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イベントレポート

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2016年4月24日(日)13:00~15:00

浅井 環(あさい たまき) / 一般社団法人日本アンガーマネジメント協会認定 アンガーマネジメントファシリテーター

アンガーマネジメント講座~怒りの感情と上手く付き合うコツ~

新しい生活が始まる春。新しい人間関係や生活にワクワク、ドキドキ!そんな毎日を忙しく過ごしている人に、自分の感情について少し学んでみよう、と提案する講座。今回は、私たちが持つ「喜怒哀楽」の感情のひとつ、"怒り"について学んだ。一生付き合っていく「怒りの感情」と上手く付き合うコツを身につければ、 もっと楽に穏やかに毎日を過ごせるはず。講座では、自分自身について振りかえりながら、参加者同士で意見交換をするワークショップも。他者の価値観に触れながら「怒りの感情」について学んだ。

アメリカ発祥の“怒り”をマネジメントするトレーニング

「どうしてあんなことを言ってしまったんだろう」と自分の怒りに後悔したり、言いたいことがあるのに我慢してストレスを溜め込んでしまったり。私たちは日々、“怒り”の感情に振り回されている。その“怒り”を“マネジメント”しようというのが、「アンガーマネジメント」だ。講師は、日本アンガーマネジメント協会の浅井氏。

「アンガーマネジメントは、1970年代にアメリカで発祥以来、ビジネスやスポーツ、教育の現場で取り入れられてきました。司法の現場でも、軽犯罪やDV事件などで、罰金刑とともに、「アンガーマネジメント講座を○時間受講」という命令が下ることもあります。日本に入ってきたのは2年前。大手企業では徐々に採用されるようになってきました」

浅井氏は、講座開始前に参加者を4〜5人のグループに分け、互いに簡単な自己紹介をするように促した。今回は、男女比は半々くらい、子育て世代からシニア世代まで、幅広い層が参加している。初対面の人も多いようだが、時折笑い声があがるほど、会場は和気藹々とした雰囲気に。5分ほど互いのことを話したところで、講座がスタート。

「これは、“怒らない”ようになるための講座ではありません。“怒る必要のあることは、他人を傷つけず、自分を傷つけず、モノを壊さずに上手に怒れて、怒る必要のないことは怒らないようになること”。これが、“怒り”を“マネジメントする”ということ。そのためのトレーニングが、アンガーマネジメントなのです」

そもそも、“怒り”とはどういう感情なのだろう。

「“怒り”は人間にとって自然な感情のひとつですから、まったくなくすことはできません。感情の伝達手段としては、お子さまがいらっしゃる方はよく分かるかもしれませんが、怒ることで伝わることもあれば、伝わりにくくなることもあります。また、“怒り”は、身を守るための感情でもあります。例えば、突然の暴力に応戦する、ということは、体の中の怒りの感情を出すことで身を守ろうとしている、ということだったりします。アンガーマネジメントのポイントは、“怒るか怒らないかの区別”と“怒り方”なんです」

浅井氏は、「問題となる4つの“怒り”」として、「強度が高い」「持続性がある」「頻度が高い」「攻撃性がある」の4タイプを挙げた。参加者に「どの“怒り”が多いか」を挙手してもらったところ、「頻度が高い(しょっちゅうイライラする、カチンとくることが多い)が多数だった。

「一番やっかいなのは、根に持つ、思い出し怒りをする、持続性がある“怒り”。何十年も前の浮気をいつまでも恨んでいるような場合です。恨みは病理的な感情ですので、少しずつガス抜きをしていったほうがいいですね」

ここで、自分の怒りがどういう傾向にあるかを自己診断してみる。強度、持続性、頻度についてそれぞれ10段階評価をし、さらに攻撃性については、それが自分に向くのか、他人に向くのか、モノに向くのかを10段階で評価。シートに記入し終わったら、グループで見せ合って、意見を交換。

「怒れない気持ちが溜まりにたまって自分に向いてしまう」「執念深くて、昔のことを思い出しては腹を立てている」「いきなり大爆発してしまう」と、それぞれが自分の怒り方を告白。「わかる!」「そんなふうに見えない」と、共感したり驚いたり。

「怒りについて他の人と話し合うことで、いろいろな気づきがあったのではないでしょうか。怒り方が似た者親子、似た者夫婦、ということも多いです。あなたが誰かを『火山が噴火するみたいに怒る人』と思っているように、他の人もあなたの怒り方について、イメージを持っているかもしれません。そうなってしまう前に、アンガーマネジメントできるようになっていただきたいですね」

約束を守らない家族に「イラッ」。さて、どうする?

