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イベントレポート

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2016年4月13日(水)10:15~11:45

柴田 秀夫(しばた ひでお) / フォトライター

女性写真教室・はじめての写真

デジタルカメラの普及に伴い、初心者でも扱いやすいデジタル一眼レフカメラやミラーレス一眼カメラが数多く発売された。読者のみなさまの中にも、自分のカメラをお持ちの方は多いのではないだろうか。今回は、フォトライターの柴田秀夫氏をお招きし、手持ちのカメラを使った魅力ある写真の撮り方について全6回の写真教室を開講。柴田氏は、数々の写真展を開催するかたわら、沼津や浜松で写真教室を開講している。
今回、受講者は、それぞれ手持ちのデジタル一眼レフカメラ、ミラーレス一眼カメラを持参。実践的な講義に、受講者は夢中になってプロのスキルを学んでいった。

「半押し」で写真のピントを被写体に合わせよう

最初に受講者は、自分が使っているカメラ、ならびにレンズのズーム範囲・明るさについて用紙に記入したのだが、「自分のカメラだけど、レンズのことは全然わからない」と記入の仕方に戸惑う人ばかり。今回の受講理由は、「旅行先でのスナップ写真を上手に撮りたい」「赤ちゃんや記念写真を撮るコツを知りたい」「お年寄りのいい表情を引き出したい」など。カメラに詳しいわけではなく、写真をこれから学ぶという受講者が多く、理由はさまざまながら思い出を美しく残したいという目的は共通していた。

ここで、柴田氏が、2009年に発行した自著「続 一枚の写真 写真と詩」を参加者全員にプレゼントしてくださった。いくつかの作品を観ながら、写真の情景を想像していく。何気ない日常の中で出会った町の人々、子ども、動物…。自然体な、日々の生活の一コマを切り取った写真に、そっと詩が添えられている。観ていて心がじんわりと温かくなるような、そんな写真集だ。
「写真は、撮っている人の気持ちが出るものです。カメラは“機械”ですが、同じ被写体を撮っても同じように写るわけではありません。そういうことも一緒に勉強していきたいですね。」

最初に、ピントの合わせ方について教えていただく。「大事なのは、ピントと露出(※1)が合っていることです。この2つで、写真の出来栄えが変わります。」
デジタルカメラは、シャッターボタンを「半押し」することで、ピントと露出をカメラが自動で合わせてくれる機能がある。今回の参加者の中には、「半押し」の機能を知らない方もいたようだ。半押しで被写体にピントを合わせたまま、カメラを動かしたり、ズームの倍率を変えたりすることも可能。被写体を、画面のどの位置にでも配置できるという。

次に、構図について、基礎的な知識を伝授いただく。写真や絵画などの視覚芸術作品においては、「三分割法」という法則が利用されているそうだ。等間隔に縦3分割、横3分割した際にできる4つの交点のいずれかに被写体を配置すると、バランスの取れた作品になるという。

ここで、先生が撮影した紙焼き写真が披露される。「目的を持って写真を撮るのももちろん良いですが、ぜひ、自分の『感動』を撮ってください。そうすると、写真の幅が広がりますよ。」
「感動」は私たちの周りにたくさんある。カメラを持ち歩いて、「今」を写していくことが大切だそうだ。
(※1)露出…光の量のこと。プラス(+)補正で明るく爽やかに、マイナス(-)補正で暗く重厚感のある写真になる。

シャッタースピードと絞り値について知ろう

レンズについて、説明を受ける。レンズのズームの値は、28mmや、55mmといった数値で表わされる。「18-55mm(広角レンズ…焦点距離は短く、映る範囲が広いため風景の撮影に向いている)」「55-250mm(望遠レンズ…焦点距離は長く、映る範囲は狭いため、遠くの被写体を狙う撮影に向いている)」といったふうにレンズ本体に記載されているので、自分のレンズを確認してみよう。

次に、レンズの明るさについて。表示方法は、メーカーによってさまざまなので、見方がわからなければ、説明書を確認するのがよい。
写真の明るさは、露出(=光の量)で決まるが、これは、シャッタースピードと絞り値によって調整される。シャッターとは、「光の通り道を開け閉めする門」の役割を持つパーツ。シャッタースピードが遅ければ、光がたっぷり入るため明るくなるがブレやすくなり、反対にスピードが速ければ暗くブレにくい写真となる。絞り値はF値ともいわれる、光の通り道の広さを表わし、人間の目にたとえると瞳孔にあたる。絞り値が大きければ、光の通り道が狭いため暗くピントの合う範囲が広くなり、反対に絞り値が小さければ道が広くなり、明るく背景がボケた写真になる。

