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イベントレポート

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2016年4月24日(日) 13:30~15:00

小澤 正人(おざわ まさひと) / 映画解説者

懐かしの映画黄金期にようこそ

昭和の娯楽の代表といえば映画だった。誰しもがスクリーンの前でわくわくした思い出を持っているのではないだろうか?
今回は、年間300本以上の映画を鑑賞・研究されている映画解説者の小澤正人氏をお招きし、参加者のみなさまを懐かしの昭和映画黄金期へと誘おう!という企画。
「銀座の恋の物語」「上を向いて歩こう」「高校三年生」など、昭和の名曲である映画主題曲の流れるシーンを鑑賞しながら、楽しい映画の話満載でお送りする90分。
さあ、憧れの銀幕の世界へタイムスリップしてみよう!

小学生の頃から現在まで鑑賞した映画は1万本以上!

今回のセミナーは「懐かしの映画黄金期にようこそ」と題し、昭和30年代から40年代にかけての日本映画について実際の映像を見ながら解説していただいた。
講師にお招きしたのは、映画解説者として活躍中の小澤正人氏。昨年の講演回数は170回に及ぶほどの人気で、これからも青森県や秋田県ほか、さまざまな場所での講演が予定されている。
さて、日本映画の黄金期といえば昭和30年代。昭和33年から34年にかけて、静岡市内には27館もの映画館があった。昭和35年の統計における映画館の数は、全国で7500館だという。
「当時、娯楽といえば映画でした。土日になると家族で観に出かけるのです。我が家は、父親が邦画ファン、母親が洋画ファンだったので、ほぼすべての映画を見ることができました。」
中学1年生のときから、観た映画のタイトル、映画館の場所、主演、監督などをすべてノートに書き留めていたという小澤氏。
「生意気にも批評まで書いていましたね。ノートの内容をパソコンに移したのですが、中1から現在まで9800本の映画を観ていました。小学校の頃の分を合わせると1万本を超えますね。」
当時の映画は2本立て。大ヒットとなったものも、そうでもなかったものも、ほぼすべての映画を楽しんだ。その経験がいま、とても役立っているという。
「その頃は、名もない監督がいい映画をたくさん撮っていました。みなさまも、機会があれば、こういった映画を観ていただきたいと思います。当時の活気が画面にも表われていて、それは見応えがあるのです。」
昭和30年代には、松竹、東宝、大映、日活、新東宝および東映などの映画会社により、年間約600本の映画が作られた。主役級の役者はもちろんのこと、端役の役者もそれぞれの制作現場を掛け持ちするほど大変な忙しさだった。前の現場が押して、主役が切られ役を待つこともあったそうだ。
「切られ役の人には台本など渡されなかったので、なぜ切られるのか理由もわからず切られていたんですよ。また、当時は制作数が多く、スター主演の大作を1本作ると、次はバランスを取るためにやや軽めのものが作られました。でも、そういった中にも素晴らしい作品がたくさんあります。低予算で作ったのに思いがけずヒットしたものもあり、今も昔も何が当たるかわからない面白さがありますね。」

昭和を代表する歌謡映画を楽しんでみよう

日本映画とひとくちで括っても、チャンバラ映画、文芸もの、および恋愛ものなどジャンルはさまざま。今回は、小澤氏の得意とする歌謡映画にフォーカスした。
「歌謡映画の代表といえば美空ひばりです。彼女が、主演の映画の中で5~10曲ほどヒット曲を歌うわけです。歌謡映画に関してはあまり語る人がいないのですが、私にはとても興味深く感じられます。」
最初の5本はまさに日本映画の黄金期に作られた代表作。主題歌が映画の内容と素晴らしく連動している。

1.「喜びも悲しみも幾歳月」(松竹・昭和32年)
監督・木下恵介
出演者・高峰秀子、佐田啓二
主題歌・若山彰「喜びも悲しみも幾歳月」


2.「有楽町で逢いましょう」(大映・昭和32年)
監督・島耕二
出演者・京マチ子、菅原謙次
主題歌・フランク永井「有楽町で会いましょう」


3.「東京のバスガール」(日活・昭和33年)
監督・春原政久
出演者・美多川光子、コロムビア・ローズ
主題歌・コロムビア・ローズ「東京のバスガール」


4.「南国土佐を後にして」(日活・昭和34年)
監督・齊藤武市
出演者・小林旭、浅丘ルリ子、ペギー葉山
主題歌・ペギー葉山「南国土佐を後にして」


5.「英雄候補生」(日活・昭和35年)
監督・牛原陽一
出演者・和田浩二、守屋浩
ヒット曲・守屋浩「僕は泣いちっち」


この時代は、映画の作り手だけでなく、鑑賞する側も盛り上がっていた。たとえば「南国土佐を後にして」では土佐のお祭りシーンがあるが、これは映画のために土佐が協力してわざわざ開催したものだ。

