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イベントレポート

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2016年5月14日(土)11:00~12:30

栗田 双泉(くりた そうせん) / 日本ペン習字研究会 師範

美文字講座 ~名前・住所を"美文字"で書こう!~

るのではないだろうか。そんな"美文字"に興味のある人を対象に、「キレイな文字を書きたい」と思う気持ちと向き合おうというセミナー。
"美文字"には、ちょっとしたコツやそれなりの決まり事があり、それらを知る事によって誰でも"美文字"に近づく事が出来る。本講座では、参加者に、自身の名前と住所を"美文字"で書くことにチャレンジしていただいた。
字を書く行為はそのまま有効的な脳トレにもなる。脳トレをしながら"美文字"を目指す!一石二鳥の時間となった。

「美文字」=「美人」の秘訣?美しい文字に関心をもとう

長年にわたってペン習字の指導に携わり、現在は日本ペン習字研究会の常任理事を務める栗田氏による講座。少し緊張気味の参加者に対して、栗田氏は「私はご覧のとおり、賞味期限も耐用年数も過ぎておりますが(笑)、美しい文字への情熱と憧れとこだわりは誰にも負けません。今日は90分という短い時間ですが、ぜひ1つでも、美文字のポイントを身につけて帰っていただきたいと思っています」と挨拶。会場はたちまち和やかな雰囲気に包まれた。

「まず、皆さんには、『美しい文字』に対する関心を持っていただきたい。たとえば、ここに私の書いた作品が数点ありますが、この文字を『美しいな』と思っていただけたなら、ぜひ近づいて見てほしいんですね。『どんな人が書いたんだろう』『きっと教養のある人に違いない』と、イメージがふくらむはずです。たとえば「花の色は うつりにけりな いたづらに わが身世にふる ながめせしまに」と詠った小野小町。日本美人の代表とされていますが、本当はそうでもなかったらしいです。でも、きれいな字を書いたことで、美しい人だと想像された。手書きの美しい文字は、人の印象も変えるのです」

栗田氏は、ペン習字と書道との違いを、「書道には芸術的側面があるが、ペン習字は、きまりを守って、だれが見ても読める字を書かなければならない。誤字や、雑な字はダメ。丁寧に、一画一画書くことが大切」と説明。「ぎこちなくても、たどたどしくても、はがゆくてもいいんです。丁寧に、ゆっくりと書いてください」

今回は、参加者が自身の住所と名前を美しく書けるようになることが目標。「でも、こんな短い時間で上手になるわけがない(笑)。本当は鉛筆の持ち方や姿勢からお教えしたいところなんですけれど、今日はとにかく、美しい字のための基本的な約束事をお伝えしますので、できるだけ覚えて帰ってください」

どの漢字にも共通するポイントを知って美しい文字を書く

まずはウォーミングアップとして、「三」「平」「成」「藤」「沢」「市」の6つの漢字が書かれた用紙が配られる。「それぞれの下に、同じ漢字を書いてみてください」と言われて、参加者は持参したペンを手に、習字に挑戦。それを栗田氏と、お弟子さんの師範、川内氏が見てまわる。

「書き始めの『トン』という“起筆”を意識して、“トン・ツー”で書いてください。はい、では最初の『三』の字。この3種類の横線は、とても大事な線。『国』『青』『気』など、三本の横線を使う字はたくさんありますが、基本は全部同じです。まず、横画はすべてやや右上がりに。一番上は両端を上に反らせて真ん中がへこむように、二本めはまっすぐ右上がりに、三本めはしっかり長めに、両端を下に反らせて真ん中が盛り上がるように書きます。一本めと二本め、二本めと三本めは等間隔で。真ん中を短く書いた人、いない? 真ん中が短いと、字が萎縮して見えますので短くしません。この長さの対比、メリハリが大切です。」

「平」の二本の横画も、しっかりと対比をつけることがポイント。「みなさんどう?足りないねぇ、足りない足りない、字が貧弱に見えますよ!」と、栗田氏の指摘が飛ぶ。「二画め三画めの“チョンチョン”は、『藤』や『美』など、名前にもよく出てきますね。これも二画めより三画めを上に打って、右上がりになるように書くと、すっきり見えます」