次に、“怒り”が発生するメカニズムについて考えてみる。

「最初に“不安”“疲れた”“つらい”といったネガティブな一次感情があり、その感情が心のコップに溜まっていって、コップがあふれたときに、“怒り”という二次感情に変わる。これが“怒り”のメカニズムです。そして、メカニズムがあるものは、マネジメントできるということです」

ここで浅井氏は、再び事例を挙げる。

「家族(パートナー)と、明日から旅行に行く約束をしています。出発は朝4時なのに、まだ旅行の支度ができていません。家族(パートナー)は、『用があって出かけるけれど、19時に帰る。それから一緒に支度しよう』と言って外出しましたが、結局、帰宅は深夜1時。さて、あなたはなんと声をかけますか?」

「何やってんだ!」「おかえり」「大丈夫?」と、いろいろな返事があがる。なかには「旅行中止!」という人もいて、浅井氏も「そのパターンは初めて」と苦笑い。

「では、大多数の『何やってんだ!』という“怒り”の感情の裏側を考えてみましょう。そこには、『何かあった?』という心配、『約束を裏切られた』という悲しみ、『旅行に行けないかもしれない』という不安など、いろいろな一次感情がありました。この一次感情を相手にちゃんと伝えることが大切なのです。『明日の旅行、すごく楽しみにしていたのに』『連絡がないから心配したんだよ』などと言えば、怒らなくても、相手に気持ちがちゃんと伝わります」

「ああー」「うーん」と、会場からは納得の声が。では次のお題。「ここ1週間を振り返って、『すごく頭にきたこと』『まあまあ腹がたったこと』『軽くイラッとしたこと』を思い出して書いてください。そして、それをまたグループで共有しましょう。ただし、説明は端的に! 詳しく説明しているとまた腹が立ってきますから(笑)」

腹が立った話を披露しあう参加者たちは、なんだかとても楽しそうで、大きな笑い声も。「現代人は1分間に170個の情報を処理していると言われていますから、自分の感情をいちいち覚えていないという人もいるでしょう。忘れるのは当たりまえです。ただ、自分がどういうことに腹を立てるのか、ということは、気に留めるようにしていただきたいと思います」と浅井氏がアドバイス。

アンガーマネジメントのための3つの暗号

では実際に、どうすればアンガーマネジメントできるのか。そこには、3つの暗号がある、と浅井氏は言う。

①衝動のコントロール「6秒」

「怒りの感情のピークは長くても6秒。だからとにかく6秒待ってみましょう。一番やってはいけないのが、反射で行動してしまうこと。言い返すなら、6秒経ってから。その間に、手のひらに頭にきていることを指で書いたり、この怒りの温度がどれくらいかを数値化したりするのもいいでしょう。怒りの手前の一次感情を表現するためのボキャブラリーを増やせば、すぐに手が出たり足が出たりすることも減るはずです」

②思考のコントロール「三重丸」

「『時間は守るべき』『子どもは親に感謝すべき』『トイレのふたは閉めるべき』…。私たちの中にはたくさんの『べき』があります。この『べき』が果たされないとき、人は“怒り”を感じます。でもこの『べき』は、人や立場、環境によって異なるものです。アンガーマネジメントでは、あらゆる『べき』を、中心に『自分と同じ』、その周りに『少し違うが許容可能』、その外側に『自分と違う 許容できない』という、三重丸のどこに入るかを考え、どうしても許容できないときにだけ怒ってもいい、とします。自分の中に『べき』が多い、強いほど、怒りが生まれやすいので、不要な『べき』は捨てていくこと。どうしても譲れない『べき』は、あらかじめ相手に伝えておくことも大切だと思います」

③行動のコントロール「分かれ道」

「目の前の出来事が『変えられる=コントロール可能』か『変えられない=コントロール不可能』か、の線引きができるようになることも必要です。『変えられる』『変えられない』の分かれ道で出来事を振り分けたら、その重要性を判断し、適切に対応する。たとえば認知症のおばあさんと住んでいて、毎日同じ話をするのにイライラしているとします。でもおばあさんをコントロールすることは不可能。だったら自分が変わって、おばあさんの話を聞いているふりをしてスマホをいじっていればいい。人は変えられなくても、行動は変えられる、ということです」

“怒り”には、「エネルギーになる」「高いところから低いところへ流れる」「身近な対象ほど強くなる」「矛先を固定できない(八つ当たりにつながる)「伝染しやすい」という性質がある。社会の中で“怒り”が伝染し、矛先を変えながら増幅していくのは、私たちがよく知っている現象だ。

「すべての人が自分の感情に責任を持てれば、“怒り”の連鎖を断ち切ることができるはず。今日学んだ内容をぜひ実践していただき、さらにご家族にお伝えいただきたいと思います」

「アンガーマネジメントをもっと日本に広げたい」と夢を語る浅井氏。参加者にとっては、“怒り”に向き合うことで、自分自身を深く知ることができた、濃密な2時間となった。

講師紹介

浅井 環(あさい たまき)
浅井 環(あさい たまき)
一般社団法人日本アンガーマネジメント協会認定 アンガーマネジメントファシリテーター
1974年生まれ。大学卒業後、接客業に従事。株式会社パソナを経て研修講師として独立し、現在6年目。ビジネスマナー研修、アンガーマネジメント研修を専門としている。研修においては受講者一人ひとりに対してきめ細かなアドバイスを行ない定評がある。