スルガ銀行 Dバンク支店

SURUGA d-labo. Bring your dream to reality. Draw my dream.

イベントレポート

イベントレポートTOP

2016年3月5日(土)13:30~15:00

遠山 眞人(とおやま まさと) / 行政書士

生前に想いを遺したい
~遺言書と民事信託の活用について~

近年、遺産分割に伴う家庭裁判所への相談件数が増加傾向にあるのを、ご存知だろうか。
相続が「争族」にならないよう、生前に遺言書を作成しておくことは、家族への最後のプレゼントといえる。しかし、実は遺言書だけでは十分と言えないケースもある。
今回のセミナーでは、大切なご家族のために「生前に知っておいていただきたい、新しい相続のありかた」についてお話しいただいた。たとえば、ペットが遺されるものの、世話を頼める家族や友人がいないときに、信託の仕組みを活用して生前に準備をすすめておく方法など、具体的なケースも交えて解説が行なわれた。

将来の相続に備えよう

すでに超高齢化に突入していると言っても過言ではない日本の社会。老齢化と小家族化が進み、介護の問題もますます深刻化している。また、昭和60年代から平成にかけてのバブル経済の影響で不動産価格が高騰したことも相まって、一般の人々の遺産に対する権利意識が高まってきた。
今回のセミナーでは、相続や遺言、民事信託などについて勉強する。講師は、事業再生・事業継承のコンサルタントとして活躍される遠山眞人氏。「私が現在の仕事に就くきっかけとなったのが、いわゆるお家騒動。自分自身が事業継承問題に巻き込まれ、大きな問題だと実感したのです。」
相続を巡る紛争解決の方法としては、まず、遺言書作成が挙げられる。遺言書は、すべて自筆で書く「自筆証書遺言」と、公証人に頼んで作成してもらう「公正証書遺言」、「秘密証書遺言」の3種類に分類される。「紛失の問題など考えると、やはり公正証書遺言をおすすめしています。」と遠山氏。
平成になり、信託銀行などが公正証書遺言とセットの遺言執行の一種である「遺言信託」という金融商品を販売したことにより、公正証書遺言は巷にもかなり普及しているそうだ。
遺言証書をつくるときのポイントには、以下の5つが挙げられる。

① 家族としっかり話し合う
「家族でよくコミュニケーションを取り、相続人になる方たちの考えや経済事情を配慮することが必要です。」

② 財産を把握する
「不動産関連も含め、実際の財産がどのくらいあるのか登記簿などで把握しておきましょう。借金という負の財産のことも忘れずに。」

③ 遺留分を理解する
遺留分とは、仮に遺言書で相続財産がなかったとしても、最低限の権利としての相続財産を確保できる権利のこと。兄弟姉妹には遺留分はなく、また相続人の組み合わせにより割合は変化する。

④ 事業の継承について
「店舗などの事業を継承する場合には店舗が所在する土地の相続、会社であれば株式の相続を誰がするのか考慮する必要があります。」

⑤ 相続税を把握する
「平成27年度の税改正で相続税の基礎控除が縮小されたことにより、実質増税となっています。場合によっては税理士の先生に相談することも必要でしょう。」

生前の想いを実現するためには?

「基本的に相続財産は被相続人の想いに基づいて実現されるべきだと思います。」と遠山氏。しかし、その想いの実現が現実問題と矛盾することもしばしば。具体例とその解決案を挙げてみよう。

① お金か土地か
「通常は現金を優先的に希望する相続人が多いのですが、すでにその土地に住んでいたり、事業が営まれていたりするときは土地を優先します。」

② 事業の存続
「事業を継承する後継者は、通常1名。主要な財産が後継者に集中してしまうのを避けたいときは、株式と不動産・金銭をそれぞれの相続人に分けて相続させるよう遺言書に記載する方法もあります。」

③ 生前贈与
「夫婦であれば、居住用財産贈与の配偶者控除を検討しましょう。生前贈与に関する注意点としては、後々ほかの相続人に贈与の事実がわかるようにしておくこと。暦年贈与は年間110万円までの非課税枠を上手に活用すれば、相続税がかからないこともあります。」

④ 養子縁組
「夫婦に子供がいない場合で、特に事業継承や老後の介護などを考慮するときなどに選ばれる方法です。血のつながりがなくても相続の権利は実子とまったく同じです。」

最近では、「終活」や「エンディングノート」という言葉がよく聞かれるようになり、遺言書作成などに関しても以前ほどの反発はなくなってきた。とはいえ、「遺言書を書いてほしい」と子供から頼まれたら、やはり多少の抵抗を感じる人がほとんどだろう。
「現在では、エンディングノートに法律的な力はありません。でも、後々のことを考えて、自らの意思をしたためておくことは大事なことだと思います。面と向かっては伝えにくいことも、ここにならば書き記すこともできるでしょう。また、書くだけでなく、話している様子を動画に撮ったりするのも一案です。」
被相続人が自らの意思を遺しておくことが広がりつつある昨今。自分のやりやすい方法で意思を表明しておくと良いと遠山氏は語る。

新しい相続の方法

新たな相続として、民事信託という方法がある。
もともと信託といえば、商事信託を指すことが多かった。つまり、金融庁などの公的機関の許認可を受けた信託銀行等が受託者(信託された財産を管理・運用する人)となり、不特定多数の委託者(財産を信託する人)から多くの財産を集め、受託者名義で投資・運用することである。
これに対し、民事信託とは許認可のある信託銀行等を介さずに、個人や企業が委託者・受託者・受益者となる信託行為を指す。あくまでも一個人・一法人の行為なので契約のみで有効となる。小泉内閣の時代に、信託法が大幅に改正されたことにより可能となった。
民事信託は相続対策として極めて優れているそうだ。「公正証書遺言と民事信託のセットは最強です。」と遠山氏。

また、金銭贈与信託という契約もある。これは、暦年贈与を行なっている場合において、委託者が認知症を発症しても引き続き受託者が信託された財産の管理を継続できるので、委託者の意思を貫徹することが可能だ。
時にデリケートな問題も含むテーマをわかりやすく解説してくださった遠山氏。最後はこのように締めくくった。

「遺産相続を考えるとき、私は“家族とは?”と思うのです。円滑に進めるため何よりも大切なことは家族のコミュニケーションです。大切な遺産を有意義に活用できるようにいろいろと話し合いましょう。今のところ、終活やエンディングノートは100%有効な方法ではありませんが、うまく活用することで、お互いの気持ちがわかり合えると思います。また、心配なことや不安なことがあったらぜひ専門家に相談してみてください。役に立つアドバイスを受け取れると思います。」 文・土屋茉莉

講師紹介

遠山 眞人(とおやま まさと)
遠山 眞人(とおやま まさと)
行政書士
1960年6月28日生まれ。55歳。建材メーカーの役員を経験後、事業再生・事業継承のコンサルタントとして独立。平成26年4月2日遠山行政書士事務所開業。役員時代に数千の契約書作成に参画、銀行とのパイプづくりの経験を活かし、起業支援と事業継承のコンサルタンティングを行なっている。公正証書遺言書作成、遺産分割協議書作成を行なう傍ら、日本の民事信託の第一人者である司法書士の河合保弘先生の指導を受ける。