「活気のあった時代は、画面にもそれが表われていて、自信満々というか、画面が非常に締まっているんです。黄金期に制作されたものを観るのは贅沢なことですね。」
続く5本は黄金期から数年後、やや映画人気の低迷が見られる時代のもの。「製作費がかかるスター主演の映画はやめてアイドル系にしよう、と考えが変わった時代です。この頃の映画は「青春歌謡映画」と呼ばれています。」

1.「銀座の恋の物語」(日活・昭和37年)
監督・蔵原惟繕
出演者・石原裕次郎、浅丘ルリ子
主題歌・石原裕次郎、牧村旬子「銀座の恋の物語」


2.「上を向いて歩こう」(日活・昭和37年)
監督・舛田利雄
出演者・坂本九、浜田光夫、高橋英樹、吉永小百合
主題歌・坂本九「上を向いて歩こう」


3.「いつでも夢を」(日活・昭和38年)
監督・野村孝
出演者・吉永小百合、橋幸夫、浜田光夫、松原智恵子
主題歌・吉永小百合、橋幸夫「いつでも夢を」


4.「高校三年生」(大映・昭和34年)
監督・井上芳夫
出演者・舟木一夫、姿美千子、高田美和、倉石功
主題歌・舟木一夫「高校三年生」


5.「エレキの若大将」(東宝・昭和40年)
監督・岩内克己
出演者・加山雄三、星由里子、田中邦衛
主題歌・加山雄三「君といつまでも」


「1895年にエジソンが発明して以来、現在まで映画の歴史が続くわけですが、断片的にその時代の人気映画を観てもつまらないのです。歴史を繋げて観るとその良さが味わえると思います。」と小澤氏は語る。

「自分の人生だろ!」一歩踏み出す勇気を!

映画製作本数が450本ほどになる昭和40年代、流行したのはグループサウンズの音楽が流れる映画だった。小澤氏が一押しの映画は以下の2本だ。

1.「想い出の指輪」(松竹・昭和43年)
監督・齊藤耕一
出演者・ヴィレッジ・シンガーズ、尾崎奈々
主題歌・ヴィレッジ・シンガーズ「想い出の指輪」


2.「青い山脈(1963年版)」(日活・昭和38年)
監督・西河克己
出演者・吉永小百合、浜田光夫、田代みどり、高橋英樹
主題歌・神戸一郎、青山和子「青い山脈」


子供の頃から映画が大好きだったという小澤氏。現在は、その大好きな映画の解説者として引っ張りだこだが、もともとはサラリーマンだった。
「50代に入り、自分の人生はこのままでいいのだろうかと考えたんです。安定した生活を捨て、新しいことに挑戦するとなるとそう簡単には決められません。でも、違う人生を歩みたい、と思い切って早期退職しました。すると、色々な人の協力で映画の講演の話が舞い込んできたんです。そして、実際にやってみると大好評でした。」
多くの本から勇気をもらったが、中でも背中を強く推してくれたのは、そのうちのたった1文だった。「自分の人生だろ!」
「何を始めても命までは取られませんから、ぜひ一歩踏み出してみてください。そして、ときどき今日のようにタイムスリップして、映画から活力をもらっていただけたら嬉しいです。」
近い将来NPO法人を立ち上げるなど、さらに活躍の場を広げていかれる小澤氏。参加者からの熱い拍手に包まれセミナーは幕を閉じた。

文・土屋 茉莉

講師紹介

小澤 正人(おざわ まさひと)
小澤 正人(おざわ まさひと)
映画解説者
東京経済大学卒業。静岡県中小企業団体中央会に32年間勤務。退職後、映画解説者として 母校東京経済大学をはじめ、常葉大学・静岡福祉大学、公的機関など、全国各地で数々の講演をこなす。また、ファイナンシャルプランナー・NPO法人静岡県オーケストラスクールの副理事長・たばこのない社会をめざす会静岡代表としても活動。