「成」は「書き順間違っている人いない?書き順が違うと、崩して書いたときに誤字になりますよ。『成』は横画から。『蔵』など『戈(ホコ)』が入っているものは、縦画のはらい『ノ』から書きますよ」

「次は『藤』。こんな難しい字、いやだよねぇ(笑)。“くさかんむり”の“チョンチョン”、さっき出てきたね。『月』の縦画、右の方を長く書く人がいるけれど、『月』は三日月の形を象った象形文字、下は同じ長さにそろえます。横画は等間隔で。そして『月』の右側の“つくり”の部分が、『月』とぶつからないように。字と字、線と線の間、つまり懐が狭いのはよくありません」

「沢」は、「またこの“さんずい”がくせ者!美しく書くには、見えない縦の線を想定してみましょう。一本めは、線の上から右側に。二本めは線の左側、お尻が線の上に来るように、一本めと並行に、同じ長さで書きます。そして三本めは少し間隔を開けて、線の上に打ち込むように。“つくり”の『尺』は、“さんずい”と懐を開けて書きましょう」

「市」は、「一画めと二画めの間を開けるとかっこいい。長い横線はメリハリよく、長く!『巾』はあまりすぼまりすぎないように、やや内側に」。添削の際の「この横画長すぎますか?」の質問には、「すぎないすぎない、このぐらいいね、バランスよく書けてる」と評価。

「住所に出てくるような字は、どんなふうに書いてもたいていは読めますが、美文字を目指すのなら、こうしたひとつひとつのポイントを意識して書いてください。何よりも、ゆっくり丁寧に書くことで、字に誠意が宿ります」

書き慣れているはずなのに難しい、自分の名前を美文字で

後半は、教わったポイントをふまえて、自身の名前に挑戦。栗田氏が、「皆さん、師範になっても、ご自分の名前が一番苦手だとおっしゃいます。逆に言えば、自分の名前が美しく書ければ、どんな字でも書けるはず」と参加者を励ましながら、川内氏とともに添削してまわる。

「苗字も名前も、全部嫌な字なんです」「平仮名が入っているからバランスがとりにくくて」などと悩む参加者に、「うーん、難しい字よねぇ。わかる気がする」と同意しながらも、「首はすっと長く!」「この横画はいいよ、すごくいい」「平仮名は漢字を崩して作ったもので、一筆で書けるようになっているから、ペンの運びを意識して」と、一文字一文字、丁寧にアドバイスしていく。

「子」「貝」「小」といった、画数の少ない字こそ、バランスが難しいようだ。栗田氏と川内氏が赤ボールペンで「こういうふうに書くとバランスがよくなりますよ」と書いたお手本を見て、「すごくきれい!もっと早く知りたかった!」と思わず声を上げる参加者も。「“こざとへん”は上が大きく下が小さく、“おおざと”は上が小さく下を大きく書く」「“うかんむり”の一画めと二画めは離して書く」「“木へん”の首は長く書く」など、部首別のポイントも解説。

参加者全員の名前を添削、お手本も書いていただき、90分間の美文字講座はあっという間に終了。参加者は自分の名前が美しく記された用紙を、大切そうに持ち帰っていた。

「字を書くのは脳のトレーニングにもなります。いくら練習しても終わりがない。ひとりでも多くの人が、字に興味を持ち、美しい字を書いてくださるようになるのが私の夢」と栗田氏。美文字への熱い想いに参加者全員が胸打たれた講座でもあった。

講師紹介

栗田 双泉(くりた そうせん)
栗田 双泉(くりた そうせん)
日本ペン習字研究会 師範
昭和60年文部省認定硬筆書写検定試験一級
昭和61年日本ペン習字研究会 師範
相模原・厚木・綾瀬・伊勢原・平塚の各市公民館にてペン習字を長年指導。
現在は伊豆市に生活拠点を移し、「いず生涯学習講座」のペン習字を指導している。
生涯学習としてのペン習字普及に努め、“美文字”を伝えるべく生涯現役をモットーに活動している。