけではないので、こうした撮影をするときは「いったん現地まで飛んで、そこからさらにその飛行機が就航している便に乗る」という。
「ニュージーランド航空のオークランドーロサンゼルス線を撮ったときは、いったん日本からオークランドへ飛んで、そしてロサンゼルスとオークランドを往復して、またオークランドから日本に帰ることになります」
結果、「1泊4日の南米」や「0泊3日のパース」といった強行スケジュールがつづくこととなる。これが機内の撮影ならともかく、季節感や場所を限定された外での撮影となると、一度ではなかなか撮れなかったりもする。

機体の番号を追跡する「スポッティング」

「たとえば最近ですと、けっこうきつかったのがANA機と富士山を絡ませる写真でした」
成田空港から富士山までは約200キロメートル。滑走路を移動する機体の背景に富士山を入れようと思っても、よほど真冬の空気のクリアな日にしか撮れない。羽田にしても同様。ならば富士山に近い静岡空港ならどうかといえば、「静岡空港のANA便は1日に2往復しかない」という厳しい条件。富士山に雲がかかっておらず、飛行機を空のちょうどいい高さに持って来るには撮影ポイント探しに加え、運も必要となってくる。たった1枚の写真を撮るために何度もその場所へと足を運ぶこともけっして少なくはない。
最近の航空業界の話題といえば、やはり初飛行を成し遂げたばかりの国産旅客機MRJ(三菱リージョナルジェット)だ。昨年11月の飛行試験の際には報道各社のカメラマンだけで350名が集合。けっして光線状態がよいとは言えないなかでの撮影を済ませると、カメラマンの中にはすぐにパソコンを開いて写真を電送する人もいる。便利なようだが、明るい野外でのパソコンは液晶が反射して意外と使いにくいもの。机もないので膝に置いたパソコンに頭から上着をかぶって向かう姿からはカメラマンの苦労がしのばれる。
自身もパイロットで現役時代はロサンゼルスからグランドキャニオンを往復していたチャーリィ氏。今でもよく撮影するのはそのアメリカの砂漠地帯の空港。土地が広く駐機料の安いこうした空港には売却先や解体を待つ中古機が集まっている。上空から撮影した写真は圧巻。並んでいるのは見たことのある世界の航空会社の機体。飛行機によっては塗り替えて別の国の空を飛ぶ。中には旅客機から貨物機へと役目を変えるものもあるし、変わり種だと山火事消化用の飛行機へと転身するものもある。こんなふうに、ある飛行機がカラーリングを変えて別の会社の飛行機へと変わっても追いかけることができるのがこの世界のおもしろいところ。なぜかといえば、飛行機には機体ごとに必ず番号がついているからだ。航空ファンの間ではそれを追跡する「スポッティング」という趣味があるという。チャーリィ氏もスポッティングは「高校の頃からの趣味」。これまで撮ったデジタル写真を調べてみると、たとえば全世界で約200機が飛んでいるボーイング社のMD11ならば、すでに189機を撮影している。
「フィルム時代の写真も調べてみれば、たぶんMD11の97パーセントくらいは撮っているんじゃないでしょうか」

夢は「飛行機を持つこと」、そしてもうひとつのギネス記録を

この「スポッティング」はイギリスが発祥というのが通説。が、人によっては「日本の方が先」だともいう。参考にチャーリィ氏が見せてくれたのは、江戸時代の大名や旗本の紋所や官位などを記載していた「武鑑」。江戸の町人たちは大名行列がやって来るとこの「武鑑」を片手に「あれはどこそこ様の行列だ」と見物していたという。
セミナーの最後は質問タイム。幾人かの参加者の質問のうち、もっとも多かったのが撮影や写真加工のテクニックについて。デジタル全盛の今、写真は合成などの加工が簡単にできる。が、やはりそこはプロの写真家。「広告などだと素材だけ提供してあとは先方が加工するということはありますが、自分ですることはありません」。この仕事の楽しさは「苦労しながら撮ること」だ。
セミナー中、印象的だったのはアメリカのエアパーク。これは自宅と滑走路がつながった飛行機オーナーたちの暮らす町。人々はガレージに飛行機を置き、毎日それに乗って通勤や通学をする。未来へ向けてのチャーリィ氏の「夢」は「飛行機を買ってこういうところに家を持つこと」だ。そしてもうひとつの「夢」は「スポッティング」でのギネス記録。現在所持している「世界で最も数多くの航空会社に乗った」というギネス記録に加え、「そういうカテゴリーがあるならばスポッティングでもギネスを取りたいですね」。
「世界の空を飛んでいる航空機は2万5000機から3万機。気が遠くなるような話ですけれど、頑張ってリストを作成したいと思います」

講師紹介

チャーリィ古庄(ちゃーりぃ ふるしょう)
チャーリィ古庄(ちゃーりぃ ふるしょう)
航空写真家
1972年東京都生まれ、旅客機専門の航空写真家。世界で最も多くの航空会社に搭乗したギネス世界記録を持つ。主に国内外の航空会社、空港などの広報宣伝写真撮影、航空雑誌の撮影、カメラメーカー主催の航空写真セミナーの講師なども行なっている。旅客機関連の著書、写真集は20冊ほどあり。最新刊は「びっくり飛行機で行く世界紀行」(イカロス出版)がある。Canon EOS学園航空写真教室講師。
ANAのFacebookの飛行機写真やANAマイレージクラブの航空写真セミナー講師を務める。
HP:http://www.charlies.co.jp/