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イベントレポート

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2016年3月17日(木)19:00~21:00

鈴木 雅子(すずき まさこ) / ANAビジネスソリューション株式会社

ワンランク上のビジネスパーソンを目指して

仕事や日常生活において、周りの方に対して「接遇」の気持ちを持つことはコミュニケーションの円滑化、ひいては、良好な人間関係を築く要になります。
本セミナーでは、対人関係を築くうえでの第一印象の重要性を再認識し、短時間で好印象を抱いていただくためのポイントについて、実践を交えながらお話しいただきました。

大切なのは「接遇」の気持ち

講師の鈴木雅子氏は元ANA(全日空)の客室乗務員。現在はANAグループの中でもマナーやコミュニケーションの研修などを担っているANAビジネスソリューションの専属講師として活躍中。今回のセミナーではその鈴木氏に、ANAが大切にしている「接遇」の気持ちを軸としたコミュニケーション術について実践を交えながら解説していただいた。

まず「接遇」とは何か。「接」とは「つなぐ」、「近づく」、「会う」といった意味。そして「遇」とは「思いがけなく出会う」。「つまり『接遇』とは、思いがけなく出会った方に対して、おもてなしの心で接すること、それを意味します」

鈴木氏も客室乗務員時代は常にこの「接遇」の気持ちを念頭に仕事に励んでいたという。
「ただ、たんに頭で考えるのと実際にそれを実感するのとでは違うんです。私に『接遇』の意味を教えてくれたのはあるお客さまでした」

乗務2年目のある日。羽田空港に到着した飛行機の機内で、落としたボールペンをひとり床をはいつくばるようにしてさがしている男性客がいた。鈴木氏も一緒になってさがしたがボールペンは見つからない。
「お客さまは、安物だからいいよ、と言ってくれましたが、それは私に対する気遣い。本当ははいつくばってでも見つけたい、そういう大切な物だったはずなんですね」

男性が降りたあとも気になった鈴木氏はボールペンをさがしつづけ、ついには5、6列前の座席の下にそれを見つける。手荷物検査場まで走って追いかけた若い客室乗務員に、喜んだ男性は「何でもいいからあげたい」と鞄の中をまさぐり、当時は招致活動中だった長野五輪のピンパッジをプレゼントしてくれた。そのピンバッジは「もちろん今でも大切にしています」。またあるときは乗客として乗ってきた橋本龍太郎首相(当時)の担当となった。フライト中、疲れて眠っていた首相は飛行機を降りる際に鈴木氏ににっこりと微笑んで「おかげでゆっくり休めたよ。ありがとう」と声をかけてくれた。
「さりげない笑顔でしたが、人を動かす力ってこういうものなのかなと思いました」

人と人が出会う。「そこに無駄なことはない」という。
「一瞬でもその方の心に残れば、それは『接遇』です。この気持ちを会社や家庭でも持っていただけたら、よりあたたかい組織や家庭になるのではないでしょうか」

「笑顔」と「アイコンタクト」が第一印象を決める

この「接遇」を日々の生活の中で生かしていくのに大切なのが「自分以外は皆、お客さま」という「内部顧客」の視点だ。普段からまわりにいる家族や同僚に対してもそうした相手を大切に思う気持ちを表現できれば「コミュニケーションがスムーズになる」し、「お互いに仕事をしやすくなり職場が明るく、楽しくなる」。そしてひいてはそれが「いい仕事につながる」という。

まずは「第一印象の重要性」について講義。「15秒で決まる」という第一印象は「見た目」が半分以上を占める。このときに絶対に欠かせてはならないのが「笑顔」だ。
「心の表われである笑顔は相手の方の警戒心や不安感をなくし、安心感を与えてくれます」

同時に大事なのが「アイコンタクト」。目は「心の窓」。3秒くらいでも目線を合わせれば、それは相手に対する「関心」や「歓迎」の気持ちとなって伝わる。

挨拶もむろんのこと重要な要素のひとつ。挨拶の際はなるべく「自分から先に」、そしてできることなら続けて、相手の名前など何か一言を加えて伝えた方がいい。
身だしなみや立ち居振る舞いもきちんとしておくこと。ここでは参加者同士で挨拶や基本姿勢での立ち方などを実践。休憩を挟んでの後半では「握手のマナー」と「レディーファースト」について学んでみた。

握手をするときの基本は「背筋をのばして姿勢を良くする」ことと「笑顔で相手の目を見ること」。差し出す手は「右手」。相手の手を握る力は「強すぎても弱すぎても駄目」。ちょうどいい状態を「少しキープする」といい。男性と女性の場合は「先に手を出すのは女性」。男性は女性が手を差し出すのを待たねばならない。もうひとつ気を付けたいのは「握手をしながらお辞儀はしない」ということ。が、実践してみるとついやってしまいがちなのがこの「握手しながらのお辞儀」だ。
これには「日本人同士の場合は仕方がないかもしれません」と鈴木氏も苦笑。ただし相手が外国人の場合は注意しておくべきだろう。

レディーファーストのマナーとは

「レディーファースト」は国際儀礼である「マナープロトコール」5原則のうちのひとつ。「序列」や「右方上位」、「答礼・相互主義」、「異文化の尊重」といった重要なルールのひとつに数えられているものだ。もともとは「中世の騎士道精神から生まれた習慣」で、「男性が女性をはじめ老人や子供などに対して気遣いと敬意を表わすこと」。男性はそれをスマートに表現し、女性は上手に美しく受けることでマナーは成立する。国によってその表現の形は少し違うこともあるが、日本にも昔から男性が女性の前を歩くことで女性を守るといった習慣などがあったという。
「人はみんな女性から生まれている。だから女性を尊重するといった文化があるんですね」

日常の中でレディーファーストが必要となる場面といえば、エレベーターの乗り降りやレストランでの食事などだ。エレベーターは女性優先。出る際に邪魔になるときは男性は先に出て相手に体をオープンにする形で扉を押さえる。レストランの入店は案内がいれば女性が先で、いない場合は男性が先。上座に座るのはもちろん女性だ。冬ならば男性は女性にコートを着させるといったサービスもしたい。夫婦の間でも、こうしたちょっとしたことで互いに気持ちが新鮮になるという。

最後は「ANAグループのスピリット」。
「小さいことほど丁寧に、当たり前のことほど真剣に。実践するにはなかなか難しいのですが、これをキーワードに日々『接遇』の気持ちで講師の仕事をしています」

鈴木氏の「夢」は「人を育てるという仕事をつづけること」。
「仕事を通して、その方の成長やまわりの人へのいい影響を見られたらいいなと思います」

講師紹介

鈴木 雅子(すずき まさこ)
鈴木 雅子(すずき まさこ)
ANAビジネスソリューション株式会社
ANA在職中は主に国内線を担当しチーフパーサーとして乗務。また、新卒社員の採用活動、各種キャンペーンスタッフとしてANAの広報活動にも参画。退職後、ANAビジネスソリューション株式会社人材・研修事業部の講師として企業研修に多数携わる。