次にカメラの撮影モードのダイヤルについて。カメラには、「P」「Av(A)」「Tv(T・S)」「M」などのダイヤルがある。

「P(プログラムオート)」は、カメラがシャッタースピード、および絞り値を自動決定してくれる。

「Av(A、絞り優先オート)」は、自分で決めた絞り値に対し、露出が適正になるよう、カメラが自動的にシャッタースピードを調整。周りの暗さ次第で、自動でストロボが上がるようになっているが、ストロボが上がると、光に照らされた分、写真に影が発生してしまう。「ストロボを使いたくない写真なら、自分で下げることもできますよ。」と柴田氏。受講者からは「勝手に下げていいとは、知らなかった。」との声も聞かれた。

「Tv(T・S、シャッター優先モード)」は、“Av”の反対に自分で決めたシャッタースピードに対して自動で適正な絞り値になるよう調整される。
実際にカメラで値を確認してみるのがわかりやすい。「P」モードにカメラを設定し、カメラを構え、半押しにしてみる。この時、カメラに表示されるシャッタースピード、および絞り値(F値)を確認してみよう。晴れた日では、「シャッタースピード1/125、絞り値F8」、曇りの日では、「シャッタースピード1/60、絞り値F6」くらいになるという。

「M(マニュアル)」は、シャッタースピード、および絞り値を自分で決定したいときに使う。
「花をアップで撮るようなとき、風で揺れたりすると撮りづらいですよね。そういうときにマニュアルモードを使うといいですよ。シャッタースピードを上げることで、ブレが抑えられます。」
たとえば、子どもの運動会といった動きがあるシーンでは、シャッターを早く切る必要があるので、1/500で切るとよい。逆に、シャッターを遅く切った方がよいようなシーンは、滝。1/500で切ると、滝の水がつぶつぶの状態で写るが、1/15で切ると、帯のような美しい状態で撮影できるという。この時、Tv(シャッター優先)モードを使うとよい。

「フィルム時代は、細かな設定や操作法を理解していないと一眼レフカメラでの撮影ができませんでしたが、今はこれらを知らなくても使えるようになりました。しかし、知っていると知らないとでは格段に差がでます。」

絞り値の設定次第で、写真の雰囲気が変わる!

今回は、絞り値の設定次第で、写真がどう変わるかを実践で試してみる。「d-labo静岡」のテラスに出て、木を被写体にして撮影。一番低い絞り値(F3.5など)、ならびに一番高い絞り値(F22など)で、写真にどのような変化が出るか確認する。

写真Aは、低い絞り値で撮影したもの、写真Bは、高い絞り値で、木を被写体にして撮影したものだ。絞り値の低い写真Aは、被写体が主役になり周囲がぼかされる。そのため、被写体が際立つのがわかるだろうか。逆に、写真Bは、比較的全体がはっきり映されている。一つの被写体の撮影は、低い絞り値で、複数の被写体の撮影は、高い絞り値で撮影するとよいようだ。

なお、屋外での撮影は、太陽の光があるためシャッターが切りやすい(光が十分足りている状態)。しかし、屋内の撮影は、絞り値F22といった設定では、シャッターが切りづらく(光が足りていない状態)、F16あたりに設定する必要があるという。また、素人がぶれずに撮れるシャッタースピードは1/60、プロでも1/30が限界だという。それ以上は、三脚が必要となってくるそうだ。

初回の講座終了後、受講者から「一眼レフを持っていたのに、その機能について全く理解していなかった。とても勉強になった。」「写真の背景をぼかす撮り方は知らなかった。絞り値については、まだ完全には理解できていないが、自宅でも練習して自在に使いこなせるようになりたい。」などといった声が聞かれた。
絞り値の設定を変える撮り方は、花などで練習するのが一番わかりやすいという。まずはカメラの説明書を取り出し、絞り値の設定方法を知ろう。そして、天気のいい日に外へ出かけ、花を被写体に一眼レフを使った撮影を実践してみてはいかがだろうか。

文・河田 良子

講師紹介

柴田 秀夫(しばた ひでお)
柴田 秀夫(しばた ひでお)
フォトライター
静岡市生まれ。1979年国際児童年記写真コンクールで「厚生大臣賞」を受賞し、国際児童年ポスターとして採用される。その後、数々の写真展を各地で開催し、現在は写真教室「写友二水会」「写友三水会」などで講師を務める。著作に、詩集「娘たちに」、写真と詩「続 一枚の写真」、「平成24年度ベストエッセイ集」などがある。